及川公生のオーディオちょっといいものみつけた

Vol.35 | SONY 3ウェイ・スピーカーシステム SS-NA2ES

希望小売価格: 1台 199,500円(税抜価格: 190,000円)
*仕様については:
http://www.sony.jp/audio/products/SS-NA2ES/spec.html
text by Kimio OIKAWA 及川公生

目的は心地よい音。ソニーのスピーカー開発の一貫した指向である。心地よい音は、ジャズサウンドに合うか!が問われるが、私が執拗にソニーのスピーカーを追っかけるのは、ジャズサウンドとJBLサウンドの密接関係から切り離せる反面の隠し味があるからだ。気構えがいらない自由空間に身をおける事は、モニター的音質を聞き続ける仕事と一線を画した冒険が味わえ、ソニーの音の心地よさに身を置くことは、至福の時間なのだ。
開発者の加来氏は言う。発音源からポツーンと音が出る。それは水面に波紋が広がるような、全方向に向かって一様に波面伝達する。スピーカーも、そうならないかとやってみた。しかし、結果は残念ながら音の喜びを浴びる事にはならなかったそうだ。この話、何だか分かる気がする。
私も経験がある。全方向性のスピーカーから放たれる「録音された」音のもの足りなさを。しかし、ステージ演奏の特殊な例だが、全方向性スピーカーに近いPAを使用した時、これが良かった。心地良いのである。オペレートは大変だが。
さて、音源を再生に限る場合でも仕掛けに工夫があれば、あの心地よさは得られると理解できるのだ。
それは、ジャズサウンドに変化の兆しがあって、これがソニーの考える、心地よい音とマッチする要因なのだ。ダイレクトな直接音から空間表現を重きに置いたジャズ録音が現れだした。高品位デジタル録音の実用化で音像の造り方に変化が現れた。
試聴リファレンスにした音源。トーマス・エンコのCDを聞く。空間を意識した録音であることが、このスピーカーの志向と一致する。ピアノの空気の膨張感を感じる録り方と、このスピーカーが放つ音と、ピタッとはまる。たまらない音響空間の味わいだ。まさに輪が広がる、である。ピアノの物体と、音が放たれる音源の様を、録音から得られていることに、ソニーのスピーカーの追っかけをして、間違いではなかったと確信する。
空間を彷徨う音の放射が心地よい。ドラムスが描く距離感も良い感じ。録音テクニックの要、遠近感の表情に、このスピーカーは鋭く反応している。スピーカーの背面といった平面的でない空間がある。これはビックリ。ベースに対しての反応は、たっぷり過ぎると思えるほど。録音もベースの音に、かなり濃厚な音像を造っているが、それを強調する方向で引き立てる。ベースとドラムスが大きくダイナミックに、混濁感を伴う演奏に、ライブのようなエネルギーが押し寄せる。
フォアプレイの『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』を聞く。ここでは、音場感の前提のないフュージョンを聴き、これをどの様な音像で再現するかを聞いた。
驚いた事に、凄くベストマッチなのだ。どういう事?と、身を乗り出す。
楽器のバランスがとても良いのだ。つまり、楽器がよく鳴っている、という現象に似ている。朗々とした開放感がある。現場で体験する楽器が鳴り出した!
あの感動に近い。これは楽器同様に、スピーカーそのものが愉快に振動しているのではないか。何処にもエネルギーの押しつけがない。造られた音場感が、如何にも同一空間で演奏しているような感じだ。フュージョンの仕掛けがこの様に表現されるのは、意見もあろうが、私はゆったりと音の拡散に浸った。





♪ 試聴用CD:
■『トーマス・エンコ/ウィンドウ・アンド・レイン』
ZZJA PLUS /Happinet  HMCJ-1007 3,150円(税込)
プロデューサー:伊藤 ”88” 八十八
録音:2010年8月30日、31日 2ch ダイレクトDSDレコーディング
スタジオ:ソニーミュージック乃木坂スタジオ 
エンジニア:篠笥 孝 (ソニーミュージック)
*ディスク・レヴュー:
http://www.jazztokyo.com/five/five771.html

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♪ 試聴用CD:
■『フォアプレイ/レッツ・タッチ・ザ・スカイ』
Heads Up/ユニバーサル UCCT-1225
Produced by Fourplay
Recorded by Ken Freeman
Mixed by Ken Freeman,Don Murray
*録音レヴュー:
http://www.jazztokyo.com/column/oikawa/column_119.html

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及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。

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