今年度のミルト・ヒントン・アワードについて
ビル・ウィシュナー(Jazz Photographer's Association会長)

第6回「ジャズ写真の功績を称えるミルト・ヒントン・アワード」は、50年以上にわたってジャズ写真を撮り続けてきたK. Abe(日本、東京)に贈られることになった。授賞式は、2005年1月にカリフォルニア州ロングビーチで開催される毎年恒例のInternational Association of Jazz Education (IAJE)のミーティング会場にて行なわれる。
K. Abe(阿部克自)は1929年生まれ。第2次大戦後、アメリカの占領下にあった日本で、ギタリストとしてジャズ・シーンに入った。だがベニー・グッドマン・バンドのギタリスト、チャーリー・クリスチャンを聴いたのがきっかけで、Abeは自らの目標を楽器の演奏から、敬愛するミュージシャンの写真撮影に切り替えた。1951年から、写真の撮影に加えて、カメラ技術、レコード・ジャケットのデザインにも卓越した才能を発揮しはじめた。Abeはハッセルブラッドとニコンを手にして世界中を飛び廻り、50年代以降の音楽シーンを彩った偉大なジャズメンを撮りまくり、数多くのミュージシャンやプロデューサーのためにジャケットをデザインしてきた。長年にわたって現像や焼付けの研究を重ねた彼は、「ジャズクローム」と名付けられた焼付け処理法を開発したが、これは彼の写真技術の頂点をなすものである。
K. Abeは、『50 Jazz Greats』『Parker's Lullaby』『New York − A Jazz Fan's Guide』など、6冊の本を出版している。また彼が編集し、デザインした『Jazz Greats − Vision of Great American Legend』は、画期的なジャズ写真集のひとつとして評価が高い。Abeの作品はこれまで世界各国で何度も展示されているが、同時に彼のジャズにまつわる様々な事物や資料のコレクションも公開され、アメリカ、日本でジャズの豊かな歴史を人々に知らしめるのに寄与してきた。1986年、アメリカ郵政公社はデューク・エリントンの記念切手を作るにあたり、Abeが撮ったエリントンの写真を切手の原画に採用している。
Abeが音楽とミュージシャンへ注いできた情熱、彼の芸術形態としてのジャズの普及への貢献は顕著であり、「ジャズ写真の功績を称えるミルト・ヒントン・アワード」の“生涯にわたるジャズとジャズ写真の普及と発展への貢献”という受賞基準を充分に満たすものである。
ミルト・ヒントン・アワードは、今回からJazz Photographer's Association (JPA)とIAJEの共同主催によって運営されることになった。この賞は、1992年、JPAによって創設され、1993年にミュージシャンのミルト・“ザ・ジャッジ”・ヒントンが最初の受賞者に選ばれた。賞の名称はそれに由来している。ミルトは傑出したジャズ・ミュージシャンであると同時に、40年にわたってツアーで世界中を廻りながら写真を撮り続け、写真家としても高い評価を受けていた。彼のジャズ写真作品はニューヨークのデイヴィッド・バーガーによって編纂され、『Bass Lines』と『Overtime』という2冊の写真集にまとめられている。また彼の世界的に有名なジャズ写真は、各国で何度となく展示されている。
ミルト・ヒントン・アワードはジャズ写真への生涯にわたる功労を称えて贈られる唯一の国際的な賞であり、ジャズの写真、ジャズの歴史の普及・発展に功績のあった個人や団体を顕彰するものである。これまでの受賞者は、ミルト・ヒントン(1993年)、ウィリアム・クラクストン(1995年)、レイ・エイヴリー(1997年)、ハーマン・レナード(1999年)、ビル・ゴットリーブ(2001年)の5人。2003年には賞の贈呈がなかった。
1980年代初め、レイ・エイヴリーによってロサンジェルスで設立されたJazz Photographer's Associationは、創設20周年を迎えたばかりである。この20年間、当代の著名なジャズ写真家が多数加入して会員になっている。JPAとミルト・ヒントン・アワードを共催することに関し、IAJEの事務局長ビル・マクファーリンは「今回新たにIAJEがJPAと提携し、過去、現在、未来のジャズにかかわるヴィジュアルな遺産の保存に我々が一層の貢献をすることができるようになったのは、喜ばしいかぎりだ」と述べている。
昨年、IAJEとJPAの双方の会員で構成されるミルト・ヒントン・アワード委員会が新たに設置された。この委員会は、受賞者を選出するとともに、今後、賞の普及とヴィジュアルなジャズの歴史の発展に寄与することになる。

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