# 930
『ニュウニュウ(牛牛)/ラ・カンパネラ(リスト:トランスクリプションズ)』
text by 丘山万里子
| EMIミュージックジャパン EMI TOCE90227 2,800円 |
曲目:
死の舞踏(サン=サーンス作曲、リスト、ホロヴィッツ編曲)
郵便馬車〜歌曲集「冬の旅」(シューベルト作曲、リスト編曲)
菩提樹〜歌曲集「冬の旅」(シューベルト作曲、リスト編曲)
さすらい〜歌曲集「美しき水車小屋の娘」(シューベルト作曲、リスト編曲)
セレナード(聞け、聞け、ひばりよ(シューベルト作曲、リスト編曲)
魔王(シューベルト作曲、リスト編曲)
「パガニーニによる大練習曲」より第2番アンダンテ、第3番ラ・カンパネラ、第6番主題と変奏イゾルデの愛の死〜楽劇「トリスタンとイゾルデ」(ワーグナー作曲、リスト編曲)
紡ぎ歌〜歌劇「さまよえるオランダ人」(ワーグナー作曲、リスト編曲)
「夕星の歌」(レチタティーヴォとロマンス)〜歌劇「タンホイザー」(ワーグナー作曲、リスト編曲)
愛の夢第3番変イ長調(リスト作、編曲)
半音階的大ギャロップ(リスト作曲)
日本盤ボーナストラック
白鳥(サン=サーンス作曲、ゴドフスキー編曲)
演奏:ニュウニュウ:牛牛 (pf)
プロデューサー:A.Comall
レコーディング・エンジニア:P.Siney
牛牛(ニュウニュウ)のサード・アルバムである。今年14歳のこの少年は、現在ニューイングランド音楽院で全額支給の奨学生として音楽を学んでいる。
今回はリスト:トランスクリプションズと題し、全曲リスト作・編曲の作品を集めた。サン=サーンスの「死の舞踏」からはじまり、シューベルトの歌曲の編曲を5曲、パガニーニによる大練習曲を3曲、ワーグナーのオペラから3曲に、リスト作品を並べたもの。
とりわけ、シューベルトが素晴らしい。リストの編曲も見事だが、シューベルトの歌ってやまない旋律線を華やかな超絶技巧で飾りつつ、こんこんと湧いてくる歌心で描き出す。「冬の旅」からの<郵便馬車>は、馬車の刻む軽やかなリズムの上でシューベルト特有の光と影をない混ぜにしながらあたりを飛び回ってみせる。冒頭のどこか不安をたたえた入りから静かに汲みだされる<菩提樹>。高音のトリルはその梢を吹き抜ける風と、揺れる葉影を映しとって美しい。「魔王」では、同一音の連打が掻き立てる不気味に甘い魔王のささやきと、恐怖に駆られる息子、息子を抱きながら馬を急かせる父親のそれぞれの声をくっきりと際立たせ、最後に息子の死を告げる音をそっと置き残す。
ニュウニュウのあくまでも自然なヴィルティオジテはディスク全体に見出せるもので、タイトルとなっている<ラ・カンパネラ>でも曲中に響き続ける小さな鐘の音の周囲を技巧で埋め尽くしながら気負うことなく、さらりと弾きこなす。彼の美点は決して鍵盤を強打しないところで、どんなフォルティシモもみっしりと目の詰んだ濃度でさばく。あまり聴かれないワーグナーの編曲作品も色彩豊かに、ドラマティックに弾ききっている。
14歳という年齢を考えると、などといった言辞を飛び越え、すでにニュウニュウ固有の世界が拓かれている。それを実証する一枚である。(丘山万里子)
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