#  969

『NoReduce/Jaywalkin'』
text by 伏谷佳代


NWOG Records 005  

NoReduce:
Christoph Irniger(クリストフ・イルニガー;tenor sax)
Dave Gisler(デイヴ・ギスラー;guiter)
Raffaele Bossard(ラファエル・ボッサール;bass)
Nasheet Waits(ナシート・ウェイツ;drums)

1. Endangered
2. The Slope
3. Playground
4. Faraway…..But Close Enough
5. Dope Factory
6. Jaywalkin'
7. Morningside Road
8. The Mouth

1 &2 by Christoph Irniger
4 &7 by Raffaele Bossard
3, 5, 6 &8 by Dave Gisler

Produced by NoReduce
録音:2011年6月22/23日@MPI Studio, New York
レコーディング・エンジニア:Barry Komitor(バリー・コミトーア)

ミキシング&マスタリング・エンジニア/スタジオ:Willy Strehler (ヴィリー・シュトレーラー) @Klangdach, Guntershausen

割り切れなさ、をやすやすと納得させてしまうスムースな個の凝集

聴きごたえたっぷりのアルバムである。スイスの若手ミュージシャン3人が、ニューヨークで辣腕ドラマーのNasheet Waits(ナシート・ウェイツ)と出会い意気投合、アルバムの制作へと結実した。楽曲もスイス勢3人による持ち込みであり、各パートの精鋭ぶりが余すことなく展開される。こんなところにもバンド名たるNo Reduceぶりを感じてしまう。サックスのクリストフ・イルニガーの音色がまず耳にこびりつく。ふくよかなロングトーン、思惟的で深いメロディ性、時にエレクトリックギターと互角を成すような強靭な音圧。非常に素直でありながら独特の透明感と気高さを漂わせる。ストレートに音楽の歓びに満ちたその音楽は、奇をてらった昨今の潮流のなかにあってかえって新鮮だ。サックスとドラムがいわば輪郭を外していくようなソロ・インプロにおいて目立つところを担うとすれば、ギターのGislerとベースのBossardはコンポジション面で巧緻でタフな屋台骨を創りあげているといえる(もちろんプレイも圧巻だが)。ブルース・ロック的なアメリカの原風景がこってりとスケッチされる6.Jaywalkin'や8. The Mouthはもちろんのこと(これらはGislerの手による)、静謐なる第1曲目から徐々に音楽がヒートアップして最初にエネルギーの閾値(しきいち)をみる4.Faraway…(Bossardの曲)がみごと。Waitsのトルナド風の屈強なドラムの波動に乗りつつも反るように、Irnigerのスピリチュアルでフリーキーなサックスが炸裂。やがてメロディらしき断片が浮上してはギターに引き継がれ、グル―ヴィなロックビートで高揚の極みとなる。ここでは、テクスチュア的なノイズからキメのバス音までを淡々としたラインで描くベースが暴走への渋い張力となっている。アメリカの音楽を骨太に敷衍しながらも、いかにもヨーロピアン的なセンスが立ち現れるのは例えば標題曲Jaywalkin'で、対位法的な収斂の良さが卓越したソロのなかに仕掛けられる。このバンドについて書くのは、全員の存在感がイーヴンに在り過ぎるので難しい。誰かが中心なのではなく、全員が主役であり、単なるパッチワークを超えたなめらかで精巧な仕上がりをみせる。よくある過程開示ではなく、取り出した精髄だけをさらりと見せるクールさもいい(それにしても近頃に気になるアルバムはすべてギターとベースの弦2本編成がおおい)。タイトなタイム感覚、豊かなふくらみを見せるサウンドの色彩とディメンション、軽々と時空を跨ぐ複数ジャンルの習熟、皮膚感覚もレアな高揚と退廃のコントラスト、etc. すべてが有機的だ。デヴァイス使いも最小限。発売元がニルス・ヴォグラムのレーベルというのも何か頷けるものがある(伏谷佳代 Kayo Fushiya *文中敬称略)。

 

【関連リンク】
http://www.noreduce.com/

http://www.christophirniger.com/de/index/
http://www.raffaelebossard.com/
http://www.nasheetwaits.com/

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