#  1108

『Donauwellenreiter / Messëi』
text by Kayo Fushiya


Intuition ; 2014 INTCHR 71311

Donauwellenreiter;
Maria Craffonara(voc,v,perc)
Thomas Castañeda(p,kb)
Nikola Zaric(acc)
Joerg Mikula(d)

Guests:
Magdalena Grabher(background vocal)
Rafael Preusch(b)
Magdalena Grabber(backing vocals)
Alexander Wladigeroff(tp)
Mario Vavti(tb)

1.Hint I
2.Cyros
3.Frau Maria
4.HintU
5.Pentasong
6.Messëi
7.Rudiments
8.Hint V
9.Café Korb
10.Supertonic
11.Hint W
12.Sela in furs

Produced by Donauwellenreiter & Alexander Nefzger
Recorded at 2012 Autumn @4 tune Studio, Vienna, Perchtoldsdorf
Mixed by Martin Klebahn & Alexander Nefzger
Mastered by Andreas Rathammer @ The Q-Room, Viennna

多文化ウィーンをモザイクのように透かし見るアルバム

Donauwellenreiter(ドナウヴェレンライター;英語では”Danube Surf”の意)は2010年にウィーンで結成。Maria Craffonara(マリア・クラフォナラ;ヴォーカル&ヴァイオリン)、Thomas Castañeda(トーマス・カスタニェダ;ピアノ)、Nikola Zaric(ニコラ・ザーリチ;アコーディオン)によるトリオが基本編成。デビュー時から地元オーストリアをはじめドイツ語圏で高い評価を受け、2013年イタリアのフェスティヴァル・カステルフィダルドでは審査員特別賞を受賞。欧州各地のフェスティヴァル出演依頼が相次いでいる。大陸ヨーロッパでは常態といえるが、メンバーのバックグラウンドはここでも多国籍。ヴォーカルのマリアはスイスの少数言語地域の出身であり(タイトルの”Messëi”もロマンシュ語)、ピアノのトマスはスペイン系、アコーディオンのニコラはバルカンにルーツをもつ。各メンバーのソロイストとしての力量は粒ぞろいだが、そうした技術的練磨は表層にはあらわれず、ひたすら聴き手の皮膚感覚に沿うアンビエンスやフィーリングが一貫し、あたかも波(ドイツ語で“welle”。バンド名の一部にも含まれる)のように感知される。バルカンやラテンの民族音楽特有の感傷、クレツマーの扇情やタンゴの激情、ポップなソング・ライティングやクラシックの断片も緩急自在に連結され、いちど聴けば忘れないメロディの吸着力のよさ。要所要所で挿入されるモチーフのヴァリエーション<Hint I〜W>も、アルバム全体の寒暖の加減にひと役 (たった一音のエッジの鋭さで辣腕ぶりを確信させる<Hint W>のトランペットも聴きもの)。楽器編成の属性そのものがもつ音の風合いはただでさえノスタルジックだが、個々のメンバーの、ヴォイスも含めたマルチ・イントゥルメンタリストぶりが、ありがちなエスニック系に陥らぬ痛快さを生んでいる。東西文化の融合点...というウィーンに期待されて久しい地理的・歴史的役割など一見クールにかわすようでありながら、しかし抜かりなくそれらを露見させるエンタテインメント性に感服。本作ではほかにオーストリアで名高いドラマーのJoerg Mikula(ヨルグ・ミクラ)、ブルガリア人でトランペットの名手Alexander Wladigeroff(アレクサンダー・ヴラディゲロフ)、ベースのRafael Preusch(ラファエル・プロイシュ)らが参加。レコ発はウィーンの国際アコーディオン・フェスティヴァルのガラとして執りおこなわれた(伏谷佳代)。

《関連サイト》
http://www.donauwellenreiter.com/START.html
http://joergmikula.com/
http://www.wladigeroff.com/

伏谷佳代(ふしや・かよ)
1975年仙台市生まれ。早稲田大学卒。現在、多国語翻通訳/美術品取扱業。欧州滞在時にジャズを中心とした多くの音楽シーンに親しむ。趣味は言語習得にからめての異文化音楽探求。
JazzTokyo誌ではこれまでに先鋭ジャズの新譜紹介のほか、鍵盤楽器を中心にジャンルによらず多くのライヴ・レポートを執筆。

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