Jazz Right Now - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート

by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda & 吉田野乃子 Nonoko Yoshida

ソロ演奏のスピリット
text by 剛田武 (Takeshi Goda)

シスコ・ブラッドリー氏による連載コラムを読むと、ライヴ/リリース共に、ソロ演奏の記事が多いことに気がつく。ブラッドリー氏が個人的に無伴奏ソロに興味を持っているからかもしれないが、実際に演奏をYouTubeやCDで視聴すると、共通したひとつの姿勢/思想/スピリット(精神)があることが分かってくる。

ネイト・ウーリー (tp) - Live @ Avant Media, January 19, 2015 
⇒連載第1回今ここにあるリアル・ジャズ
 http://www.jazztokyo.com/column/jazzrightnow/001.html#02

マイク・プライド (ds) - CD『リスニング・パ−ティ(Listening Party)』

アンドリュー・ドゥルーリー (ds) - CD『ザ・ドラム The Drum』
⇒連載第2回
 http://www.jazztokyo.com/column/jazzrightnow/002.html#02

パスカル・ニゲンケンペル (b) - CD『ルック・ウィズ・ザイン・イアーズ Look with Thine Ears』
⇒連載第3回
 http://www.jazztokyo.com/column/jazzrightnow/003.html#02

ベン・スタップ (tuba) - Live @ New Revolution Arts, May 9, 2015
⇒連載第4回(今号)

楽器の種類はバラバラだが、どれもメロディーやフレーズの美しさや高度な演奏テクニックをアピールするのではなく、楽器の可能性を追求・拡大し、ときには破壊しかねないほどの冒険心と実験精神に貫かれている。しかも自己満足の難解さではなく、音だけ聴いても楽しめるエンターテインメント性を備えている。自分の楽器からどんな音が出せるのか?という子供のような好奇心と、「音」そのものを楽しむ新たな聴取スタイルが根底にあるのだろう。

まもなく自己のトリオのデビュー・アルバム『ゴーディアン・トゥワイン Gordian Twine』(New Atlantis)をリリースする若手アルトサックス奏者クリス・ピッツイオコスも、今年4月にデジタル限定でソロ・アルバム『オブリヴィオン/エクスタシー Oblivion/Ecstasy』をリリースした。ノイズや音響に通じる高周波のフリークトーン、不穏な気配の弱音演奏、ミニマルな循環呼吸演奏など多彩なプレイを展開している。

「このソロ・アルバムは、私という人間がこの異質な物体(サクソフォン)と出会ったことの意味を探究する大きな旅の一区切りであり、その関係から生じる可能性を拡張する試みである。その探究は楽器への純粋な愛の行為であり、20年間人生の一部となってきたものへの愛情である。愛とは楽器のすべてを心の底から理解したいという燃える願いに他ならない。美醜を超えた忘却の境地まで自分と楽器を追い込むことは、恍惚的な行為に成り得る。アルバムを録音した時は、エクスタシーの果ての境界線上で即興演奏している気分だった」(クリス・ピッツイオコスのFBの投稿より)

ピッツイオコスがコメントするように、NY即興シーンの中核には、ソロ演奏で楽器への愛を追求する演奏家のスピリットが漲っているのである。

*今秋にはメアリー・ハルヴァーソンのギター・ソロ・アルバムが予定されている。

Chris Pitsiokos "Oblivion/Ecstasy" ダウンロードサイト
https://chrispitsiokos.bandcamp.com/album/oblivion-ecstasy



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連載第4回
ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報
text by シスコ・ブラッドリー (Cisco Bradley)
translated by 剛田武 (Takeshi Goda)

デヴィン・グレイ Devin Gray

ブルックリンのアンダーグラウンド・シーンで10年近く活動してきたドラマーのデヴィン・グレイが、遂に注目を集めることとなった。最新の2枚目のリーダー作『リラティヴ・レゾナンス RelativE ResonancE』(Skirl)に収録された創造性に満ちた楽曲は、自己のカルテットのメンバーの才能を最大限に発揮している。リード奏者のクリス・スピード Chris Speedとピアニストのクリス・デイヴィス Kris Davisは持ち前の幅広い感情表現を活かして、大胆で荒々しいモーメントと穏やかなストロークの間を行き交う。ベーシストのクリス・トルディーニ Chris Tordiniはグループの起動エンジン。グレイ自身は繊細な役どころを演じ、スピードとデイヴィスが開いた空間に絶妙なタッチを付け加える。堅固だが同時に流動的なエモーションを持つ楽曲の構造がアルバム全体を貫いている。アルバムはグレイの作曲家としての才能を証明し、長年の友人でありメイン時代の創造的同胞であるハンナ・ショー Hannah Shawとグレイの作曲にインスピレーションを与えたタッド・ダメロン Tadd Dameronに捧げられている。2007年にデイヴィスとトルディーニとのトリオとして結成され、2010年にスピードを加えたグレイのバンドが、2015年に遂に共同制作によるレコードを完成させた。8年間の忍耐強い活動の成果が、最初の一音から明確に記されている。

KRIS DAVIS/CHRIS SPEED/CHRIS TORDINI/DEVIN GRAY "DOWNTIME"
https://www.youtube.com/watch?v=o1B-MqOha8o

Devin Gray Official Site
http://devingraymusic.com/

L to R: Devin Gray(ds), Chris Speed(reed), Kris Davis(p), Chris Tordini(b)
photo by Liz Kozack
『RelativE ResonancE』

マイク・プライド Mike Pride

マイク・プライドの最新の2作品もまた、真の注目に値する。ひとつは、ギタリストのチャーリー・ルッカー Charlie Lookerとの双頭バンド、ペリオド Periodのアルバム『2』(Public Eyesore)。エレクトロニクスの導師チャック・ベティス Chuck Bettis、アルト・サックスのダリウス・ジョーンズ Darius Jones、テナー・サックスのサム・ヒルマー Sam Hillmerとのクインテットの作品。素晴らしくエッジが効いた短い楽曲で構成され、同時にミュージシャンが交互反応をどこまでも追求できる寛容な懐の深さを持っている。ペリオドは演奏者同士の語らいのテンションをキープする技法に長けており、聴き手は次の展開への期待感で常にドキドキし続ける。

Period with Amirtha Kidambi & Peter Evans @ JACK 4-24-15
https://www.youtube.com/watch?v=CNBwRfIIr3c

ふたつめはプルヴェライズ・ザ・サウンド Pulverize the Soundのセルフ・タイトルのデビュー作は、名作と呼ぶのに相応しい。プライド(ds)と、トランペット奏者ピーター・エヴァンス Peter Evansとベーシストのティム・ダール Tim Dahlのコラボレーションは、雑多な騒々しい音楽要素を小さなパレットに凝縮・撹拌・混合し、タイトで流れのよい楽曲として描き出している。

Pulverize The Sound - at Manhattan Inn, Brooklyn - February 25 2015
https://www.youtube.com/watch?v=Gsw1LGasXnU

Mike Pride Official Site
http://mikepride.com/

Mike Pride, photo by Jim Newberry 『Priod』 『Pulverize The Sound』

ベン・スタップ Ben Stapp

ライヴ・シーンに目を移すと、5月9日ニュー・レヴォリューション・アーツで、チューバ奏者のベン・スタップ Ben Stappが披露したこれまでにない画期的な音楽組曲演奏に注目したい。M・ジョン・ハリスンの『ライト三部作』にインスパイアされ、SF的なサウンドとアイデアを融合し、ひとつの物語を作り上げた。公演に寄せた文章では「(奇想と量子力学が織りなすハリソンの世界を)プロペラの後流の動きに喩えられることがある。その動きとは、精神を不安定な認識の状態に置く試みである」。スタップは付け加える。「理論の通用しない感覚を引き起こす警告のベルの代わりに、当惑した個人を混沌と定義の欠如の真ただ中に陥れ、平静の時間を見つけられるように導く」。言い方を変えれば「我々に馴染みのない頭脳の部分、もしくは思考モード」にアクセスさせる。

その言葉通り、とても精神改革的なパフォーマンスだった。彼は観客を惹き込み、ありとあらゆるアプローチを駆使して驚愕させた。幅広く拡張されたテクニックと、用意されたオブジェ(リード楽器のマウスピース、サラダボウル、料理トレイ、ハーモニカ)により、この楽器の新たな境界への可能性を推し進める。

Ben Stapp - Solo Tuba (Excerpt) @ New Revolution Arts
https://www.youtube.com/watch?v=4Gb7lCAlxZk&feature=youtu.be

Bes Stapp Official Site
http://www.benstapp.com/

Ben Stapp - Solo Tuba (Excerpt) @New Revolution Arts, photo by Peter Ganuushkin Ben Stapp, photo by Connie Stapp

ダニエル・レヴィン Daniel Levin、マット・マネリ Mat Maneri、トニー・マラビー Tony Malaby

もうひとつの傑出したライヴ・パフォーマンスは、5月27日にライで行われたダニエル・レヴィン(cello)をリーダーとして、マット・マネリ(viola)とトニー・マラビー(ts)からなるトリオだった。情熱的なロング・セットで、それぞれのミュージシャン----自分の楽器における今日のリーダーのひとり---の実力を見せつけ、生み出す音響的関係の可能性を探索した。長い綿密なオープニングに続いて、強度と質感の層を築き、その上に層を積み重ね、どんどん塗り固めて行く。レヴィンがアンサンブルの骨組を形作り、他の二人は一緒にラインを織り、時折共棲する音響空間を拡張する。マラビーは流れるようなプレイで、二人の弦楽奏者と好対照をなし、ストリングスの鮮烈なスライスカットにサウンドを染みこませた。

Mat Maneri / Daniel Levin Duo - live a DalVerme
https://www.youtube.com/watch?v=-lnMm9c8ksg

Daniel Levin Official Site
http://daniel-levin.com/

Daniel Levin, photo by Joachim Ceulemans

シスコ・ブラッドリー 2015年5月31日
(Jazz Right Now http://jazzrightnow.com/

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よしだののこのNY日誌 第2回
text & photos by 吉田野乃子 Nonoko Yoshida

みなさま、こんにちは。ののこです。5月も楽しいライヴがたくさんでした。個人的ハイライトは、NYハードコアシーンの聖地的ライヴハウスSaint Vitus Barにイギリスのメタル/グラインドコアバンド、Anaal Nathrakhを見に行ったことでしたが、それは置いておいて。

<同世代の友人達のイベント>

5月13日(水)
Greg Fox / Will Mason Ensemble / Jobs @ Cake Shop

3バンド対バンのイベントです。
1組目は、去年来日もしていた、Guardian AlienやZsのドラマー、Greg Foxのソロ。現代クラシックなども見事にこなしてしまうGreg、過去のZsのライヴでは、ミニマルな楽曲を寸分の狂いもなく、でも決して機械的ではなく、生き生きと鳴らす姿が印象的でしたが、この日のソロも、ものすごい音数を、ドラムマシーンのように打ち鳴らす一方、いろいろなところにアクセントを持って行き、まるでドラムが早口でしゃべったり歌ったりしているかのような、圧巻のパフォーマンスでした。

2組目は、作曲家でドラマーのWill Masonによる、ボイス、オーボエ、サックス、ギター2本、ベース、ドラムによるアンサンブル。こんなにバラエティに富んだ大人数編成のために曲を書くのは楽しいだろうなと思いました。Willの複雑かつ美しく、エネルギー溢れる楽曲に引き込まれました。

Will Mason Ensemble は今年の8月28日にアルバムをリリースするようです。
こちらのサイトから、先行予約や1曲試聴ができます。
https://willmasonensemble.bandcamp.com/

3組目の変態トリオJobsは、私がサックスを担当しているバンド、『ペットボトル人間』のギタリスト、Dave Scanlon(通称、デビちゃん)が大親友Max Jaffe (drums)、Rob Lundberg (bass)と共に2008年から活動しているバンドです。(ベースのロブが遠方に住んでいるため、この日のベースエキストラは、ビオラ奏者として有名なJessica Pavone姉さんでしたが。「ベースは私の秘密兵器なのよ」とのことです)。最近までは、killer BOBという名前だった彼らですが、初期は前衛ジャズロックのような感じ、最近は前衛ロックポップ?みたいになってきて、ますます変態度が上がっています。このトリオの楽曲の複雑さは、理解、分析しようとすると頭がおかしくなるほどで、一体何拍子なのか、どこまで楽譜が書いてあるのか、数えているのか、どうやって展開しているのか、全くわかりません。哲学的なコンセプトに基づいた、ポエトリーリーディングや、不思議な歌詞のボーカルなどもありますが、意味などわからなくても、涼しい顔して次々にとんでもない音楽的トリックを繰り出すこの3人のパフォーマンスは、とにかくかっこいいのです。

Jobsも、Will Mason Ensembleと同じレーベルから6月30日にニューアルバムをリリースします。試聴と先行予約はこちらです!
https://jobsband.bandcamp.com/

ミュージックビデオもあります。
https://www.youtube.com/watch?v=HkDQkXVN_ys

そして、Jobsは2016年の1月に、初の日本ツアーを計画しております。現在、全国各地でサポートしていただけるプロモーター、イベンターの方やバンドの方を探しておりますので、ご興味を持っていただける方がいらっしゃいましたら、御一報いただければと思います。Jobs初来日に向けてのご協力を、何卒よろしくお願いいたします。

Jobs - Jessica Pavone (bass), Max Jaffe (drums), Dave Scanlon (guitar)

<前衛演劇作家、リチャード・フォアマンの映画>

音楽レポートではありませんが、コアな前衛芸術ファンの方がうらやましがってくださるであろうイベントに行ってきましたので、自慢がてらご報告します。うふふ。

5月18日(月)
Richard Foreman Film Screening @ Segal Theatre (CUNY Graduate Center)

前衛演劇作家のリチャード・フォアマン氏は、ここ数年、舞台演劇から映画製作に完全移行されました。この日は、昼間から彼の過去の作品をぶっ続けで7本上映し、夕方から、彼の最近の映画製作現場を記録したドキュメンタリーのようなフィルム、そしてフォアマン氏の現在製作中の映画を少しだけ上映するという、一日がかりのイベントでした。私は夕方の部のみ見に行きました。

フォアマン氏が一体どうやって作品を組み立てているのか、とても興味があったので、映画製作現場の記録を見られたのは大変嬉しかったです。彼の作品はストーリーがあるわけではなく、まるで、個人の頭の中の断片的な、もしくは繰り返される意識をそのまま現実世界に持って来たかのようなもので、とにかくわけがわかりません。映画製作でも、元々固定のシナリオがあるのかさえわかりませんが、フォアマン氏が現場で「やっぱりこういう動きにしよう」「ちょっと違う、こうしてみて」「そこでこう言ってみて」「これ持ってみて」と言った指示をその場で出しながら撮影が進んで行きます。まさに実験的で前衛的です。役者さんやスタッフさんは大変そうです…。

イベントにはフォアマン氏本人も参加され、パネルディスカッションも行われましたが、彼の言った“Story hides reality”「ストーリーは、現実/真実を隠してしまう」という言葉が印象的でした。作られた、わかりやすい物語や、下手をすれば、世の中の秩序や、意味のあること全てが偽物で、実際、私たちの頭のなかにある、わけのわからない思考だけが真実だとしたら、フォアマン氏の作品は、真実の芸術といえるのかもしれません。

ここまで書いておきながら恐縮ですが、私のような小娘がフォアマン氏の芸術を語るのはおこがましいので、ご興味のある方は、巻上公一さん、鴻英良さん編集の『反響マシーン:リチャード・フォアマンの世界』をぜひお読みくださいませ。映画や舞台を見てみたい方はジョン・ゾーンのTzadikレーベルからDVDも出ておりますのでチェックしてくださいね。

Richard Foreman(center)

<マーク・ドレッサーThe Stoneレジデンシー>

5月の最終週のThe Stoneレジデンシーは、前衛音楽界の重鎮ベーシスト、マーク・ドレッサー氏でした。

5月28日(木)@ The Stone
8 pm: Ned Rothenberg (sax) Mark Dresser (bass)

10 pm: Deep Tones for Peace Bass Ensemble
Rufus Reed, Mark Helias, Rob Nairn, Samir Basim, Lindsey Horner, Dave Phillips, Ken Filiano (basses) Sarah Weaver (conductor)

この日は、何度かこのサイトでも紹介されている、若手サックス奏者のクリス・ピッツィオコスと、だらだらおしゃべりをしながら会場に向かったため、最初のセットは少ししか見られずに残念でしたが、(クリスのせいにしましょう…)私の先生でありますネッド・ローゼンバーグ氏の、管楽器なのに打楽器の演奏のような、変拍子でリズミカルな即興に、ドレッサー氏の縦横無尽かつ力強いベースが乗っかり、ベテランインプロバイザー同士の会話を楽しむことができました。

Ned Rothenburg x Mark Dresser

2セット目は、コントラバス奏者7人と指揮者による、ドレッサー氏の長編楽曲の演奏でした。大迫力の『弓弾きロングトーン×7』や、誰かがベースラインを弾いて伴奏のようなことをし、他の人がハーモニーやバッキング、更にはまるでチェロを操るかのように高音で滑らかなメロディを奏でたりと、ベースだけなのに、フルオーケストラのような演奏でした。最後には、端の人から順に、一人ずつソロ演奏をしていったのですが、それぞれのプレイヤーが全く違う“持ちネタ”を繰り出し、こんなに個性的でハイレベルなベーシストを7人も集めて面白いことをしてしまうドレッサー氏はやっぱりすごいと思いました。

Deep Tones for Peace Bass Ensemble

だんだん夏らしくなってきたニューヨーク、The Stoneには新しいエアコンが付きました。以前までのものは運転中のノイズが結構大きく、静かな演奏のときは切らないといけなかったのですが、今回のものはとても静かで、暑い日のライヴも快適に見られそうです。この夏も素晴らしいミュージシャンのレジデンシーが目白押しです。みなさま、演奏中の暑さの心配をせずに、ぜひお越しください。

The Stoneホームページ
http://www.thestonenyc.com/

吉田野乃子 JAPAN TOUR JULY 2015

この夏、短期で一時帰国をすることになり、北海道、東京、愛媛でライヴを行います。
お近くの方はぜひお越し下さいませ!

7月2日(木)
■『吉田野乃子サックスソロライヴ』
ドラマシアターども
北海道江別市2条2丁目7-1 TEL 011-384-4011
18:30開場 19:00開演
チャージ:1,500円

7月4日(土)
■『NYの尖鋭・吉田野乃子/色彩の舞踏・航×Praha』
1st stage:吉田野乃子(sax) Solo、2nd stage:航 (piano)×Praha(bellydance)
APIA40
東京都目黒区碑文谷5-6-9サンワホームズB1 TEL 03-3715-4010
13:00開場 13:30開演
前売り2,000円、当日3,000円、ワンドリンク付き
■『Neuromancer』〜 "Almost" First Meeting?
坪口昌恭 (piano,electronics)、吉田野乃子 (sax -from NY)、北村京子 (vocal- from NY)、吉田隆一 (sax)、千葉広樹 (bass)
Velvetsun
東京都杉並区荻窪3-47-21 サンライズ ビル1F
18:30開場 19:00開演
チャージ:3,000円

7月12日(日)
■音溶
愛媛県松山市三番町2-10-9 第3クリーンビル3F
SPACEGRINDER presents…
『EXTREMEDIVES,vol.161』
-underground cult pop series-

castT ◆吉田野乃子 (Pet Bottle Ningen) [from New-York]
◆斜陽 [from 小倉]
◆SPACEGRINDER×Seiya Hoshino
and DJ's...
ADV 1,500円/DOOR 2,000円
OPEN 18:30/START 19:00

吉田野乃子 Nonoko Yoshida

1987年生まれ。北海道岩見沢市出身。10歳からサックスを始め、高校時代、小樽在住のサックス奏者、奥野義典氏に師事。2006年夏、単身ニューヨークに渡る。NY市立大学音楽科卒業。前衛音楽家John Zornとの出会いにより、完全即興や実験音楽の世界に惹かれる。マルチリードプレイヤー、Ned Rothenbergに師事。NYで結成した6人組のバンド" SSSS (Super Seaweed Sex Scandal)"で、2010年5月、ドイツ、メールス音楽祭に出演。2週間のヨーロッパツアーを行う。2009年からNYで活動している前衛ノイズジャズロックバンド"Pet Bottle Ningen (ペットボトル人間)"でJohn Zorn主宰のTzadikレーベルより2枚のアルバムをリリース。4度の日本ツアーを行う。2014年4月、ベーシスト、Ron Andersonの前衛プログレバンド"PAK"のメンバーとして、ドラマー、吉田達也氏と日本ツアーを行う。

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ウィリアム・パーカー・インタビュー<後編>
William Parker Interview Part 2

photo by Lucas Noonan

ウィリアム・パーカー William Parker (bass)

1952年米国ニューヨーク市ブロンクス生まれ。71年に演奏活動を始め、当時の「ロフト・ジャズ」の支え手として活躍。80年から91年までセシル・テイラー・ユニット、またサックス奏者デヴィッド S.ウェア・カルテット、90年代に入ってからはマシュー・シップのグループでも演奏。ペーター・コヴァルトやペーター・ブロッツマンを始めとするヨーロッパの即興演奏家との共演も多い。リーダーとして、コンポーザーとして、後進の育成者として自在な力を発揮している。96年からニューヨーク市で毎年開催される即興音楽を中心としたダンスやヴィジュアル・アートも含めた総合的なイベント「ヴィジョン・フェスティバル」の主催メンバーの一人。前衛詩人であり、アフリカ民族楽器も演奏するが、ブラック・ジャズのスピリットを伝えるベース音の重厚さが、黒い霊樹のような存在感を放つ唯一無二のベーシストである。最近作に『Essence of Ellington』(Centering Records, 2012)、『Live in Wrolove』(Forune, 2013)、『Wood Flute Songs: Anthology - Live 2006-2012』(AUM Fidelity)。

interviewed byシスコ・ブラッドリー (Cisco Bradley)
on Jazz Right Now http://jazzrightnow.com/
translated by 剛田武 (Takeshi Goda)

癒しの力としての音楽〜ウィリアム・パーカーの音楽哲学 <後編>
Music as a Healing Force: The Musical Philosophy of William Parker : Part 2


Cisco Bradley(以下CB):物事の中心(the center of things)を見つけることについて話していただけますか?出来ればそれが正確にどういう意味なのか説明して下さい。

William Parker (以下WP):物事の中心とは、恋をするようなことです。分かるでしょうか?物事が...よろしい。例を上げましょう。これが鍵盤、バラフォンの鍵盤だと想像して下さい。いいですか?

バラフォンやマリンバはどうなっているかといえば、これくらい(手で大きさを示す)の枠の中に、木のピースの大きさ順に、鍵盤が並んでいます。

砂を少し取って鍵盤の真ん中に置き、マレットで砂の上を叩きます。すると魔法のように、砂はちょうど真ん中に集まるのです。どういうことかと言うと、枠の中の蹄と結び目の下を通った部分の上に置いてある大きさ順の鍵盤の砂が集まる部分が、木のピースの最適な振動ポイントなのです。そこがすべてが共振する中心部分なのです。

中心点は、努力しなくても、起った時に分かります。本当に知りたいなら、心を閉ざすだけでいいのです。西洋人は心の閉ざし方を知りません、なぜなら常に物事を把握したがるから。物事を知りたがります。物事を瓶詰めして売りたがるからです。

しかし、心を閉ざさなければなりません、すると音楽が何なのか、自分が万物の真ん中に乗っていることが分かります。それは光っています。熱過ぎも冷た過ぎもしません。ちょうどいいのです。

それが物事の中心です。

それは余り長く持続しません。なぜなら物事は常に様々に動いているから。もちろん音楽もそうです。

もし他の人とのプレイがとても上手く行くと、一日中良い状態で過ごしていられるでしょう。でも調子が落ちたとき、音楽の調子が落ちた時は、エネルギーも減るでしょう。でもあなたは簡単にはい昇り、物事を取り戻すことを学びます。そうしなければなりません。それが自己回復機能なのです。

お互いに離れた島を想像してみましょう。この上陸地、あっちの上陸地。即興演奏をするとき、適切なサウンドを弾けば、その度に橋の一部が現れて渡ることが出来ます。別の音を鳴らせば、ブーン、橋の別の部分が現れます。次のプレイで、ドボン、あーあ、海に落ちてしまいました。でも、あなたには回復機能があります。回復機能が、ビン、バババドゥー、ビン。振り出しに戻ってもう一回やり直せるのです。

そういえば、チームメイトがいましたね。ドラマーがいるでしょう。あなたが落ちるのを見たら、彼は(音を真似る)、イカしたプレイで盛り上げてくれます。サックス奏者も同じです。お互いに助け合って回復するのです。

ここで重要なのは、適当な演奏をしたら、次の上陸地へ行かなければならないということです。上陸地は浮遊しています。風が吹くまではボートを漕ぐようなものです。漕いでいるうちにヒューッと風が吹き、一休みして浮かんでいられます。抵抗は無用です。風が吹いたら風任せ。風が止んだ時に、風のインスピレーションが分かるのです。

あなたは言うでしょう。「OK、ここに書かれたメロディーをプレイしよう、なぜならそこに書かれたメロディーには、インスピレーションの源へ引き戻す力があるから。分かってきたぞ。調子が出ないときはこのリックを弾いた方がいい。今日は誰も霊感をもらえない。だから霊感を受けに行こう。カモン(音を立てる)!」そんな感じです。

または、自分が何か特定のことをすると、誰かが何かをして元の道に戻そうとします。しかしどういう訳か、元には戻れないのです。

つまり、死ぬことはないということです。「ああ、最低の演奏をしてしまった」、だからと言って死ぬことはないのです。そんな時、誰かが言うでしょう。「エクスキューズ・ミー、私はあなたのコンサートがとても気に入りました。今夜のあなたの演奏はすべて大好きです」あなたは言いかけます。「いえ、最低の演奏でした」「そうですね、最低だったかもしれません。でも私はもっといい演奏を聴きたくはありません。だって、美しかったし、あなたにとってこれまで演奏した最低の演奏のお陰で、私の人生を救う助けになってくれたのですから」

繰り返しますが、それは相対的なものなのです。自分の演奏について、自分がどう感じたかは分かりますが、他の人にどのような影響を与えたかは、聴いた人が来て教えてくれないと分からないのですから。

人が多い程、そういうことが起ります。気に入る人が多いのです。でもあなたはそれが分かりません。彼が聴くのと同じように聴くことは出来ないのです。

そんなことが他にも沢山あります

CB:それでは、中心を見つけることは、あなたが話してくれた癒しへのプロセスにも繋がっているのですか?

WP:はい、癒しです。そして癒しのためには沢山の忍耐が必要だと分かりました。長くかかるので、自分自身に対しても忍耐強い必要があります。特にハーブを扱う場合には。わかりますか? 

抗体のようなものです。毎日ハーブを摂らなければなりません。時間がかかります。でも、続けていれば身体は変化し、自ら癒すようになります。少し時間は必要ですが、必ずそうなります。自己治癒するのです。

音楽と人々との関係も同じです。すべて時間がかかります。毎日取り組まなければなりません。そうすれば癒されるのです。身体は整えられたがっているからです。身体は中心に在りたいのです。そうすれば最高の状態で居られるからです。

CB:あなたのプロジェクトの幾つかは、社会的・政治的な問題への特別な方向性を持っています。例えばルワンダの子供たちに向けた曲がありますね。

WP:はい、あります。

CB:つまり、あなたは(音楽の)癒しの力が個人を超えて広がると考えているのですね?

WP:私は演奏するとき、インドの子供たちは今日食べるものがないと思いながら、聴き手に音楽を届けています。そうすれば聴衆はそれを聴き取り、感じ、それを知って少し気が楽になります。が、会場の扉を閉じてしまうと、廊下にいても音楽は聴こえません。

でも、私が思うにこれは死にました。これは意志だったのです。その意志はとても大切です、なぜなら希望に繋がるからです。音楽によい意志を込めることが重要です。そして政治とは...。私の曲に「ホワイトハウスの犯罪者(Criminals in the White House)」という曲があります。面白いことにポーランドのレーベルからリリースされました。レーベルは問題を起こしたくなかったので、タイトルを「ホワイトハウスのトラブル」に変えたがりました。

でも、美しいものが何より政治的だということを認識するべきです。もし「湖上の鳥たち」という曲を書いて虹や蛇のことを歌にしたとしましょう。長くてキレイなメロディーです。それは政治的です。なぜなら人の意識を変えることは政治的だから。自分の意識を変えることは政治的なのです。

そしてまた、曲の背景には何かがあります。映画やアニメーションのアイデアや、ビデオのアイデアが。その曲についての物語のアイデアがあります。

私が書いた「ルワンダの子供たち」という曲があります。パリ滞在時に朝起きたらニュースをやっていて、ルワンダでその日の朝800〜900人が喉を切られたというニュースをやっていました。フツ族とツチ族の争いです。 「うわぁ」と私は言いました。歌が浮かびました。「私を殺さないで。私の喉を切らないで」それから「私はあなたの兄弟です。あなたの姉妹です。だから喉を切らないで」と嘆願します。

でも直後に相手は喉を切り裂き、こう言おうとします。「わぁ、ご近所さんだ。一家皆殺しにした。謝りに行かなきゃ」

誰かの自転車を盗むのは悪いことです。でも人の喉を切ることは...。うーん想像すら出来ません。

ベトナム戦争に行ったことのあるミュージシャンを何人か知っています。彼らは一生かけてベトナムの亡霊から逃れようとしますが、でも逃れられません。難しいことでしょう、辛いことでしょう。

音楽の中には常に政治が交ざっています。音楽について話したり、ライナーノーツを読んだり、といった行為の中にさえ、音楽を通して物事に気づかせたり、音楽の周りに何があるかを意識させたりする政治が含有されています。

CB:これまであなたはそういうことへの理解を自分なりに見つける人のことを沢山お話しいただきました。あなたの人生に於いて他の人々を発見への道へと導くことが出来ると感じていますか?それはシャーマン(祈祷師)の一部ですか?

WP:私には多くの生徒がいます。彼らを通じて、誰もが愛を必要としていることが分かりました。飛んでもいいよと言ってやることが必要なのです。それが必要な全部です。ただ飛んでもいいよと言うことが。それが必要なのです。時には自分ひとりでうまく出来ます。

人は自分自身で出来る筈です。みんなが自分自身の導師になるべきなのです。自分で煮詰めなければなりません。道を見つけるべきです。再度生徒が言います。「はい、私の音を見つけたいです」それは簡単、自分の音を見つけるのは、自分の鼻を見つけるようなものです。すぐそこにあるのです。指を使って、ここに来て、掴めます。

自分の音も同じです。あちこち探す必要はありません。他人のソロ演奏を20000回もコピーする必要はありません。生まれながらにあるのです。自分以外の他人にそれを教えてもらってはいけません。自分と一緒に生まれたのです。すぐそこにあるのです。それに従うだけです。そこにあります。手に入ります。

物事はとてもシンプルなのです。箱、いえ、部屋のようなものです。その部屋に窓はありません。見回してみても真っ暗です。暗闇しかありません。

すると後ろの扉が開きます。後ろに壁はありません。実際に私が思い浮かべるイメージは、後ろには草と日光だけがあり、素敵な湖があります。でもあなたは後ろを見ようとはしないのです。

あなたは見えないことに苛立ちます。でも、ちょっと待って下さい。さあ、深呼吸をして、後ろを見てみませんか。振り返って箱の外へ出ませんか。分かりますか、こんなにシンプルです。人々に必要なのはそれなのです。振り返って気がつくためのちょっとした手引きなのです

幼い子供のようなものです。いつも何かで泣いています。この音を消してほしい、このトランペットの音を消して欲しいと。そこで、音を消してやりますが、子供はまだ5分間も泣き続けます。あなたは言います。「音を消して欲しかったんだろう?5分前に消してあげたよ」すると子供は「あ、本当だ」と気づいて泣き止むのです。

つまり、強い思い込みに気を取られて、強く混乱して泣いているのでしょう。答えを見つけようとする執念です。物事を知らなければ気が楽になります。気が楽になるよう訓練すべきです。

あなたが「僕は何も知らないんだ」と言ったら、ある人は言うでしょう「これを知らなきゃダメ。あれを知らなきゃダメ。これも知らなきゃダメ。あれも...。」
まるで何かを知れば、突如として物事の中心に、正しい車線に入れるかのように。それは違います。何も知らないときこそ、正しい道に入れるのです。
正反対のようですが、それが上手く行くのです。創造性が働くのです。正しくない時こそ正しいところにいるのです。遠いここにいる時こそ、真ん中にいるのです。つまり中心が左側にある位置です。中心の左側ではありません。それが中心です。なぜなら宇宙を見てみなさい。オーケイ、そこが宇宙の中心です。いいえ中心ではありません。これが中心かも。あれも中心かも。

主音と同じです。それがオーネット・コールマンの言うハーモロディックなのです。どの音でも主音に成り得る。どんな音でも。あなたの見方次第です。喩えて言えば、音調にシャープ(高め)して演奏するか、フラット(低め)か、調通りか、ということです。

「私はフラットしてるけど調性通りだ」「シャープしてるけど調性通りだ」人によって違います。

それはあなたがどの世界から来たかにかかっています。「こっちへ来て教えてくれ。何故いつもシャープして演奏するんだい?」「私はシャープ人種の出身です。おじいさんはシャープして演奏し、母もシャープし、叔母さんもシャープし、叔父さんもシャープしていました」。または「何故いつもフラットするんだい?」「血筋です。伯母さんはフラットし、おばあちゃんもフラットし、父もフラットします」

こういう人もいます「何故いつもラウドに演奏するんだい?」

「私はラウド族の出身です。僕らはみんな音楽族出身です。朝の6時に起こして下さい。私はラウドに演奏する準備ができています。私を雇えば、ラウドに演奏します。24/7拍子でラウドに演奏します」「ソフトに演奏したことはないのですか?」「ありません」「何故ソフトに演奏したことがないのですか?」「だって私はラウド族出身ですから」

ラウド、ソフト両方の演奏をする男を雇おうとします。「来て下さい」。すると男はやってきて言います「はい、私はラウドとソフトの演奏をします。でも中間の演奏はしません。中間の演奏が欲しければそういう男を雇えばいいでしょう」「来て下さい」「私はラウド、中間、ソフトな演奏をします」「ああ、それなら良さそうです」「でもマレットを使った演奏はしません。マレットで演奏する奴が欲しければ、そういう奴を雇えばいいでしょう」。次の男は「えーと、私はブラシとマレットの演奏をしますが、スティックは一切使いません」「よろしい、その男を雇おう」

そうやってやっと望み通りの男を得ました。彼は中間の音量で演奏し、ゆっくり演奏し、速く演奏します。ブラシを使い、マレットを使い、スティックも使います。彼こそあなた向けのドラマーでしょうね。唖者であること以外は!あなた自身が何をどう聴くかということに調性が合う人、あなた自身が聴きたいものに順応できる人、そんな人を見つけなければ成りません。

例えば、メロディーしか演奏しない男がいたとします。「なにかリズミックな演奏はしないのですか?」「いいえ、メロディーだけです。それが私のやることです。父はメロディーを演奏しました。母も。私のDNAの中にあるのです。私はメロディーを演奏します。私のメロディーを聴けば、リズミックな演奏をする必要はありません」

これは別のことでしょうか?言いたいことは、あなたが人を魅惑する演奏が出来るならば、他のことを演奏する必要はないということです。だから私はこのメロディーを演奏します。人々はそのメロディーを聴いて、一晩中ただ(拍手をする)だけです。美しいメロディーを演奏する、それこそ私が一生かかって実践してきたことなのです。かつて私のバンドにはBフラットしか演奏しない男がいました。本当の話です。名前は言いませんがね。

15年間他のキーの音はプレイしませんでした。

CB:へえー

WP:それから彼らは外宇宙へと旅立ちブラックホールへと入ります。ある科学者が、ブラックホールの中の音はBフラットだと言いました。それを聴いた彼は戻ってきて「言った通りでしょう。言った通りでしょう。言った通りでしょう」彼は天国にいたのです。冗談抜きですよ。冗談じゃ無く本当のことです。

とにかく気を楽にして自分に出来ることを探すのです。何でも簡単に演奏出来る人々もいます。あらゆるレンジでプレイできる人。でも、もしあなたがひとつのことしかプレイできなくてもクサることはありません。私だって完璧なミュージシャンではありません。だからどうだと言うのでしょうか。何が大切なのでしょうか。自分に出来ると思うことだけをプレイすればいいのです。そうすれば、本当にゆっくりプレイしたいのであれば、ゆっくりプレイできます。速くプレイしたければ、速くプレイ出来るし、ゆっくりプレイできるけど、速くプレイも出来るし、ラウドにプレイできるけど、ソフトにプレイもできるのですから。

我々が、何かが出来て何かが出来ないかというのは、奇妙なことです。例えば「私はベン・ウェブスターしか聴かない」という叔父さんがいたとします。

あなた「知っています。でもコールマン・ホーキンスは聴きませんか?」
「いや、コールマン・ホーキンスは聴かない。ベン・ウェブスターしか聴かないよ」
「ソニー・ロリンズも聴きませんか?」
「いや、ソニー・ロリンズは聴かない。ベン・ウェブスターしか聴かないよ」
「ああ、なんて叔父だろう。僕はソニー・ロリンズ大好き人間なのに。コルトレーンは聴きますか?」「コルトレーンは聴いてみよう。ソニー・ロリンズも」「じゃあコールマン・ホーキンスも聴くんでしょう?」云々。

私が思うに、コルトレーンが好きでソニー・ロリンズは嫌いとか、ソニー・ロリンズが好きでベン・ウェブスターは嫌いとか、ベン・ウェブスターが好きで、コールマン・ホーキンスは嫌いとか、みんなそんな感じです。人間とは奇妙で可笑しくて気難しい。好き嫌いのある子供のようです。僕は緑のものは食べないよ、パパ。緑のものは食べないし、お皿に赤いものも要らないよ、とか、万事その調子でしょう。子供と同じです。意味もなく物事に分別が無く道理が通らない子供と同じです。

人間とはそんなものです。でも、いったん本当の付き合い方が分かれば、彼らのヘルプガイドのようにして、気を悪くさせることなく、「僕はいろんなプレイが出来る。得意なのはこのプレイだ。でも他のプレイも出来るよ」と宣言出来るように導けます。「お金が欲しいかい。プレイの幅が広がれば、もっとお金が稼げるよ」なんて考えることなしに。

あなたに家族がいたとします。ある有名な歌手があなたをバンドに雇いました。でもあなたはひとつのことしかプレイできません。「私の歌の伴奏でブルースを弾いてくれ」と歌手に頼まれたとき、あなたが出来なければ、彼は他の人を雇うことになり、あなたはお金を失うでしょう。

でも、あなたが本当に、本当に、心の底から自分のやることを信じているなら、決して決してお金のことを心配してはいけません。あなたが自分の道をゆくのをお金に邪魔させてはいけません。宇宙の領域のどこかで、何らかの方法で、きっと上手く行くと考えるべきです。子供たちを食べさせられて、あなたは自分の夢を追える、とね。なぜなら夢を追うことが出来なければ、生きている価値が無いからです。あなたにとって、子供たちを食べさせられ、家賃を払えると信じながら、何があろうと自分の夢を追うことが大切だと私は思います。つまり、あなたが存在することが出来て、やるべきことをやれる、ということです。

そう、希望を持つことです。さもなければ、参加することすら出来ません。ビル・ディクソンが言うように「お金を稼ぐことを気にしているなら、今すぐ出て行きたまえ」

お金を稼ぐことについての話ではありません。お金を稼ぎたければ弁護士か、お金を稼げる職業に就けばいいのです。私の言う音楽とは、音楽が第一で、お金は二の次なのです。

CB:素晴らしい!とてもいい話でした。たいへん貴重な見識と考えをお話しいただき、ありがとうございました。

WP:どういたしまして。
(シスコ・ブラッドリー 2014年1月6日)

インタビュー<前編>
http://www.jazztokyo.com/column/jazzrightnow/003.html#04

William Parker Official Site
http://www.musicofwilliamparker.com/

ウィリアム・パーカーは土取利行の招きで来日し、7月20日郡上八幡音楽祭で土取、エヴァン・パーカーと共演する。それに先立つ7月17日は京都で、また7月21日には東京でも公演を行う。
詳細は:http://gmf2015.wix.com/free

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シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley
ブルックリンのプラット・インスティテュートで教鞭(文化史)をとる傍ら、2013年にウェブサイト「Jazz Right Now」を立ち上げた。同サイトには、現在までに30以上のアーティストのバイオグラフィー、ディスコグラフィー、200以上のバンドのプロフィール、500以上のライヴのデータベースを備える。ブルックリン・シーンの興隆についての書籍を執筆中。http://jazzrightnow.com/

剛田 武 Takeshi Goda
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務。
ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

JAZZ TOKYO
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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