#  1160

『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』
text by Yumi Mochizuki


RED CASTLE MUSIC / CD baby (USA)
TIME&STYLE / ディスク・ユニオン(国内)2500円+税

ケイ赤城 (p)
若井俊也 (b)
本田珠也(ds)

1. WADE PARK MORNING (ケイ赤城)
2. NEW CHILDREN’S SONG V(ケイ赤城)
3. CIRCLEPOINT (ケイ赤城)
4. THREEWAY MIRROR (MARK EGAN)
5. OFFSTEPS(FOR SUNSHIP) (ケイ赤城)
6. SHIKAKUGAI KATSUDOU(UNQUALIFIED ACTIVITIES) (ケイ赤城)
7. SINCE WHEN (ケイ赤城)
8. TWIN LAKES (ケイ赤城)
9. CHASING A WHIM (ケイ赤城)
10.WADE PARK REPRISE (ケイ赤城)

プロデューサー:ケイ赤城
エンジニア:内藤克彦、増尾好秋
マスタリング:増尾好秋
録音:2014年7月 ペンシルバニア、柿の木スタジオ

 最先端のジャズの息吹きとジャズの伝統への強いリスペクトの気持ち、そしてフリーなインプロヴィゼーションをくりひろげるケイ赤城トリオの世界

 CDが回り始めた瞬間から身の引き締まるほどの緊張の連続でチック・コリア『NOW HE SINGS、NOW HE SOBS』(Solid State)のダイナミズム、疾走感を今に蘇らせさらに赤城ミュージックに昇華している。
 その原動力はもちろんケイ赤城(p)である。そして本田珠也(ds)の瞬発力、若井俊也(b)の脈打つリズムも大きな貢献をしている。
 ケイと本田、若井の3者が絡み合い、せめぎ合いながらもぎりぎりのところで均衡を保ちケイの進む方向へとまっすぐ進む。
 ケイのピアノには強い意志と自由な精神がこめられ、ピアノ・トリオのあるべき姿のひとつの方向を提示している。また、ケイのジャズへの造詣の深さが底流に脈打っている。

 『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』はRED CASTLE MUSICつまりケイ赤城のレーベルからの第一弾でありアメリカでリリースされ、日本ではTIME & STYLEとディスク・ユニオンが販売するという形をとっている。ケイはこれまでVIDEOARTSから多くの作品を発表してきたが2007年の『LIQUID BLUE』(VIDEOARTS)以来、実に7年ぶりの新作で、ケイの自主制作というかたちで、アメリカから発表された。
 このアルバムは単に7年間の空白を埋めるだけではなくピアノ・トリオというフォーマットの中で自分の音楽を真摯に追及し、理想の音を追い求めるケイ赤城のひたむきさがストレートに伝わってくる。

 ケイ赤城はこのレコーディングのあと「TIME & STYLE JAZZ」のインタビューでこの作品について語っているが、その中でトリオというものはジャズのリズムセクションの神髄であり、インプロヴィゼーションでメンバーの統合をありのままにさらけ出せるアンサンブルは他にないと語っている。レコーディングは増尾好秋(g)のペンシルバニアのスタジオ「柿の木スタジオ」で今年2014年の7月の上旬行われた。ケイの夫人と増尾の夫人が姉妹ということもあり、昨年から増尾のスタジオで録音することを計画していたという。ケイはカリフォルニアから、本田と若井は日本からペンシルバニアに行き、およそ、1週間ほど増尾宅のコテージに住み、いわば合宿のような形でこの音楽を創りあげたという。音楽の密度がとても濃いのはこの共同生活による連帯感からきているのかもしれない。

 増尾好秋は2008年にニューヨークのスタジオ「The Studio」を閉鎖しペンシルバニアに「柿の木スタジオ」を新設し多くのレコーディングを行っているが、ニューヨーク時代に増尾の録音した菊地雅章(p)テザード・ムーン『FIRST MEETING』(WINTER & WINTER、1990〜1991)のプーさんの深みのあるタッチ、モチアンの透明なシンバルの響き、ピーコックの弦のきしみはアコースティックなサウンドの典型として今なお光り輝いている。
 『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』もまるで眼前にトリオが演奏しているような迫力が伝わり、ケイ赤城トリオの音楽が余すところなく録音されていて、増尾好秋がレコーディング・エンジニアとして以上の存在だったことが音から浮かび上がる。ケイ赤城プロジェクトの成功はトリオの3人と増尾、そして「柿の木スタジオ」であったことがわかる。

 ちなみに本田珠也はこのレコーディングの空き日に近くの湖で泳いだりボートを漕いだりとペンシルバニアの自然を満喫し、ゆったりとした時の流れに心身ともにリフレッシュしてプレイしたことを自身のFacebookで述べているが、珠也の活き活きとしたプレイがトリオにダイナミックな躍動感を与えている。

 演奏はマーク・イーガン(b)の(4)<THREEWAY MIRROR>をのぞいて全てケイ赤城の曲で構成されているが、ケイは5年がかりでこれらの曲を練り上げたのだそうだ。
 曲のなりたちについては「TIME & STYLE JAZZ」でケイ自身が説明しているので以下のアドレスから見ることができる。
 http://www.timeandstyle.com/plus/news/news_contents/20141025news01.html
 それによると(1)<WADE PARK MORNING>と(10)<WADE PARK REPRISE>はケイの故郷クリーブランドにある公園にちなんで名づけられた曲。(8)<TWIN LAKES>は増尾のスタジオ周辺の地域を指しているという。曲名からはケイの私小説のような感じもするが演奏は最先端のジャズの活力、そしてフリーなインプロヴィゼーションに満ち溢れている。
 また、(5)<OFFSTEPS(FOR SUNSHIP)>はサンシップ・テウス(ds)に捧げられた曲で、ケイはジェームス・ニュートン(fl)のグループで数年間一緒に演奏していた。ケイはサンシップを敬い、一緒に演奏できたことを誇りに思っているのだという。サンシップ・テウスはチャールス・ロイドのモントルー82での演奏や日野・菊地の「東風」のコンサートのメンバーとして来日したこともある素晴らしいドラマーである。(2)<NEW CHILDREN’S SONG V>はチック・コリアのものではなくケイのオリジナル。

 ケイ赤城はカリフォルニア大学アーバイン校の芸術学部教授として教鞭をとっている都合で例年、日本には夏休みと冬休みのときに帰国してケイ赤城トリオの日本国内コンサート・ツアーをしているが、その演奏には一貫して自己の音楽を貫く前向きの姿勢が熱く伝わってくる。
 自らのレーベル「RED CASTLE MUSIC」を立ち上げて発表した『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』(RED CASTLE MUSIC)にはそうしたケイ赤城の強い想いが本田珠也、若井俊也という旬のミュージシャンを得、さらに増尾好秋の「柿の木スタジオ」という素晴らしい環境の中で、新しい刺激的なトリオ・ミュージックを創りあげている。
 ケイ赤城は今年の冬は12月8日からこのメンバーで『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』発売記念ライブの日本国内ツアーを行う予定である。(望月由美)

『ケイ赤城トリオ/CIRCLEPOINT』発売記念ライブのスケジュール
http://www.worldcom.ne.jp/~yamagen/kei/top-info.htm

望月由美 Yumi Mochizuki
FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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