#  677

山下洋輔トリオ復活祭ライブ / ダブル・レインボウ
text by Yumi MOCHIZUKI

VERVE/ユニバーサルミュージック
UCBJ−1005 ¥5,000

演奏曲及びミュージシャン:
第4期
1.回想〜ストロベリー・チューン ( 林栄一 )
  山下洋輔(p)、林栄一(as)、小山彰太(ds)
2.円周率 ( 小山彰太 )
  山下洋輔(p)、菊地成孔(ts)、林栄一(as)、小山彰太(ds)
3.フォーM〜ジェントル・ネヴェンバー ( 山下洋輔/武田和命 )
  山下洋輔(p)、菊地成孔(ts)、国仲勝男 (六弦)、小山彰太(ds) 
第3期
4.バンスリカーナ ( 山下洋輔 )
  山下洋輔(p)、坂田明 (as)、小山彰太(ds)
5.ゴースト ( Albert Ayler)
  山下洋輔(p)、坂田明 (as)、小山彰太(ds)
第2期
6.クレイ ( 森山威男 )
  山下洋輔(p)、坂田明 (as)、森山威男 (ds)
7.キアズマ ( 山下洋輔 )
  山下洋輔(p)、坂田明 (as)、森山威男 (ds)
第1期
8.木喰 ( 中村誠一 )
  山下洋輔(p)、中村誠一(ts)、森山威男 (ds) 
9.ミナのセカンドテーマ( 山下洋輔 )
  山下洋輔(p)、中村誠一(ts)、森山威男 (ds)
アンコール
10.グガン( 山下洋輔 )
  山下洋輔(p)、中村誠一(ts)、森山威男 (ds)、坂田明 (as)、
小山彰太(ds)、菊地成孔(ts)、国仲勝男 (六弦)、菊地成孔(ts)
林栄一(as)
司会:相倉久人
特別映像
・ 山下洋輔トリオ誕生秘話
  (山下洋輔×中村誠一×坂田明)
・ 復活祭フォト・アルバム

収録年月:2009年7月19日
収録場所:日比谷野外音楽堂
エグゼクティブ・プロデューサー: 村松広明

 昨年の夏、山下洋輔トリオの結成40周年を記念してのリユニオン・ライブのDVDである。1976年から1985年まで続いた日本のジャズの夏の饗宴、「日比谷野音」。この言葉は一度でも野音を体験したことのある人にとって特別な響きもっている(http://www.jazztokyo.com/motizuki/v16/v16.htmに当時の模様をスケッチ)。山下さんはその核となったミュージシャンの一人であり、40周年のメモリアルにはここしかない、と野音に決めたのではないかと思う。

 ここでのステージ構成は療養生活を終えられて新たに「山下洋輔トリオ」を結成した1969年をトリオ結成元年とし1983年にトリオ(トリオ+1含む)を解散するまでを第1期から第4期に分け、解散時の第4期からスタートし徐々に時代を辿ってゆき、第1期にまで遡る。最後に全員総出でメモリアル・セッションを行って大団円となるステージ運びが約一時間半に要領よくまとめられている。私は残念ながら会場に行けなかったがDVDで見る限りは3000人という客席の後姿にはかなり年季の入った方たちも多く、それぞれの脳裏に刻みこまれたそれぞれの山下洋輔トリオの熱狂をもう一度よみがえらせたいと集まっている方たちのように見受けられる。ちなみに豊住芳三郎(ds)や吉沢元治(b)等々との68年以前の活動やトリオ解散後の「ニューヨーク・トリオ」や現在の「山下洋輔ニューカルテット」については対象の外であり、あくまでも「山下洋輔トリオ」のアニバーサリーである。

 夏の日曜日、まだ日差しの強い夕暮れ刻、林栄一(as)が登場、いきなりカデンツアを吹き始める。慣らし運転無しの激奏である。しばらくして山下さんが加わりやがて二人のバトルが始まる。 そしてさらに小山彰太も加わり卍巴の合戦となる。第4期は武田和命が加わった1980年からトリオ解散の1983年までの山下洋輔〜武田和命〜小山彰太のトリオにプラス・ワンとして林栄一が加わった時期をさしている。林栄一のオリジナル<回想〜ストロベリー・チューン>が終わったところで菊地成孔が武田和命の役回りで登場、林との2管で一曲、そしてそのあと林がステージを降りて菊地が武田になりかわり<ジェントル・ノヴェンバー>を硬質なトーンで吹く。国仲が6弦で加わる。武田和命の傑作「ジェントル・ノヴェンバー」(FRASCO)では国仲がベースを弾いていたのである。山下さんは「ジェントル・ノヴェンバー」をプロデユースし、渋谷毅はDVD「武田和命カルテット1988」(CARCO)をプロデユースした。武田さんは山下、渋谷というピアノの匠から愛され、心のこもった作品を残してもらっていたことをあらためて想いだしながら映像をみた。

 第3期は1976年〜1969年までの山下〜坂田〜彰太の時代で坂田明がモントルーで初めて<赤とんぼ>を飛ばした時期である。演奏は当然のことながら<バンスリカーナ><ゴースト>の2曲。1977年の夏、同じ日比谷野音で坂田明が飛ばした<赤とんぼ>は一匹だったがこの日の坂田<赤とんぼ>は群れを成して日比谷の公園に舞い上がっていった。
 第2期は1972年〜1976年までの山下〜坂田〜森山によるトリオ。メールスやベルリンなどヨーロッパ遠征で名を轟かせ、全冷中など多くの伝説が誕生した時期である。曲は<クレイ>と<キアズマ>の2曲、ナツメロの連続である。当時はフュージョン風邪にもかからず山下トリオに熱中したはずなのに、いま観ると懐かしさがこみ上げてくるから不思議である。不思議な現象は日比谷の空にも現われた。<キアズマ>でいまなお華麗なドラミングを終えた森山さんがふと空を見上げるとステージの前方にくっきりと2本の虹が描かれていたのである。森山さんがステイックで虹を指し、相倉久人さんが客席にアナウンス、3000人が一斉に虹を見る。森山さんのステイックは残念ながら映っていなかったが奇跡の「ダブル・レインボウ」はくっきりと映像に残っていた。この虹は武田(和命)さんと平岡(正明)さんだと関係者の間では秘かにささやかれたという。また、ここに山下伝説がひとつ追加された。

 日も暮れて第1期、山下洋輔〜中村誠一〜森山威男の登場。療養中の山下に早くよくなって一緒にやろうよ、という見舞いの手紙を送った中村誠一(sax)と森山威男(ds) は1969年「山下洋輔トリオ」として「新宿ピットイン」から始動、7月の早大バリケード「ダンシング古事記」(麿レコード)、9月の「コンサート・イン・ニュージャズ」(テイチク)と快進撃を続け磐石のトリオの礎をつくったのである。<木喰>で中村誠一が朗々とソプラノを吹く。69年盤も聴きなおしてみたがどちらのソプラノもストレートで力強い。森山さんがブラシの妙技を見せてくれる。ステイックがスキンの叩く位置を微妙に変える繊細さも見てとれる。そしてご存知<ミナのセカンドテーマ>。ここに至って3人は三角形の頂点に立ち、互いに音で、眼で会話を楽しみ客席をもまき込んでトリオの原点を開帳した。  アンコールはトリオのクロージング・テーマ<グガン>を出場者全員で演奏、森山さんのタバトトンの合図でグガングガン、タバトトンとサックス陣がユニゾンで懐かしいテーマを吹く。林栄一、坂田明、菊地成孔、中村誠一の4管は音も顔つきも強力だ。林&坂田のアルト・チェースに中村&菊地のテナー・マドネス、森山&彰太のドラム・バトルで日比谷の夜は燃えつきた。

 祭りが終わって野音には小さな音で武田和命の<イッツ・イージー・トウ・リメンバー>が流れ帰途に着く聴衆の耳を癒す。心憎い演出である。

 DVDを見終えるとすぐさま書棚から「風雲ジャズ帳」(音楽の友)をひっぱり出した。「山下洋輔トリオ」のエッセンスは風雲ジャズ帳にありと思いついたからである。30数年ぶりに表紙をめくる。ここで山下さんは「プロト・ジャズ」と云う言葉でトリオの演奏を表現しているが、この言葉の響きにトリオの原型があり、40年たった今でも尚その原型が持続していることがDVDからも伝わってくる。山下さんは演奏者の三か条として<1.楽器を演奏できること、2.共演者がやっていることを聴き取れることそしてそれに反応できること、3.スイングできること>を挙げている。この日の出演ミュージシャン、そして3000人のオーデイエンスもただひたすら、プロト・ジャズを求めて一日限りの復活でいるようであった。(望月由美)

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