text by Kimio OIKAWA
試聴盤『マイク・デル・フェロー/メイド・イン・ブラジル』から聞いた。このディスクの録音に付いてはJT記事「聴きどころチェック95」
http://www.jazztokyo.com/oikawa/disk95/disk95.htmlを参照願いたい。リズム・セクションの重々しい重量感を伴ったパルス攻撃を軽快に再現して、のっけから驚く。ドラムスが発するシャープな音像が極太鉛筆で描いた様に浮き上がり、これだけで、この音楽が持つ熱い魂を胸を打つ感動で知らしめる。スネアの音質の確かさに、やるもんだ!と思わずつぶやく。スネアを狙い所にするのは、タイム・アライメント調整で、これほどまで音質が変わるかを経験しており、それが離れないからだ。
ピアノの空間を振るわす定位感の確かな音像も、ラテン系リズムに乗せられる肝心な要因だ。同位相で音の波動が耳に到達する音圧感に満足し、このCDが持つ音楽の核心に触れた気がした。音を愉快に聞かせる心意気を持ったシステムのサウンドを浴びていると、心も体もリズム体操だ。
このシステムにあるベーシックなサウンドは、音の芯の太さにある。スネアの音に戻るが、この分厚いスネアの音は録音も凄いと思うが、スピーカーから出ている音も凄いと評価する。実に難しい音質をがっちり表現する。ドラマーがスネアのサウンドに神経質になる現場で、何時もおろおろさせられる時間の体験から、ここで鳴る音に気が休まる。
『タイガー大越/プレイズ・スタンダード』を聞く。タイガーならではのトランペットの透明な音の突き抜ける様が、朗々と迫る。先にレポートしたTAD CR-1/TAD M-600の試聴記では、このトランペットの音像に不思議発見と記したが、ここではそれを感じない。センターに鋭く音像を造る。これがオーディオの楽しみ方だ。録音の仕掛けを隅々まで聞くか、ジャズを骨太で心地よく聞くか、その聴き方の方策の指針を示す試聴でもある。トニー・キャンベルのドラムスの響きは、録音時に感じた感動と同じだ。どっしりと地底を揺るがすようなキックの低音が、そのまま再現される。低音部の反発力を同位相で聞く感触は一番の楽しみだ。鈴木良雄のベースにも何の不満も感じない。ベースの音程の変化と音量感がまったく変わらない。
ジャズを愉快に聴かせる聴きどころの心髄を、スピーカーから溢れる音場で形成された空間で、しばし至福の時間の経緯を楽しんだ。
試聴盤:
『マイク・デル・フェロー/メイド・イン・ブラジル』Muzac MZCO-1202
アルバムの詳細/レヴューは:http://www.jazztokyo.com/oikawa/disk95/disk95.html
『タイガー大越/プレイズ・スタンダード』Geneon GNCL-1159 アルバムの詳細/レヴューは:http://www.jazztokyo.com/newdisc/474/tiger.html
及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊池雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。
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