# 924
『加藤真一B - Hot Creations/B - Hot Creations !』
text by 悠 雅彦
| Roving Spirits/BounDEE RKCJ - 2051 / 2 2,500円 |
加藤真一 (bass, chorus)
田中信正 (piano, chorus)
斎藤良 (drums, chorus)
太田朱美 (flute, chorus)
nobie (vocal, voice, chorus)
Disc 1:
1. フライ・ウィズ・ザ・ウィンド
2. ファビュラス
3. ウェル・ユー・ニードゥント
4. ひまわり
5. ベース・フォーク・ソング
6. コンペイト
7. セット・ミー・フリー
Disc 2:
1. A 列車で行こう
2. ささやき
3. ピコ
4. トンボ・イン 7/4
5. カムイ・モシリ変奏曲
6. カムイ・モシリ
7. エンドレス・ジャーニー
8. ベター・ギット・イン・ユア・ソウル
2011年10月30日、Live at 新宿 Pit Inn
B - Hot Creation については、2004年に初めて聴いたライヴで心躍ったことを今でも鮮明に憶えている。その年に発表したデビュー作はむろんJazz Tokyoなどでも賞賛したが、その『エンドレス・ジャーニー』、翌2005年の『セット・ミー・フリー』以後は、なぜか吹込が途絶えていたB - Hot Creations がついに沈黙を破った。7年ぶりのアルバムとなったこの2枚組は全体を聴き通すと過去の総決算の意味合いを感じさせるのだが、それ以上に何と言ってもオリジナル・メンバーにフルート奏者の太田朱美が新加入しての最初の作品だけに、彼女とヴォーカルの Nobie のコンビの放つフレッシュで華やいだ魅力が全編に横溢しており、またそこが本作の最大の聴きどころであるのは間違いない。ついでに述べておけば、この第3作は新宿ピットインでのライヴ2枚組だが、2枚組ながらCD1枚と変わらぬ発売価格をうたった点もユニーク。残念ながら加藤自身がペンをとったというライナー・ノーツがCDには添付されていないが、彼が言うところでは2枚組を1枚のCD価格で発売する戦略をとったために、ノーツを挿入する予算がなくなった(ジャズ・ライフ6月号)のだとか。それは認めるとして、ただ Nobie が歌った曲の英詞ぐらいはジャケット中折れのどこかに印刷するべきではかったろうか。唯一残念な点だ。すべてのファンがインターネットを利用しているとは限らない。
収録曲はCD2枚で全15曲。このうち<CD1>ではマッコイ・タイナーの (1)、セロニアス・モンクの (3)、<CD2>ではビリー・ストレイホーンの (1)、アイアート・モレイラの (4)、アンコールで演奏されたチャールス・ミンガスの (8) の計5曲、及び太田朱美の「ひまわり」以外は加藤真一のオリジナル(田中信正のソロが軸となる (5)は、加藤の (6) にもとづく変奏曲である)。上記のモンク曲におけるマイク・フェローの英詞のみならず、Nobie が作詞した加藤作品は (2)、(5)、(7)(以上CD1)、(2)、(7)(CD2)の5曲にも及ぶ。やはり歌詞がないのは残念だった。
それにしても、太田朱美の加入は大成功だった。テーマを提示する場合でも彼女のフルートとNobie のヴォイスは質的に相性がいい。そのためにあたかも日本のお祭りでの笛と太鼓のアンサンブルに似た華やかに弾んだ音色を写し出したかのような気分を発散させる。おまけに斎藤良のサウンドが祭り太鼓のように響く。惜しむらくはライヴゆえだろうが、Nobie のヴォイスが全体のサウンドの中で埋没したかのように影が薄くなるところがあることだ。彼女のヴォイスをもっと強調してもよかったと思うが、太田のフルートと Nobie のヴォイスがちょうど点描画を描くような効果を生む「ベース・フォーク・ソング」が、アレンジと構成とを含めて秀逸だった。それは続く「コンフェイト」が金平糖もどきの愉快な転がり方を彷彿させるNobieのスキャットをはじめとする全体の弾みっぷりを誘発するようで楽しい。加藤作品の「セット・ミー・フリー」からディスク2の「テイク・ジ・A トレイン」あたりがクライマックスか。「A 列車」は独特のリズムといい、全体の構成といい、エキサイトして聴いた。田中信正のソロから通常の4ビートで展開するものの再現部で例のリズム・パターンに戻ってお祭り気分に火がつくあたりを聴くと、もう一山あってもよかったのではないかと思うほど。この B - Hot Creations は全員の自由な交感がバランスよく展開されている点に良さがあり、中心となる Nobie のヴォーカルを全体の構成の中で溶け込ませるとともに、それらを加藤が巧みに統率しているユニークなグループで、新加入した太田朱美と Nobie のフロントラインの生む活気がこのユニークさに新たな魅力をプラスしたことは間違いない。加藤によれば、次回はテン・ピースくらいの拡大版で試みてみたいとの希望をもっているそうだから、さらにヒートアップするステージが期待できるのではないか。さらに楽しみが増えた。(2012年6月15日 悠 雅彦)
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