#  1124

『内田修ジャズコレクション/カタログVOL.1 60's』
text by Kenny Inaoka


岡崎市立中央図書館 OUJC-001
2000円(税込)

1. 木更津甚句/ THE VILLAGE(作曲:秋吉敏子)

1965年1月17日 名古屋市 ヤマハビル
ヤマハ・ジャズ・クラブ第4回 秋吉敏子サヨナラコンサート
秋吉敏子(p)

2. FAST(作曲:前田憲男)

1965年12月20日 名古屋市 ヤマハビル
ヤマハ・ジャズ・クラブ第12回
猪俣猛とウエストライナーズ クリスマスコンサート
猪俣猛(ds) 伏見哲夫(tp) 鈴木重男(as) 原田忠幸(bs) 前田憲男(p) 滝本達郎 (b)

3. 6.3.4.〜リハーサル(作曲:山下洋輔)

1963年4月29日 愛知県岡崎市 内田修氏自宅
高柳昌行(g) 金井英人(b) 日野皓正(tp) 鈴木孝二(as) 宇山恭平(g) 影山勇(b)石井剛(ds)

4. 6.3.4(作曲:山下洋輔)

1963年5月26〜27日 東京都 銀巴里
新世紀音楽研究所第6回発表会
日野皓正(tp) 鈴木孝二(as) 山下洋輔(p) 滝本達郎(b) 石井剛(ds)

5. HALATION(作曲:山下洋輔)

1963年5月26〜27日 東京都 銀巴里
新世紀音楽研究所第6回発表会
日野皓正(tp) 鈴木孝二(as) 山下洋輔(p) 金井英人(b) 石井剛(ds)

6. ZERO(作曲:金井英人)

1963年5月26〜27日 東京都 銀巴里
新世紀音楽研究所第6回発表会
高柳昌行(g) 金井英人(b) 日野皓正(tp) 鈴木孝二(as) 中牟礼貞則(g) 山下洋輔(p) 稲葉国光(b) 滝本国郎(b) 影山勇(b) 山崎比呂志(ds)

監修:佐藤允彦

愛知県岡崎市の内田病院で外科医として腕を振るっていた内田修医博(1929~)は「ドクター・ジャズ」として内外のミュージシャン、ファンに良く知られた存在である。多くの内外のミュージシャンが内田病院や自宅内のドクターズ・スタジオを去来、逗留、1997年に150回例会を以て終了したコンサート「ヤマハ・ジャズ・クラブ」を通じて氏と交流してきた。1992年、内田病院を閉鎖、外科医としての第一線を退くとともに、自ら所有していた膨大な音源や資料を岡崎市に寄贈、岡崎市では市立岡崎美術博物館で何度か企画展を開いて資料を公開したのち、2008年に岡崎市中央図書館交流プラザ内に常設の「内田修ジャズコレクション展示室」を開設、多くの貴重な資料を市民に公開するに至っている。
氏は、1963年以降、先進的ミュージシャンの実験・発表の場であった銀座「銀巴里」にレコーダーを持ち込み、あるいは1964年に開設した「ドクターズ・スタジオ」でのプライベート・セッション、同年からライヴ・コンサートを始めた名古屋のヤマハ・ジャズ・クラブでの演奏を多数収録してきた。岡崎市ではこれら貴重なアーカイヴの中から監修者に佐藤允彦氏を立て、「カタログ編」と「人物編」の2つのテーマで「史的に価値があること」と「世に紹介すべき優れた演奏であること」を指標に選曲を依頼、漸次CDを通して広く公開することとした。
「カタログ編」のVol.1のタイトルは『60’s』で、60年代のアーカイヴの中から、ヤマハ・ジャズ・クラブから2曲、自宅ドクターズ・スタジオでのリハーサルから1曲、銀巴里での演奏から3曲が収録されている。冒頭の秋吉敏子は内田氏と同い年の1929年生まれ、バークリー音楽院を卒業、ミンガスのグループを経た後の36歳の演奏で、日本の民謡に想を得たオリジナルを左手の動きに特徴を持たせながらイマジナティヴな演奏を力強く展開している。2曲目の猪股猛とウエストライナーズは文字通り快適なテンポ(fast)で展開され、各人のソロも見事、音質が良ければ最近の録音と聴き紛うかも知れないが半世紀前の演奏である。3〜6の4テイクは新世紀音楽研究所がらみの演奏である。新世紀音楽研究所は、1961年に金井秀人(1931~2011)と高柳昌行(1932~1991)が語らい、菊地雅章(1939~)と富樫雅彦(1940~2007)が賛同して結成されたカルテット「ジャズ・アカデミー」を母胎に1963年に結集した音楽家集団。文字通り、既成の枠に捕われない新しい時代のジャズの追求を目指して研鑽、その成果の一部として1963年の銀座・銀巴里でのセッションが『幻の銀巴里セッション』(1973 TBM)として公表されている。音源は、内田修氏の私的録音である。3〜5のトラックでは当時若干21歳の山下洋輔(1942~)の楽曲を2曲とり上げ、同じく21歳の日野皓正(1942~)が必死に新しい奏法を模索する姿が眩しい。注目すべきは金井と高柳が顔を揃えたトラック6の<ZERO>で、演奏の途中で金井がメッセージを読み上げる。ミンガスを信奉していた金井だがミンガスのようなアジテーションではなく、「拝啓 セロニアス・モンク様 あなたは本当に立派だった、サンキュー」で始まるモンク讃歌。あるいは、2週間前に来日したセロニアス・モンク・カルテットを聴いた上での反応かも知れない。オーネット・コールマンが『来たるべきジャズの姿』(1959)を発表し、NYのファイヴ・スポットへの6週間連続出演を果たしフリー・ジャズの夜明けを告げてから数年後、日本でもその意思を確実に受け継いだミュージシャンたちの姿があった。金井は続ける。「モンク、ドゥー・ユー・ライク・オーネット?」。
金井ももちろんオーネット・コールマンを意識していたのだ。オーネットがその名も『フリー・ジャズ』をアトランティックからリリースしたのは1961年だった。(稲岡邦弥)

* 関連リンク
http://www.jazztokyo.com/column/sugita/column_70.html

稲岡邦弥 Kenny Inaoka
兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。音楽プロデューサー。著書に『改訂増補版 ECMの真実』編著に『ECM catalog』(以上、河出書房新社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。
Jazz Tokyo編集長。

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