#  770

『大西順子/バロック』
text by 多田雅範


VERVE/ユニバーサル UCCJ-2081
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大西順子(piano)
ニコラス・ペイトン(trumpet)
ジェームス・カーター(tenor saxophone、bass clarinet、flute)
ワイクリフ・ゴードン(trombone)
レジナルド・ヴィール(bass on 1 ,2, 3, 5, 6, 7)
ロドニー・ウィテカー(bass on 1, 3, 5, 7)
ハーリン・ライリー(drums)
ローランド・ゲレロ(percussion on 1)

放たれた大西順子。2010年、年間ベストは大西順子の『バロック』だ。竹内まりやかあんたはというジャケにも、なぜにバロックなの?という問いにも、演奏の態度が説得力を持って当方のこざかしい疑問を押し切ってしまっている盤だ。

予感はあった。09年の『Musical Moments』(楽興の時)、この復帰作を聴いて、弾けることと、弾きたいことと、制作のディレクションと、その関数が与えられているありように。ひとことで言えば、力作だし、充実作なのだけど、大西順子の獰猛なピアノに対してちぐはぐな結果に感じたのであった。だいたい復帰作があるとも予測できなかった。

わたしの90年代前半は菊地雅章、川端民生、大西順子の名前を見つけてはライブを追っかけしていたよなもんです、競馬が当たったときだけだけどね、なつかしー。遠い目。天才・大西順子の不在によるあとを埋めたのは、マイラ・メルフォードの初期の奔放なピアニズムぐらいなものでしょうか。90年代末から、大西順子の消息をたずねても緘口令がひかれたような日本のジャズ界であったのは記憶しておこう。

90年代に聴いた大西順子。ボディ・アンド・ソウルの天井にアタマをつっかえてピアノを両手で押さえて立つ大西順子、髪の毛は天井をはって会場の半分をおおってしまっている、右手と左手を並べるだけでグランドピアノの鍵盤がすべて隠れてしまっている、ピアノの音列の骨格が会場の壁を壊しているように聴こえる、ベースとタイコのレギュラー陣の男性ふたりは大西順子の露払いに過ぎない。

『バロック』はユニバーサルへ移籍し、ジェームス・カーターやニコラス・ペイトンを筆頭にニューヨークのミュージシャンたちを配した、ただただフツーに素晴らしい作品だ・・・、言い方がおかしいか?カジュアルにこのレベルの演奏を楽しみたいのだ、彼女も、わたしたちリスナーも。それでいてサウンドの懐は深いぞー。コンポジションも、カーターのプレイも。じつに聴き飽きない作品だ。さあ、顕現した大西順子、次の一手はどう踏み出すのだろう。(多田雅範)

編集部註:本稿はJazz Tokyoの年末企画「この1枚 2010」(国内篇)に寄稿されたものです。

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