YUMI'S ALLEY

今年で第16回を迎えた阿佐谷ジャズストリート2010、例年10月の第4 (金)(土)に行われる街をあげてのジャズイベント。今年の阿佐谷ジャズストリートのテーマは<山下洋輔NYトリオからジブリ・ソングまで>、副題を<やっぱりジャズは中央線>として、山下洋輔NYトリオの神明宮・能楽殿初登場をはじめ、阿佐谷〜中央線界隈で活躍しているミュージシャンが勢ぞろいし、共通パスポートで全会場自由に入れるパブリック会場13箇所と青空の下、無料で楽しめるストリート会場、そして阿佐谷のライヴハウスやレストランなどのバラエティ会場でさまざまなセッションが繰り広げられた。
今年の阿佐谷の最大の呼び物は山下洋輔ニューヨーク・トリオ、また初回より連続出演のマーサ三宅(vo)、阿佐谷在住の峰厚介(ts)と阿佐谷育ちの井野信義(b)を中心とした「阿佐谷カルテット」、同じく地元の小田陽子(vo)、森崎Bella(vo)、塚越洋子(vo)など中央線ゆかりのミュージシャンが多数出演した。さらに、<ジブリ・ソングをおしゃれなJAZZで!>というテーマで野口迪生(ds)カルテットの<Jazz For Children>、立石一海(p)トリオの<GHIBLI meets Jazz>が出演、また、ジャズ漫画家、ラズウェル細木の<ジャズ入門講座>等従来にない子供から大人まで一緒に楽しめるバラエティに富んだプログラムが進行した。そして無料のストリート会場では杉並区役所リズムテイストや杉並第二小学校ウインドバンド、都庁スイングビーツなどアマチュアバンドも多数出演し、恒例のスーパージャムセッションに至るまでアマ、プロ、市民が一体となってまさに街全体がジャズ一色に染められた二日間であった。

#1.山下洋輔ニューヨーク・トリオat神明宮・能楽殿
昨年はソロとデュオで神明宮・能楽殿のこけら落としを行った山下洋輔だが今年はニューヨーク・トリオでの登場。22日(金)の夕方、昼過ぎまでぐずついたお天気も快方に向かい神明宮の広い駐車場には開場を待つ人並みで長蛇の列が出来た。田中良新杉並区長、杉並区と友好都市の関係にある名寄市長等々の挨拶に続いて山下洋輔NYトリオが登場。山下洋輔がフェローン・アクラフ(ds)、セシル・マクビー(b)を紹介し会場には大歓声が沸きあがる。



山下洋輔ニューヨーク・トリオ

 今年で結成22年のキャリアを誇るNYトリオは一曲目から全力疾走、山下、セシル、フェローンの順でソロの応酬。この時点で能楽殿とNYトリオ は不思議な位にマッチし境内全体がスイングした。曲は最近レコーディングしたばかりという新曲が中心で、レコーディングではNYトリオと金子飛鳥のストリング・カルテットが共演をしており、来春リリース予定との山下さんのアナウンスがあったが、NYトリオ単独による演奏もいつもどおりに過激で面白い。


山下洋輔(p)      セシル・マクビー(b)

2曲目は山下洋輔家の3匹の猫に捧げた<トリプル・キャッツ>。山下さんはじめ3人のキャッツの演奏にも熱が入る。そして一部のエンディングはお馴染み<クルディッシュ・ダンス>に喝采の嵐が湧き上がる。


山下洋輔

#2.マーサ三宅 オン・ステージ&ドライ・マティーニ
阿佐谷ジャズストリートのもう一つの顔がマーサ三宅さん。例年、第4金曜の夜の新東京會舘はドレスアップしたマーサのファンで華やいだムードになる。ここは、パブリック会場としては珍しく飲食フリーでワイン片手にほんのり頬を染めた人もちらほらしクラブらしいリラックスした雰囲気につつまれる。
先ずは松尾明(ds)トリオの<枯葉>に続いてマーサ三宅スクールの一番弟子と二番弟子のお二人、三槻直子と金丸正城のデュオ「ドライ・マティーニ」が座を華やかに盛り上げる。


金丸正城       三槻直子

そしてマーサ三宅の登場。今年で音楽生活57年と云うが真紅のドレスで若々しく<クライ・ミー・ア・リヴァー>、<シャレード><アイ・ウイッシュ・ユー・ラヴ>など4曲を松尾明トリオのバックでスインギーに唄う、まだまだお若いマーサさん。そしてエンディングはドライ・マティーニのお二人、金丸正城、三槻直子を交え<ドリーム>を合唱、楽しいウィークエンドの夜を演出した。


マーサ三宅

#3.ストリートを楽しむ
 ジャズストリートの2日間は阿佐谷の街中がジャズに溢れる。JR阿佐谷駅構内放送も粋なジャズが流れ、一歩駅を出ると街のあちこちでジャズが鳴る。例年ダイヤ街入り口には一曲200円の人間ジュークボックスが陣取る。


人間ジュークボックス

#4.阿佐谷の街を練り歩くジャズウォーク
 23日の土曜日は昼頃から夜まで多彩なプログラムが目白押し、チケット片手にあちこちと移動する人並みで阿佐谷の街は大賑わい、人をかき分けパールセンター入り口にたどり着くと、老舗和菓子屋さんの前でディキシーランド・ジャズが。女性のメンバーが元気な早稲田ニューオルリンズジャズクラブのホットで華やかな演奏で人の山が築かれる。


早稲田大学ニューオルリンズジャズクラブ

 そしてパールセンターに足を踏み入れると阿佐谷恒例ニューディキシーモダンボーイズの練り歩きがやってくる。


ニューディキシーモダンボーイズ

#5.阿佐谷カルテット登場
 阿佐谷の住人で、阿佐谷を愛する峰厚介はこれまでにも「エッセンシャル・エリントン」「フォーサウンズ」などのグループでジャズストリートを盛り立ててきたが、今年はこの日のために「阿佐谷カルテット」を結成、産業商工会館に登場した。会場は満員盛況で、一曲目<ユー・アー・マイ・エヴリシング>。イントロなしでいきなり峰のホットでウォームなテナーがテーマを吹く、続いて村上寛(ds)のシンバル・レガート、井野信義(b)が低弦をブルーンとふるわす。清水絵里子(p)が峰のあとをついでメロディアスなソロを展開、井野のアコースティックな響きを大事にしたソロ、村上寛(ds)と峰、清水とのソロ交換と一曲目から全員の至芸を惜しみなく披露、阿佐谷カルテットは幸先の良いスタートを切った。


峰厚介(ts)          井野信義(b)

阿佐谷カルテットの紅一点、清水絵里子(p)はまた峰厚介カルテットのレギュラーでもあり本グループにもすっかり溶け込み、息の合った溌剌としたプレイで開場を沸かせた。


清水絵里子

 とにかく村上寛のシンバル・ワーク、スネア、リム・ショットどれをとってもサウンドの美しいこと、会場の前列で聴くドラムの生音は透明で刺激的。この生音目当ての常連さんも多いようだ。


村上寛

会場の産業商工会館の近くで子供の頃はよく遊んでいたという阿佐谷育ちの井野信義さんは、懐かしさも合ってか終始ごきげん、艶のあるアコースティック・ベースを聴かせてくれた。


井野信義

 この日のために結成された阿佐谷カルテット、一部を終わって外へ出るともう陽は落ちて夕ぐれ時、産業商工会館前には阿佐谷カルテットの次のステージを待つファンで長い行列が出来ていた。


阿佐谷カルテットには長蛇の列が

#6.ストリート・ライヴ
産業商工会館から阿佐谷駅に向かい北口ロータリー前のビルの2階にある老舗のお蕎麦屋さんで一休み、勿論お店の中もBGMはファンキーなジャズ。美味しいお蕎麦をいただきながらふと下を見ると、ストリート・ライヴが眼に入ってくる。ガラス越しなのでバスドラの音しか聴こえてこないが上から演奏を見るのも又、楽しい。阿佐谷駅北口のパサージュ前、例年この場所でストリート・セッションを行っている竹内郁人クインテットが熱演中。


竹内郁人クインテット

 そして阿佐谷駅北口、中杉通りを一本奥に入ったところが旧中杉通り、ここでも賑やかにストリート・ライヴが繰り広げられていた。


旧中杉通りのストリート・ライヴ

#7.阿佐谷聖ペテロ教会に北浪良佳ヴォーカル・ユニットが響きわたる
昨年に引き続き聖ペテロ教会に登場した北浪良佳、今回は林正樹(p)と掘込綾(harp)とのヴォーカル・ユニット。林正樹と掘込綾のお二人は北浪のセカンド・アルバム「SONGS」(VACV-1052)で共演し、そのときの感触から聖ペテロ教会に最もふさわしいメンバーとして今回のステージが実現した。PAは使っているものの、声量のある北浪の声は生で響きわたる。先ずは<虹の彼方>のアカペラからスタート。        


北浪良佳ヴォーカル・ユニット

そして「SONGS」の中から武満徹の<翼>を。北浪良佳は、ファースト・アルバム「北浪良佳/リトル・ガール・ブルー」(VACV-1050)以来ずっと武満徹を唄い続けてきているが、北浪さんの武満を想い、大切にする気持ちが唄にしっかりあらわれていて北浪良佳の武満ソングは説得力がある。


北浪良佳

ハープの掘込綾は主にクラシック界での活躍によって知られているが映画音楽や菊地成孔のグループ、ペペトルメント・アスカラールの一員としても活動するなど多方面で存在感を示しているが、ここでの北浪良佳、林正樹とのコンビネーションもよく、優雅で効果的なサウンドを醸し出している。


堀込綾

 ピアノの林正樹は北浪の「SONGS」の音楽プロデューサーとして、アレンジを担当して以来北浪と共演する機会が増えており、堀込綾とも菊地成孔のグループで共演している間柄でこのユニットの要的存在であり、北浪の唄を際立てるのに貢献している。また林のピアノも若々しく簡潔で爽やかである。


林正樹

北浪良佳ヴォーカル・ユニットのファースト・セット最後は<ナイト・アンド・デイ>、アップ・テンポでスイングすると客席も手拍子で参加、聖ペトロ教会はハッピーな一体感に包まれた。


北浪良佳ヴォーカル・ユニット

#8.杉並一小、スーパージャムセッション
 阿佐谷ジャズストリートの締めくくりは恒例の杉並第一小学校体育館に於けるスーパージャムセッション。靴を脱いで素足で体育館に入ると小学生に戻ったような気分になる。ジャムセッションの司会は昼間ここ杉一小でライヴを行った野口久和さん、軽妙なジョークを交えながらテキパキと進行を進める。夫々ジャズストリートのセットを終えたミュージシャン達が三々五々と体育館に集まりジャムに興じる。曲は<アイ・リメンバー・エイプリル>などジャムセッション向きの曲が中心。メンバーを入れ替えながらミュージシャン達が楽しみ、集まった観客も大喜び。圧巻はフィナーレを飾るフロントが5管のソニー・ロリンズ<ソニームーン・フォー・トウ>。ピアノにはジブリ・ミーツ・ジャズの立石一海が入り、ベース、ドラムは曲の途中で適宜何人かが入れ替わる。フロントには竹内郁人(as)、高橋康廣(ts)などがソロ・チェースで会場を盛り上げる。


スーパージャムセッション

そして5人のフロントには池田篤(as)も加わり、飄々とした控えめな物腰ながら切れ味鋭いアタックとクリアなサウンドで目も鮮やかなソロをとりジャムを盛り立てた。


池田篤

#9.ジャズアート展
こちらも恒例となった杉並区の小学生によるジャズアート展が阿佐谷パールセンターに展示されジャズストリートを訪れる人の目を楽しませてくれた。アーケードに吊られた作品はどれも明るく楽しい作品が連なり、将来の阿佐谷ジャズストリートに明るい光を当ててくれているようで嬉しい。ここに掲載したアートはそのほんの一部である。


杉並第一小学校


杉並第二小学校


高井戸東小学校


杉並第二小学校

#10.阿佐谷ジャズストリート2010
今年の阿佐谷ジャズストリート2010は10月22日(金)、23日(土)の二日間、成功裏に終わった。ジャズストリートを企画し、支えるのは実行委員会、すべてボランティアという。例年10月の第4週末に行われる慣わしの阿佐谷ジャズストリート、第16周年を迎えた今年は延べ51箇所で、134のグループ、ミュージシャン700人が出演し阿佐谷の街を文字通りジャズ一色に染め楽しませてくれた。


阿佐谷ジャズストリート2010

望月由美

望月由美:FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

JAZZ TOKYO
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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