#  1059

『川村結花 / private exhibition』
text by 神野秀雄 (Hideo Kanno)


Boo Fee Records
BFR-001 \2,800
2013年12月4日発売予定

川村結花 (vo, p)

1. 歌なんて
2. to be continued
3. ひさしぶりだね
4. 「君はきっとだいじょうぶ」
5. いっぽんみち
6. 25
7. また、ウソをつく
8. 聖夜
9. なんでもないなんてことない歴史になんて残らない一日
10. 後半もお楽しみに
11. おやすみ、ね

作詞・作曲:川村結花
プロデューサー:川村結花&松本大英
録音&ミキシング:松本大英 (Wide & Zoom)
録音:BS & T Studio, Studio Blan
マスタリング:田中三一 (Burnie Grundman MASTERING)
アート・ディレクション&デザイン:南一夫

ジャケット・デザインにやられた。ピアノを正確に描いている訳ではないのに、もう独自の世界観がジャケットを満たしていて、ピアノ以上にピアノの物体があって、そこに居るのは他でもない川村結花。この南一夫のイラストはよく見るとまったく直線がなく、ピアノ線の緩やかなカーヴが気持ちに穏やかに入り込む。8年ぶりのスタジオ録音は川村の原点である「歌とピアノだけの世界」を綴る。そして初めて自主レーベルで、自分でプロデュース、録音からミキシング、マスタリングまでに立ち会って作った特別の一枚への肩から力の抜けた意気込みを的確に表現している。
SMAP<夜空ノムコウ>の作曲をはじめとして、たくさんのアーティストに素晴らしい作品を提供し続けてきた川村。「第52回 輝く!日本レコード大賞」作曲賞を2010年にはFUNKY MONKEY BABYSと共作の<あとひとつ>で受賞していて、この曲は、コナミ日本シリーズの楽天×巨人戦の9回で田中将大が登場すると数万人が歌ったのが記憶に新しい。川村は東京藝術大学作曲科で塩谷哲や岩代太郎の同級生にあたるが、早稲田大学モダンジャズ研究会でレギュラーバンドのピアニストを務めたことがあり、矢野顕子にも通じることだが、ジャズピアノの自由な表現力と感性を持ちあわせながら作編曲とライブを行っている。川村は影響を受けたミュージシャンとして、パット・メセニー、ケニー・カークランド、ウェイン・ショーター、リッキー・リー・ジョーンズ、ジョニ・ミッチェル、ベンフォールズ・ファイブらの名前を挙げている。
前作『a half note』から8年、アルバムとしては長いブランクだが、その間、じつにたくさんの歌に命を吹き込み、たくさんのアーティストによって表現されてきている。その中には、観月ありさに提供した<星の果て>、映画『火天の城』に提供し中孝介(あたりこうすけ)が歌った<空が空>など珠玉の作品も数多くあり、セルフカバーだけで何枚ものCDが作れてしまうが、今回アルバムに録音されたのは、いずれも川村自身が歌うために書き下ろされた曲ばかりだ。つまり「仕事」だったり、他のミュージシャンの声や佇まいを前提に書いた曲ではなくて、川村の今の気持ちと肉声で生まれてきた曲。眩しいような素敵な恋愛などは描かれないからそうそう商業的にヒットすることを敢えて狙ってはいない。秋〜冬に似合う「切なさ」を漂わせながら、さまざまな人の等身大の生き方をさりげなく優しく受け入れて、静かに応援するような内容で作られている。また歌を紡いでいく自分の生き方にも基盤を置いている。
2011年頃からピアノ弾き語りによる「独奏」ライブに持ち込んで歌い始めていたり、田中邦和(ts, ss)とのデュオ「田中君と川村さん」で歌われてきた曲、また、2012年11月30日に目黒ブルースアレイジャパンで行われた、石成正人(g)、玉木正昭(perc)、tatsu(b)、田中邦和(sax)による久しぶりのバンドによるライブ「Power of Five」に向けて書かれた曲など、ほどよく新鮮で、ほどよく歌い込まれた歌たちだ。
川村の想いを描き出す特別な言葉と、巧みな曲の構成やコード進行、美しく表現力に富んだピアノが生み出す音の空間に圧倒される。「個展」というタイトルに偽りのない、現在の自分の想いと音楽性を最大限に表現し、聴く者に優しさと安らぎを届けるアルバムの完成に拍手を送りたい。(神野秀雄)

【JT関連リンク】
川村結花&田中邦和デュオ
http://www.jazztokyo.com/live_report/report544.html

【関連リンク】
川村結花オフィシャルウェブサイト
http://www.kawamurayuka.com

Yuka Kawamura Best “Works”

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
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