Virgin Classics TOCE-55804 \2,800(税込)

『モーツァルト:ピアノ協奏曲第 17番&第20番』

ピョートル・アンデルジェフスキー( pf&cond.)
スコットランド室内管弦楽団

ピアノ協奏曲第 20番ニ短調K.466
ピアノ協奏曲第 17番ト長調K.453

いよいよフィナーレのモーツァルト・イヤー。ディスク・リリースも隆盛を極めた。その中から自分にとってのベストとして選んだのが、このアンデルジェフスキーのディスク。とはいえ、「これぞモーツァルト !」なんて感慨はわかない。ニ短調のK.466など、所々のデフォルメは異質な空気を呼びこむし、散乱する光の粒子を眺めていたかと思うと、いつしか疾走する馬群の中にいたりする。そしてベートーヴェンの書いたカデンツァに突入すると、「ミサ・ソレムニス」を敬愛するこの飄々とした青年は、モーツァルトをすっかり忘れてしまう。だが、モーツァルトの音符の向こうにこれだけ未知の沃野が広がっていたことは驚きだ。そもそもモーツァルトだって人気の絶頂期にこの陰鬱な協奏曲で聴衆のギャラント好みを裏切り、前奏にない主題で突如ピアノを登場させて幻惑した。どちらも「らしさ」などとは無縁のノマド的精神の持ち主だ。それも音楽に多くを発見できる、繊細にして鋭い眼力を持った達人的ノマド。「目がいいと人生は楽しい」(『マスターキートン』第7巻「 瑪瑙色の時間」)とは、少年キートンが田舎のバスの運転手から教わる「マスター・オブ・ライフ(人生の達人)」の極意だが、こうした自由で、それでいて対象の奥まで鋭く見通すピアノを体験すると、まさにその通りだと納得する。JT (相原 穣)

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