#  1274

『Mette Henriette』
text by Markus Stegmayr マルクス・シュテグマイヤー


PECM2460/61

Mette Henriette (Saxophone)
Johan Lindvall (Piano)
Katrine Schiott (Violoncello)
Henrik Nørstebo (Trombone)
Eivind Lønning (Trumpet)
Sara Övinge (Violin)
Karin Hellqvist (Violin)
Odd Hannisdal (Violin)
Bendik Bjørnstad Foss (Viola)
Ingvild Nesdal Sandnes (Violoncello)
Andreas Rokseth (Bandoneon)
Per Zanussi (Bass)
Per Oddvar Johansen (Drums, Saw)

CD 1 / O

01 so 1:41
02 oOo. 3:47
03 the taboo 1:55
04 all ears 3:56
05 but careful 1:01
06 beneath you 3:10
07 once 3:53
08 we were to 0:54
09 3 - 4 - 5 1:59
10 hi dive 2:52
11 a void 4:27
12 the lost one 1:10
13 in circles 3:41
14 I do 3:48
15 O 3:18

CD 2 / Ø

01 passé 5:00
02 pearl rafter 1:04
03 veils ever after 1:54
04 unfold 0:40
05 wildheart 5:44
06 strangers by midday 2:51
07 late à la carte 4:10
08 so it is 1:38
09 ? 3:32
10 true 0:47
11 this will pass too 0:58
12 but we did 3:48
13 I 8:09
14 breathe 3:59
15 off the beat 1:51
16 wind on rocks 6:34

Recorded at Rainbow Studio, Osalo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Produced by Manfred Eicher

崩壊 と統一のドキュメント

ノルウェーのサックス奏者/作曲家メッテ・ヘンリエッテ(http://www.mettehenriette.com/) は自国以外では知名度の低いミュージシャンである。そんな彼女にECMとマンフレート・アイヒャーがダブル・アルバムをリリースする機会を与えた事実は驚きを持って迎えられた。
アイヒャーとヘンリエッテが出会ったのは、ノルウェーで開かれたディノ・サルッシ(バンドネオン)のコンサートであった。マンフレート・アイヒャーは、この若いミュージシャンの存在と個性に大いに驚いたに違いない。しかし、このアルバムを制作するにあたってアイヒャーが彼女をどれほど信頼していたかは、アルバムの出来を見れば明らかである。
結論を言えば、デビュー・アルバムのタイトルに彼女自身の名前を冠したこの作品は、われわれの期待を完全に満たしているというだけでは充分ではなく、期待をはるかに超えていると言って良いだろう。さらにいえば、このアルバムはECMが過去数年リリースしたアルバムのなかでも屈指の1作と言える。メッテ・ヘンリエッテは、この若さにしてすでに自身のヴォイスとトーンを獲得しているのである。
一方で、このダブル・アルバムは破綻を来たしており手応えに欠けると切り捨ててしまうのも難しくはないだろう。しかし、そうではないのだ。このアルバムでいったい君は何を言いたいのかという問いに対するメッテ・ヘンリエッテの答えはこうである。私は、繰り返される崩壊と統一の瞬間瞬間に立ち会いたかったのだ、と。
彼女はさまざまなフレーズの断片とともに歌そのものも演奏している。正直なところ、どのトラックがほとんど即興的に演奏され、どのトラックが歌と作曲の可能性について深く複雑な思いを巡らしながら演奏されたものであるのかを指摘するのは容易な作業ではない。多くのトラックは極めて短く、それぞれのアイディアについてもっと多くを語りたいようにも見えるが、彼女は潔く演奏を断ち切り未練を残してはいない。
このアルバムを解釈するにあたって、崩壊、統一、本質という用語を援用すると彼女のアプローチがどれほど独自のもの、興味深いものであるのかを明らかにすることができる。メッテ・ヘンリエッテが確立したカテゴリーはまったく未知のものである。彼女はジャンルやスタイルを無視したように既成のさまざまなカテゴリーをも無視したのだ。彼女は1枚目のCDで、いわゆる“チャンバー・ジャズ”といわれる音楽の有り様を強烈に主張している。
彼女の反復のやり方は、通常ジャズをあまり聴いておらずむしろエレクトロニック・ミュージックを好むリスナーに関心を呼び起こすだろう。2枚目のCDで彼女はクラシック系の演奏家と共演している。どんな場合でも彼女に共通することはただ1点だけ。メッテ・ヘンリエッテはメッテ・ヘンリエッテ以外の何者でもなく、共演するミュージシャンにさえ自身のヴィジョンを共有することを強要してはいない。むしろ自由に演奏させているようにさえ聴こえるのだ。
この若さのミュージシャンがこれほど独創的なアルバムを制作したことは驚くべきことである。レヴェルの高いECMのアルバム群のなかにあっても出色である。高く評価したい。

*試聴サイト
http://player.ecmrecords.com/mette-henriette
https://soundcloud.com/mettehenriette
*視聴サイト
https://www.youtube.com/watch?v=Ov99UYaLF-Y

Markus Stegmayrマルクス・シュテグマイヤー
オーストリア、ドイツとの国境に近いチロルのクフシュタイン生まれ。インスブルックの大学で比較文学と哲学を修める。現在はふたりの子持ちで、オーストリアのインスブルックに住む。コピーライター、ブロガー、ジャーナリストとして音楽と料理をテーマに活躍している。

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#10 Contents
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