『クレア・マーティン & ケニー・バロン/トゥー・マッチ・イン・ラヴ・トゥ・ケア』
text by Kimio OIKAWA

LINN/UK東京エムプラス/ SACD / AKD390
3,100円(税込)

クレア・マーティン(vo)
ケニー・バロン(p)
ピーター・ワシントン(b)
ケニー・ワシントン(ds)
スティーヴ・ウィルソン(sax, fl)

1. Too Much in Love to Care (恋に落ちたら)
2. Embraceable You (君を抱いて)
3. Weaver of Dreams (夢織人)
4. Crazy He Calls Me
5. You Turned the Tables on Me
6. How Long has This Been Going On? (いつの頃からか)
7. Lazy Afternoon (まどろみの昼下がり)
8. Time After Time
9. A Time for Love
10. I Only Have Eyes for You (瞳は君ゆえに)
11. I’m Glad There is You
12. Wonder Why
13. Too Late Now

録音:Calum Malcolm 2011年9月@アバター・スタジオ、NYC
マスタリング:Julia Thomas
プロデューサー:Philip Hobbs & Calum Malcolm

DSD 録音の神髄を出し切っている最も優れた録音

静けさから、とてつもなく鮮明なサウンドが飛び出す。音に、新鮮さという表現がいいか迷うが、まさにマイクロフォンから直接スピーカーに飛び込んだような音だ。録り立て、生き生きしたサウンドがほとばしる。声の質感はマイクに飛び込んだ音そのもの。
印象に強く焼き付くのはピアノ。鮮明にしてピアノの特質を生かし切ったマイクの選択とアレンジが見えて来る。余韻にピアノの骨格がしっかりと乗っていて強い印象を受け、それが持続する。DSD 録音の神髄を出し切っている最も優れた録音と評価したい。この音は、オーディオ・チューニングの必須と言える。
ドラムスのオンマイク処理ののけぞるくらいリアルに迫ってくるミックスは、耳にとげが刺さる感触だ。瞬発力が衰えることなく、まっすぐな感触がたまらない。
トリオを支えるベースは、これまた凄い印象を与える。弦のはじける様を実直に捉え、空間の印象より直接音で勝負を掛けたマイキングだ。音像的にも強力な印象を与える仕掛けと意図が聞け、音量を絞ってもベースの存在感は大きい。フルート、サックスのさっぱりした音質と音像の扱いは、ボーカル録音の配慮と推察するが、こだわりの音が欲しかった。

* 試聴サイト
http://www.linnrecords.com/recording-too-much-in-love-to-care.aspx

及川公生:1936年、福岡県生まれ。FM東海(現・FM東京)を経てフリーの録音エンジニアに。ジャスをクラシックのDirect-to-2track録音を中心に、キース・ジャレットや菊地雅章、富樫雅彦、日野皓正、山下和仁などを手がける。2003年度日本音響家協会賞を受賞。現在、音響芸術専門学校講師。著書にCD-ROMブック「及川公生のサウンド・レシピ」(ユニコム)。

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