#  1269

『Romain Collin / Press Enter』
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦


Act Music ACT 9583-2

Romain Collin (p,sound design & programming)
Luques Curtis (b)
Kendrick Scott (ds)
Mino Cinelu (per,9)
Meagan Rose (vo,1&8)
Jean-Michel Pilc (whisles, 5)
Grey McMurray (g,4)
Laura Metcalf (cello)

1 99
2 Clockwork
3 Raw, Scorched and Untethered
4 Holocene
5 The Kids
6 Webs
7 San Luis Obispo
8 Event Horizon
9 The Line (Dividing Good and Evil Cuts Through the Heart of Every Human Being)
10 'Round About Midnight

Recorded October 7~9, 2013 at the Clubhouse, Rhinebeck NY
Tracking, mixing and additional programming by Jeremy Lucas.

Produced by Romain Collin and Matt Pierson

タイトルの『Press Enter』とは、本作の主人公ロメイン・コリン(p)が、2007年セロニアス・モンク・インスティチュートの学生の頃、ウェイン・ショーター(ts,ss)とハービー・ハンコック(p,kb)と共に、インド=ヴェトナム・ツアーを巡っていた時のある夜、ショーターが「私の周りには、いつも、新たなプロジェクトや、何か新しいものを創造する夢を語りながら、何も踏み出さない人が多くいた」と語り、しばし間を置いたあとに一言“Press Enter”と言ったことが、コリンの創作に大きな影響を与えたことに由来するという。
ロメイン・コリンは、フランス出身で、2000年代初頭にバークリー音大に留学、セロニアス・モンク・インスティチュートをへて、2009年に初リーダー作をリリースし、本作が3作目となる。
バークリー音大時代からの盟友、ケンドリック・スコット(ds)と、ルケス・カーティス(b)とのトリオをベースに、ゲストが加わり、2曲のカヴァーを含む多彩なオリジナルが展開される。
大音量とパルスを放つようなバッキングが印象的な<99>で、オープニングを飾る。アメリカのフォーク・ロック・バンドのボン・イヴェールのは、一変してシンプルなリフを抑えた音量でリリカルにカヴァーする。では、同じくフランス出身のピアニスト、ジャン=ミッシェル・ピルクが、口笛でメロディを支える。不完全なDNA鑑定で、無実の罪を負った犠牲者達のヴォイスがミックスされ、チェロとヴォーカルも加わり壮大な音楽観を奏でる、ロシアの作家 / 哲学者のアレクサンドル・ソルジェニーツィンの言葉をタイトルに冠したも、ロック世代のラフマニノフとも評されたダイナミックなピアノ・プレイがフィーチャーされ、コリンの作曲家としての高いポテンシャルが、呈示される。<'Round About Midnight>がソロ・ピアノで、モンクを彷彿させるミニマルな演奏でエンディングを迎える。アコースティック・ピアノをメインに据えながら、エンディング曲を除きエレクトロニクスを控えめながら、効果的に挿入しているのもコリンのハイ・センスと、審美眼が窺える。
11月29日のニューヨーク、イリディアムでのリリース・ギグ最終日では、スコット、カーティスに替わり、ハリッシュ・ラグヘヴン(b)とクラレンス・ペン(ds)が、アルバムとは一味ちがう、世界観を演出した。
ロメイン・コリンは、今、自信に満ちてエンター・ボタンを押した。

写真は、2015年11月29日、ニューヨーク、イリディアムに於いて。
ロメイン・コリン(p)
ハリッシュ・ラグヘヴン(b)
クラレンス・ペン(ds)

常盤武彦 Takehiko Tokiwa
1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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