及川公生のオーディオちょっといいものみつけた

Vol.34 | ONKYO DAC-1000(S) D/Aコンバーター

オープン価格(2010/12/24発売)
仕様については下記を参照:
http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/purecomponents/dac1000/spec.htm
text by Kimio OIKAWA 及川公生


配信でこれだけのクオリティーが得られることは驚嘆

高品位配信とリッピング。新しいオーディオの楽しみ方が、じわじわと浸透しつつある検証に、新製品を発表したONKYO試聴室に駆けつけた。
すでにONKYOでは、HD高品質音楽配信サイトを立ち上げており、独自の方向性で高品位PCオーディオの世界を築いている。私が興味を持ったのはONKYOの事業としての音楽配信サイト、これの試聴の機会を待っていたのだ。
その高品位配信を聞いた。ノルウェーの[2L]の音源を聞かせて戴く。オーケストラの残響感の透明さに感動した。192kHz/24bitの音をそのまま聞けることとは、こういうことだと一瞬、身震いをする。一般の録音は、DSDあるいは192kHz/24bitを標準に録音されているが、CDとなれば44.1kHz/16bitに限定され、SACDを除けば、録音標準品位が、そのまま手に入ることの驚異を感じる。音像のエッジの表現はCDの規格でも満足得られる結果を残すが、空間表現の瑞々しさは十分満足とは言えなかった。私が関わるジャズの世界では空間の瑞々しさのクオリティーは、それなりに十分であったが、クラシックの弦楽器群の潤いの演出をする空間表現は重要であり質感に関わるので、効果的だ。
また、ビオラ、チェロ、といった音域の事細かな表現力も極めて明解に表現されて、これも驚き。混濁も音楽表現の一部と捉えて何も問題なかった習慣から、ここで、表現されている分離の良さに乗ったビオラの音、チェロの音、その深層にある音の動きの浮き上がる表現には、言葉がない。
残響感については、クラシック録音の都度、SACD を除いては再現に乏しさを感じていたことであり、配信でこれだけのクオリティーが得られることは驚嘆と表現してもオーバーではない。それに録音時のマイキングにも言及できる再生音さえ、聞く耳を持てば可能と思えるのだ。このソースの心意気というか、聴かせどころの強調が、マイキングに現れていていると判断できる。
2Lの狙いどころが聞いて取れ、高品位配信を印象づけるマルチ・マイク的な音像の組み立てが印象的だ。さらにダイナミックさの表現力は、これで配信?と唸ってしまう。
DAC-1000はD/Aコンバータであることから、PCを通して音楽データを読み込んで「リッピング」で聞くリクエストをした。
持参したCDは『タイガー大越/プレイズ・スタンダード』(Geneon)である。CDの聴感との比較であるが、DAC-1000の特質と「リッピング」が話題となる音質の変化は、立ち去る時間を惜しむほどの驚きであった。
聞き飽きるほどの音源でありながら、新鮮味を感じるのは音の表現の違いだ。タイガー大越のトランペットと日野晧正のトランペットの特質が、こんなに明確に表現されて出てくるとは、思いもよらぬことだ。マウスピースからトランペットの共鳴を経て音が放たれる経緯までが読み取れる表現は、何だか口元がほころぶ体験なのだ。見え隠れするピアノの音像も『リッピング』は、新たな発見で曖昧な音像が明確に浮かび陰影をはっきりさせる。低音域にも効果を感じる。キックの存在感が一際せり出し、低音域の深みが増す。ベースの音像の輪郭も骨太、ベースの弦の弾けた周囲の空気まで感じ取れるのだ。
DAC-1000とPCの世界を楽しんだ後味の良さは、音の表現の違いを数値で置き換えられると錯覚させられることにあるのだろうか。

♪ 試聴用CD:
『タイガー大越/プレイズ・スタンダード』(Geneon)

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及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。

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