#  1013

『大友良英/あまちゃん〜オリジナル・サウンドトラック』
text by 稲岡邦弥


ビクター・エンターテインメント
VICL-64041
¥3,150(税込)

演奏:大友良英&あまちゃんスペシャル・ビッグバンド
作曲:大友良英(except M14/25:大友良英+Sachiko M、M-20:吉田正、M-32:宮澤賢治)
編曲:大友良英&あまちゃんスペシャル・ビッグバンド
プロデューサー:大友良英
録音エンジニア:高橋清孝

1. あまちゃん オープニングテーマ (ロングバージョン)
2. 行動のマーチ
3. でこぼこ道
4. アイドル狂想曲
5. 家族
6. あまちゃんのワルツ
7. 朝のテーマ
8. 琥珀色のブルース
9. 土地
10. 海 (デモバージョン)
11. あまちゃんクレッツマー
12. あまちゃん オープニングテーマ (レギュラーバージョン)
13. あまちゃんスイング
14. 奈落
15. 銀幕のスター
16. アキのテーマ
17. 和解
18. LAND
19. じぇじぇじぇ
20. いつでも夢を
21. TIME
22. 地味で変で微妙
23. テーマ変奏曲
24. 残念なブルース
25. 潮騒
26. 日常
27. 行動のマーチ (デモバージョン)
28. 街と青春
29. みつけて
30. 芸能界
31. 友情
32. 星めぐりの歌
33. 希求
34. 海
35. 灯台

オルタナ系ミュージシャンを中心にヘッド・アレンジで録音した人気の劇伴集

 今年の流行語大賞は「じぇ、じぇ、(じぇ)」で決まり!だとか、あの陽気な「オープニング・テーマ」を聴かなきゃ一日が始まらないとか、NHKの朝の連続TV小説『あまちゃん』が何かと話題になっているようだ。(前回の『純と愛』が最高!と主張してそっぽを向いているへそ曲がりが近くに約1名いるが、もちろん大勢に影響はない)。原作の宮藤官九郎が宮城県出身、音楽を担当する大友良英の実家が福島、物語の舞台が岩手県ということで、大震災に沈み勝ちな東北の人たちにエールを送る内容かと早合点していたが、必ずしもそうではなく(20%前後の視聴者の目を東北地方に向けさせ続ける効果は無視できないが)、アイドルによる「村おこし」をテーマにしている。
 僕が何より驚いたのは他でもない音楽担当が大友良英であるという事実だ。大友が映画やTVドラマの音楽をいくつか手掛け、NHKでも4、5作の劇伴をこなしているという実績はCDに添付されているブックレットを開いて初めて知った次第。不明を恥じるばかりである。大友良英(1959~)といえば、ジャズの世界ではインプロ系のギタリスト、あるいはターンテーブル奏者として知られ、前号のJazz Tokyo、Five by Five #1003 『磯端伸一 ソロ&デュオ with 大友良英/EXISTENCE イグジスタンス』(時弦プロダクション)のレヴューで剛田武は、“ノイジーな音色で空間を引き裂く大友”に言及し、『あまちゃん』については一切口をつぐんでいる。まるで、『あまちゃん』に触れることで謹厳実直でストイックな高柳昌行の「門下生」としての大友のイメージが一片でも損なわれることを嫌っているかのようだ。一方、同じ号で福島高校ジャズ研の大友の後輩であるとカミング・アウトした神野秀雄は『大友良英 with あまちゃんスペシャル・ビッグバンド〜アンサンブルズ・パレード・プレ・コンサート』を取り上げ( Concert Report #542)、“大友が生んだ「あまちゃん」の音楽は今まさに「じぇじぇじぇ」な状況にある”と興奮を隠し切れないでいる。奇しくも Jazz Tokyo #187 で「大友良英」というひとりの音楽家のハードコアな側面とダンディな側面の両極にスポットが当てられることになりとても興味深かった(因に、僕自身も2006年1月に新宿厚生年金会館で行われた新宿ピットイン開店40周年記念コンサートに出演したONJO=大友良英ニュー・ジャズ・オーケストを紹介しているのだが、アーカイヴにアクセスできないでいる。このONJOは、大友のキャリアのなかでは根幹を成す活動のひとつといえるだろう)。
インプロ系ミュージシャンやインプロ系を通ったジャズ・ミュージシャンが映画音楽や劇伴に携わった例は少なくないが、その多くは映像とのコラボレーション効果を狙った即興演奏が多かった。『あまちゃん』での大友のように、カットに合わせて、あるいはいろいろなシーンを想定して音楽を提供したジャズ・ミュージシャンは初めてだろう。CDリリースのために大友は200数十曲のなかから35曲を厳選したと書いている。このあと4回のセッションが予定されており、最終的に何曲になるのか想像が付かないという。劇場用の実写やアニメの劇伴制作に携わった経験から判断してこれは途方もない曲数だ。156回にわたる15分番組の連続TV小説ゆえだろう。『あまちゃん』の音楽内容や制作過程については、上記のコンサート・レポートで詳細に語られており、さらに詳しくはCD添付の作曲者自身の解説(朝ドラ・ファンにとってはかなりマニアックな内容だが)を参照されたい。因に「じぇじぇ(じぇ)」は、岩手県久慈市の方言で、驚いたときに発せられる感嘆詞の一種。ふた昔前、内海突破のギャグとして一世を風靡した「ギョギョッ」に近いのだろうか。
注目すべきは、「編曲:大友良英&あまちゃんスペシャル・ビッグバンド」のクレジットであり、これは大友が用意したメロディを現場で演奏者がアイディアを出し合いながら、あるいは音を出し合いながら編曲していくというジャズ特有の「ヘッド・アレンジ」を意味している(もちろん何曲かのストリングスとホーンについては江藤直子が譜面を用意している)。M1のオープニング・テーマで提示されたいくつかのメロディが姿を変え、形を変え幾度となく登場する。これは劇伴の常道である。ブルースもあればスイングもある。すべて生音だから味わいはとてもウォームでヒューマンである。いい意味でルースである。“オリジナル”サウンドトラックだから尺の短いものが多い。繰り返し使われているトラックも多いようなので、熱心な視聴者の頭にはいろいろなシーンが去来するだろう。サントラを聴く妙味である。(稲岡邦弥)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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