#  1212

『Donny McCaslin/Fast Future』
text & photos by Takehiko Tokiwa


Greenleaf GRE-CD-1041

Donny McCaslin (ts)
Jason Lindner (p,kb)
Time Lefebvre (el-b)
Mark Guiliana (ds)
Nina Geiger (vo)
Nate Wood (g)
Jana Dagdagan (spoken word)

1. Fast Future
2. No Eyes
3. Love and Living
4. Midnight Light
5. 54 Cymru Beats
6. Love What is Mortal
7. Underground City
8. This Side of Sunrise
9. Blur
10. Squeeze Through

Recorded by Michael Marciano at Systems Two, Brooklyn, NY
on June 2014.

Produced by David Binney

 前作『Cast for Gravity』で、2013年のグラミー賞ベスト・インストルメンタル・ジャズ・ソロにノミネートされたダニー・マッキャスリン(ts)のエレクトリック・クァルテットは、次なるフェイズに到達した。70年代のフュージョン/ジャズ・ロックのみならず、アフェックス・ツゥイン、スクリレックス、バスら、エレクトロニカの最先端を行くアーティスト達の影響を色濃く受けている。エレクトロニカをオルガニック・ビート化し、美しいメロディと、ハーモニーの動きを加味して、新たなサウンドを構築した。バスのカヴァーの<No Eye>やアフェックス・ツゥインの<54 Cymru Beats>のフリー・ジャズ化に、その成果を見いだせる。マリア・シュナイダー・オーケストラのメイン・ソリストとして知られ、昨年のデヴィッド・ボウイ(vo)との共演曲<Sue>でも大きくフィーチャーされたマッキャスリンだが、ここでは全く異なったエレクトリック・サウンド・テクスチャーをバックにしながら、いつも通りの力強いブロウと、メロディアスなソロをとる。
 グループのDJ的役割を担い、グルーヴを牽引するティム・リファブヴレ(el-b)、どのようなサウンドにも柔軟に対応し、見事なカラーリングを施すジェイソン・リンドナー(p,kb)、ブラッド・メルドー(p,kb)とのエレクトロニカ・デュオ、”メリアナ”でも圧倒的な存在感を発揮していた若きグルーヴ・マスター、マーク・ジュリアナ(ds)のアンサンブルは、ソリッドで鉄壁だ。そして5人目のメンバーとして前作に続いて、プロデュースを手がけるデヴィッド・ビンニーが参加。マッキャスリンは、このアルバムは彼のアイデアが随所に生かされていると語る。<Love What is Mortal>のジャナ・ダジャガンによるスポークン・ワードもビンニーのアイデアで、曲の世界観を見事に具現化したと語る。ビンニーは、現在のニューヨークのアンダーグラウンド・シーンの中で、ロバート・グラスパー(kb,p)らの次のムーヴメントと目されている音楽ファイルをエディットして交換し、新たなサウンドを創造するマーカス・ストリックランド(ts,ss)、パスカル(p)&レミー(ts)の双子のル・ブーフ・ブラザースらのグループの中心人物であり、本作にもそのスタイルが影響されていると思われる。かつてクインシー・ジョーンズ(arr)は「音楽の進化は、リズムに現れる」と語った。その的確なサンプルが本作『Fast Future』であり、次回作ではこのユニットが、どのベクトルを目指すのかが注目される。

 4月8日のジャズ・スタンダードに於ける CDリリース・ギグでは、ロサンジェルスでのスタジオ・ワークが多忙なティム・レファブヴレに替わってマット・コヘシィ(el-b)が参加。アルバムよりもさらに繊細さを併せ持つダイナミッスが体感できた。ジュリアナとリンドナーの組み合わせも、”メリアナ”に匹敵する変幻自在なグルーヴを誇り、マッキャスリンがブースターを装着したようなソロで圧倒した。(常盤武彦)

関連リンク
Donny McCaslin
http://www.donnymccaslin.com

ダニー・マッキャスリン・エレクトリック・クァルテット ダニー・マッキャスリン ジェイソン・リンドナー
マーク・ジュリアナ ダニー・マッキャスリン マット・コヘシィ

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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