
ひょんなことから尊敬する偉大な音楽人テオ・マセロと係わりをもつことになった。1999年に設立されたテオ・レコードである。
数年前のこと、知り合いの紹介で、テオ・レコードから発売されたCDが10数枚持ち込まれ、日本の発売会社をみつけて欲しいという。テオ・レコードのライセンシー探しはじつはこれが2度目だった。内容は素晴らしいものの、アーチスト至上主義の日本のマーケットでは難しいとの判断から以前の例ではうまく事が運ばなかった。CDはテオ・マセロの楽曲を演奏した作品集で、ミユージシャンのネーム・ヴァリューや目立つアートワークで売るのではない、あくまで音楽の内容で買ってもらうのだ、というテオのポリシーが貫徹されている。アメリカではネットで発売されており、モニタリングはできるものの、内容の紹介もほとんどない。「テオ・マセロの作品」という信用がすべて、という感じのマーケティングだった。先の読めるテオのことだ、おそらく最終的には配信を考えていたのだろう。
ポリスターのプロデューサー淡中氏に持ち掛けてみた。彼が、EWEから国内発売されたAmerican Clave原盤のテオ作品種『teo』を愛聴しているのを知っていたからだ。1週間ほどして彼から伝えられた返事に仰天した。「コンピレーションなら発売します」というものだった。十数枚のCDを聴き直してみて2枚のコンピレーションならテオの意図を伝えられると確信できるようになった。テオと直談判してみよう。American Claveのキップ・ハンラハンからテオのメール・アドレスをもらった。テオはキップの師匠にあたる存在だ。テオからは数日後に返信が入った。「君の編集案をみてから決めよう」。それから何度CDを聴き直しただろう。淡中氏からは恐れを知らぬ要求が次々と入ってくる。「未発表テイクをもらって下さい」。「マイルスの習作があるはずです」。テオの反応は素早い。
求めに応じて2枚の未発売音源が届けられた。ラリー・コリエル。マイルスの習作?と色めきたったルー・ソロフのソロも。秘書の合間を縫ってテオが打つメイルは大きな文字のバラ打ち。自伝を書いているとのことだが、こんな調子でワープロを打っているのだろうか。
未発表音源を交えて新旧12曲ずつからなる2枚のコンピ案を送信した。Good!の朗報。ただし、確認のためCD-Rを焼いてFedExで送付せよとのお達し。アルバム・タイトルは『Tea for Two』 をもじって『Teo for Two』。これは喜んでもらえた。
テオから送られてきた最後のCDは、NYの学生バンドが演奏するテオ作品集。ライナーノートに記された指導者の言葉がテオの人柄を表していた。「許可をもらおうと電話を入れたら、本人が応対してくれた。あのテオがだ!」。学生バンドにとっては雲上人のテオが快く応対してくれ、CD化の手助けまでしくれたのだ。
真剣に音楽に取り組む人間に対してテオは心を込めて対応してくれるのだ、ということを改めて知った。
ボブ・ベルデンが手がける一連のマイルスのボックス・セットにテオが憤っているという話を伝え聞いた。「マイルスが生きていたら絶対許さなかっただろう」と。そうだろう。ボックス・セットはテオが仕立てた最高のドラマの舞台裏をすべてさらけ出してしまったのだから。テオこそアルバム1枚という限られた時間の中で感動のドラマを演出してくれる最高のプロデューサーだったのだ。
追)久しぶりにTeorecordsのサイトを訪ねてみたが、当時の自社のサイトはすでになく、不完全な以下のサイトに行き着いた;
http://musicishere.com/artists/Teo_Macero
むしろ詳細な情報は米Amazonにあった;
http://www.amazon.com/s?ie=UTF8&keywords=Teo%20
Macero&index=na-music-us&page=1
♪『テオ・マセロ/テオ・フォー・トゥーVol.1』
http://www.pjl.jp/discography/pjl/MTCJ3017.html
♪『テオ・マセロ/テオ・フォー・トゥーVol.2』
http://www.pjl.jp/discography/pjl/MTCJ3018.html
> 追悼 テオ・マセロINDEX > COLUMN TOP PAGE > INAOKA'S INDEX