#  1195

『キース・ジャレット/クリエイション』
text by Masanori Tada


ECM/ユニバーサル UCCE-1150 \2700(税込)
2015年5月6日発売予定

キース・ジャレット(p)

1:パートT 2014年6月25日トロント、ロイ・トムソン・ホール
(PART TToronto, Roy Thomson Hall June 25, 2014)
2:パートU 2014年5月9日東京、紀尾井ホール
(PART UTokyo, Kioi Hall May 9, 2014)
3:パートV 2014年7月4日パリ、サル・プレイエル
(PART V Paris, Salle Pleyel July 4, 2014)
4:パートW 2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ
(PART W Rome, Auditorium Parco della Musica July 11, 2014)
5:パートX 2014年5月9日東京、紀尾井ホール
(PART X Tokyo, Kioi Hall May 9, 2014)
6:パートY 2014年5月6日東京、bunkamuraオーチャード・ホール
(PART Y Tokyo, Orchard Hall May 6, 2014)
7:パートZ 2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ
(PART W Rome, Auditorium Parco della Musica July 11, 2014)
8:パート[ 2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ
(PART [ Rome, Auditorium Parco della Musica July 11, 2014)
9:パート\ 2014年4月30日東京、bunkamuraオーチャード・ホール
(PART \ Tokyo, Orchard Hall April 30, 2014)

ジャレットは新しい聴衆を得ることができることだろう。

初めてだ。いろんな場所のコンサートからピックアップされたトラックで編成されたソロ・ピアノの新作。

美しく。愛おしい。かつての美貌を彷彿とさせる、皺が刻まれたおばあちゃんの笑顔。想う、幾年月。もう、美の集中力に凍りつくことも、ギリギリの未踏に震えることもなくなった。

どの瞬間の打鍵にも、キースの音がある。それだけで、泣き崩れてもいいと、思ってしまう。

あ。

5曲目。トレモロから溢れてくるハーモニー。旧い恋人の積年の恋心を告白されるよう。胸が苦しい。おお、さすが東京での録音だ、誇るべし、われら東京のキースファン、世界に誇る紀尾井ホールだ。

早まわしのフィルムを見ているようだ。

キースのソロは、例外なく公演する土地のガイストを旋律に潜ませている。この点を中心に据えた評論は少ないが、本人もそう言っている。そんなピアニストはこれまでもこれからも、いない。ぼくたちはそのことを、何度でも後世に伝え続けなければならない。

ぼくはさっきまで、ジャレットのピアノ・ソロ作品を『レイディアンス』の到達に見て、全作品を採点した一覧表を作っていた、かなり辛口で。ジャレットもうじき70になる、プーさんは75になった、ポール・ブレイは82だ。『クリエイション』を聴いて、何をやってんだ、キース、と、二人の兄貴は言うだろう。 ECMアイヒャーは、現在、NYダウンタウンジャズシーンのトップ5(名前を英字で列挙せよ)の才能を、それぞれに次元を上げた制作によってドキュメントしてもいる。彼が言いたいことはきっとこうだ。聴こえるものだけではない、音の向こう側、音でしか到達できない場所がこの世界に潜んでいるということを知ってほしい。おそらく、指揮者チョン・ミョンフンにピアノを弾かせたことともつながっている。

カッティングエッジだけでは生きられないんだよ、だからね。

かつて、メロディアットナイトを聴いてキースもヤキが回ってしまったよ!なんて思ったぼくたち。カーネギーなんか聴いていられない、ノーエンドは終わってる、わがままばかり言う。一時期キースに影響を与えたのではないかとジョン・コーツのピアノが聴かれたこともあった、それは70年代だった。そうさ、床屋で熱いタオルを顔にかぶせてもらっている間とか、全身ほぐし60分コースのBGMになら、この上ない歓びを与えてくれそうだぜ、キースの新譜『クリエイション』は、さ!と、書く気まんまん。

ジョージ・ウィンストンとは言わないが、世にあるヒーリングチャンネルでかかっているようなピアノミュージックは聴いたことはあるかい?

この圧倒的な慈しむような感覚との落差をこそ、だ。この震える指、懐かしむ祈りの感情、この一枚で、CDショップの多くのカタログはわたしたちの実生活から不要になることは確実である。(多田雅範)

多田雅範 Masanori Tada / Niseko-Rossy Pi-Pikoe。
1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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