#  1227

『Thomas Rueckert Trio/Parvaneh』
text by Kayo Fushiya


Double Moon Record DMCHR71152

Thomas Rueckert (piano)
Reza Askari (bass)
Fabian Arends (drums)

1. Song for B (Parvaneh) (01:37)
2. Jill’s Thema (04:38)
3. Isaac (06:03)
4. Sweet Death (04:01)
5. Everything I love (05:36)
6. Arabesque (05:36)
7. The Emptiness at the heart of your hope (06:17)
8. Giulia (05:29)
9. Morning Rise (03:09)
10. Swimmer (03:07)
11. Parvaneh (Song for B) (07:20)
Total time: 53:02

Compositions 3,4,8,9 by Thomas Rueckert, 1,7, 11 by Reza Askari, 2 by Ennio Morricone, 5 by Cole Porter, 6 by Paul Motian, and 10 by Jacob Bro

Recorded by Christian Heck @ Loft Koeln on October 2 and 3, 2014, February 2, 2015
Mixed by Christian Heck @ Tonart Studio Kerpen on December 12, 2014 and February 18, 2015
Mastered on March 9, 2015

Produced by Thomas Rueckert and Volker Dueck

トーマス・リュッケルトはケルンを拠点とするピアニスト。リー・コニッツとのプロジェクトなどで活躍しているが、ケルン・シーンの若手ふたりを擁したこの編成のトリオでは2012年の『Meera』に続いて2年ぶりのリリース。一見オーソドックスなピアノ・トリオのスタイルのようでありながら、深い叙情性のなかに落とし込まれた変拍子や削ぎ落とされたアレンジメントのセンスが光る。これ見よがしな新しさの追求が形骸化して抜け殻になってしまったようなジャズ界の現況とは対照的に、極めてシンプルな形態をとりつつも、音間にひそむ思いもかけない側面をあぶり出してゆく。単音でも存在感抜群の内省的でニュアンスに富んだピアノの音色は、空間的な拡がりを感じさせてくれる暖かな静寂を身上とする。巷によくある、録音環境によって生み出された真空状態のそれとは全く異なる。レザ・アスカリとファビアン・アレンドという優れたリズム隊を擁しながらも、肉体に直截的に働きかける解りやすい刺激やグルーヴはあえて鳴りを潜め、より高次元にある、響きへのセンスとその把握力、メロディストとしての美質が若いミュージシャンからうまく引き出されている。リーダーであるリュッケルトのオリジナルや、モリコーネ、ポール・モチアン、ヤコブ・ブロなどの作品が表題曲である”Parvaneh”に挟みこまれる構成。”Parvaneh”はペルシア語で”蝶”を意味し、レザ・アスカリのペンによる。とりわけアルバムの終曲はじっくりと聴かせる。デジャヴュなようでいて、どこか異質な音の残像が翻る蝶のイメージとオーヴァーラップする。ちかちかするような一瞬の幻惑であるが、思えば音楽の新芽とはこうした捉えがたく表現しがたい、ぎりぎりの一線にこそあるものかもしれない。柔らかな音の波に洗われながらも知覚が研ぎ澄まされてゆく、静謐なスリリングさがある。トーマス・リュッケルトの揺るがぬ信念と美学が感じられる1枚。(伏谷佳代)

【関連リンク】
http://www.thomasrueckert.com/Website/home.html
http://www.real-live-jazz.de/musiker/Artist/show/askari.html
http://www.fabianarends.com/Home.html

伏谷佳代 Kayo Fushiya
1975年仙台市生まれ。早稲田大学卒。現在、多国語翻通訳/美術品取扱業。欧州滞在時にジャズを中心とした多くの音楽シーンに親しむ。趣味は言語習得にからめての異文化音楽探求。JazzTokyo誌ではこれまでに先鋭ジャズの新譜紹介のほか、鍵盤楽器を中心にジャンルによらず多くのライヴ・レポートを執筆。

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