『藤井郷子オーケストラ・神戸/ Kobe Yee !!』
岩田江 水谷康久 (as) 荒崎英一郎 武井努(ts) 登敬三(bs)田村夏樹 房原忠弘 船戸穣 平岡新(tp) 谷口知巳冨岡毅志(tb)
吉野竜城(tuba)藤井郷子(p) 船戸博史(b) 井崎能和(ds)
1.ファイア(藤井)2.飛不動(田村)3.ザ・フューチュア・オブ・パスト(藤井)4.神戸 イエー!!(藤井)5.四角(田村)6.空(藤井)
録音: 2006年3月1日@ビッグ・アップル
神戸
今年いちばん驚いたのは、藤井郷子から送られてきた4種のオーケストラの新録音作品を目にしたとき。4種がすべて新録音で、それぞれが地域も違えば、当然メンバーも異なるビッグバンドを擁して吹き込んだというだけでも前代未聞なのに、4作それぞれが内容充実したオーケストラ作品に仕立て上げられていたのだ。驚くのは当たり前だろう。「今月の1枚」で取りあげたときにも触れたように、4枚のオーケストラ作品はそれぞれ『藤井郷子オーケストラ・ニューヨーク/
Undulation 』、『東京/Live !! 』、『名古屋/Maru 』、そしてこの『神戸』だが、ニューヨークはむろんとして他の3オケも現地のミュージシャンで編成されているので、注意深く聴くと地域性や、ちょうど言葉使いのような特色が見えてくるせいか、退屈することがない。大分以前に、あのオーケストラはフリー・ジャズで難しい上に演奏が長過ぎるという声を耳にしたことがあった。そこには謂われのない誤解があると思うが、それは別にして数曲聴いただけで拒絶反応を起こすとしたらいささか勿体ない。この4作を例にとれば、さして長くない演奏もあればメロディックなラインと調和美豊かなアンサンブルが全体の流れを優美に包み込む演奏もある。それも決して1つや2つではない。この『神戸』盤はそれを実証する優れて好個のサンプルと行ってよく、藤井郷子の作曲の頭抜けた才知と個性豊かな書法が聴き手の感性に心地よく響くオーケストラ・ソノリティーを通して訴えてくる素晴らしい1作である。
初めて耳を通したときには感激したが、それっきり聴こうという気も起こらないというのでは困る。この1作に関してはそんなことはない。実際、6月末以来もう何度も聴いた。分けても4曲目のタイトル曲。ルンバの心地よいリズムに乗って奏されるユニゾンのアンサンブル・テーマは耳を捉えて放さない。収録曲6曲のうち「
Shikaku」(田村夏樹)とこの表題曲以外は藤井夫妻の他のCDや彼らのライヴ演奏でもおなじみの曲だが、演奏メンバーが変わったら常とは違うニュアンスがこぼれだし、その展開がまた魅力的。その達成に大きな貢献を果たしているのが、神戸界隈で活動する現地ミュージシャンたちの優れた力量で、ユニゾンのピッチのよさだけでもこのオケの秀逸性が分かる。記載がないので特定はできないが、「Fire」やタイトル曲でのテナー、トロンボーンなどのソロも出色。Discovery
Kobe Orchestra ! まさに神戸イェーである。JT (悠 雅彦)