#  681

古谷暢康 / シュトゥンデ・ヌル
text by Kenny INAOKA

地底レコード B4 5F ¥2,940(税込) 5月16日発売予定

古谷暢康(ts, fl, b-cla)
エルナーニ・ファウシュティーノ(b)
ガブリエル・フェランディーニ(ds, perc)
+
ロドリーゴ・ピネイーロ(p)
エドゥアルド・ララ(tb)

1. Trio (28.42)
2. Quintet (23.21)

Recorded by Joaquim Monte@Namusche Lisbon-Portugal, January 9, 2010
Mixed by Joaquim Monte, January 18 & 22, 2010
Photo by Nuno Martins
Designed by 佐々木 暁
Produced by 古谷暢康
Executive producer:吉田光利

地底レコードの吉田さんから郵送されてきた古谷暢康のプロフィールを読んでとても興味を覚えた。CDを聴ける環境になかったので30分位で50の質問を用意し吉田さん経由で古谷に届けてもらったところ、翌日パソコンに返事が届いていた。リスボンとの時差のなせる業(わざ)だろう。2日後に聴いた古谷のサウンドと音楽の語り口はインタヴュー(http://www.jazztokyo.com/interview/interview081.html)から受ける印象とはかなり違っていた。サウンドも音楽もずいぶん成熟しているのである。キャ リアから判断して楽器の遣い手であろうことは容易に想像がついた。しかし、この腰の据わった余裕さえ感じさせる音楽の展開は意外だった。古谷は19歳の時にペー ター・ブロッツマンの勧めでヨーロッパのフリージャズの世界に飛び込み、以来11年間にわたって東欧から、イスタンブール、ベルリンを巡り、2年前からリスボンに住んでいる。リスボンには数日滞在した経験しかないが、温暖な気候で(岬の突端はさすがに風が強かったが)、物価も安く、料理も美味しかった。こんなリスボンの環境が彼に余裕を持って音楽に集中させ、キャリアのすべてがうまく相乗作用し、発酵さえもたらし、見事な成果を生み出したのではないだろうか。それぞれの演奏者に先人の影響を指摘することよりも、ヨーロッパのフリージャズの理性とアメリカのフリージャズの情動性のバランスが前後しながら最終的には見事な調和を実現させたスリルある展開と高い音楽性を称賛すべきだろう。一発勝負のフリー・インプロヴィゼーションでありながら、2曲とも結果として巧みな構成となっているのは古谷のリーダーシップと音楽的意思の疎通の良さの賜物に違いない(1曲目のトリオで制作されたアルバム『Bendowa』は、もっとも国際的なジャズ・サイトAll About Jazz-New YorkのBest Debut Album 2009の1枚に選出されている)。古谷は「新鮮な空気に欠乏する音楽界の状況は日本のみならず世界的にも同じく、そのような所にこのような毒を持つ者が容赦なく社会と風潮の急所に匕首(筆者註:あいくち)を突きつける」と私信に記しているが、古谷の匕首は刺されたときに激痛を伴う錆びた凶器ではなく、刺されたことにさえ気が付かないほど見事に研ぎ澄まされた銘刀である。刺されることに快感さえ覚えるほど、といったら言い過ぎだろうか。何れにしても、この素晴らしく充実したアルバムが日本のレーベルから発売されることを大いに喜びたい。そして、とくに若い読者にはフリージャズというレッテルが故に敬遠する愚を犯さないように心から願うのである。(稲岡邦弥)

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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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