#  794

『リー・コニッツ|ブラッド・メルドー|チャーリー・ヘイデン|ポール・モチアン/ライヴ・アット・バードランド』
text by 稲岡邦弥


ECM/ユニバーサル・ミュージック

リー・コニッツ(as)
ブラッド・メルドー(p)
チャーリー・ヘイデン(b)
ポール・モチアン(ds)

1. ラヴァー・マン
2. バードランドの子守唄
3. ソーラー
4. アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー
5. ユー・ステップト・アウト・オブ・ザ・ドリーム
6. オレオ

Recorded live at Birdland, NY, December 9&10, 2009
Produced by Manfred Eicher

しかし、“グランパ”コニッツの元気なことといったら驚くばかりだ。フィジカルな元気さ(それももちろん必要だろうけど)というより、むしろ創作意欲の方。1927年10月生まれだから御年84才。85才で逝ったホロヴィッツの最後の録音もたしか前年の84才だったけど。日本じゃ、84才の爺様がブレーキとアクセルを踏み間違えて、コンビニに車を突っ込んだというニュースが流れている。この爺様も元気といや元気には違いないけど。コニッツの新作はあちこちで発表され、その中の1枚『アレクサンドラ・グライマル/アウルズ・トーク』(Hote Marge)をJazzJapan誌で輸入盤紹介したばかり。エジプトの女流サックス奏者の作品にコニッツが参加、ベースがゲイリー・ピーコックでドラムスはこれもモチアンだった。録音は、2009年12月だからバードランドの直前に録音したのだろうか。最新号のJazzJapan誌ではウォルター・ラングのトリオを従えたコニッツの『サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー』(M&I)が紹介されているが、こちらは今年1月のドイツ・マンハイム録音。本作にも収録されている<アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー>を演奏しているのでぜひ聴き比べてみたい。おそらくコニッツ・マジックにかかって、ラングのトリオもひと味違う演奏をしているに違いない。
ここでの演奏はライヴということもあり1曲がすべて10分を超える長尺もの。しかし、どの演奏も予定調和通りに進行するものはないので聴くたびに新たな発見に顔がほころぶ。<バードランド>と<アイ・フォール・イン・ラヴ〜>以外はコニッツのアルトで演奏が始まり、テンポと曲の雰囲気はコニッツが設定するが、ピアノで始まる上記2曲もセットの流れの中で図らずもコニッツの意図を反映したものになっているはず。6曲は2夜の演奏からピックアップしたものだが、シークエンスが絶妙。ライヴ演奏をアルバム化する場合のプロデューサーの腕の見せ所だ(このアルバムではもうひとつ、プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが親交の深いジャン・リュック・ゴダールから粋なアートワークを手に入れる手柄を見せている)。コニッツはまさに自由闊達、融通無碍、書道でいうなら 草書体か。原曲に通じていたらその「くずし」をより楽しめるだろう。本来の意味での ソフィスティケイテッド・ジャズの極致だ。<ラヴァー・マン>や<バードランドの子守唄>にメロディを期待して聴くファンは肩透かしを喰うだろう。メルドーもコニッツの後ではコニッツ風ピアノにならざるを得ない。<オレオ>で少しはいつものメルドーを取り戻しているといえるだろうか。ところでこれら超ヴェテランたちを相手に立ち回れるのはピアニスト多しといえどもメルドーくらいだろう。メロディの美しさにひと息つきたいファンは<アイ・フォール・イン・ラヴ〜>まで待つべし。ヘイデンは、やはり、ジャズ・オリジナルの<ソーラー>と<オレオ>で存分にソロを取る。モチアンはコニッツと共演も多く、リズムをオープンにして自由に泳がせる。<オレオ>で皆が熱くなるなか、ひとり超然と吹くコニッツがテーマをリピートしながらエンディングに持ち込む心憎さ。唖然とするばかり。『エンジェル・ソング』(ECM1607)で四重奏に勤しむコニッツのベストを捉えたECMが、伝統的なワンホーン・カルテットでビター・スィートなコニッツ・ジャズのベストをカタログに加えた。この2枚があれば充分だろう。
なお、この演奏は、NYの老舗ジャズ・クラブ「バードランド」が60周年を迎え、60年前のオープニング・ナイトに出演したリー・コニッツ(もうひとりの現役はロイ・ヘインズ)にカルテットを組ませて1週間の公演を企画したもの。 クラブに因んでジョージ・シアリングが作曲した<バードランドの子守唄>が演奏・収録されているのもアニヴァーサリーらしい。(稲岡邦弥)

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