#  143

マックス・ジョンソン
Max Johnson (b)


Max Johnson, photo by Scott Friedlander

アメリカ、ニュー・ジャージー州ホボーケン生まれ。ドラム奏者/作曲家の父のもとで幼い頃から音楽を学び、10代半ばでジョン・アンダーソンやジョン・ウェットンなど有名ロック・アーティストのツアーにベーシストとして参加。2008年にジャズを志し、ヘンリー・グライムスやレジー・ワークマンなどに師事する傍ら、プロとして演奏活動、NY即興ジャズ・シーンでベーシスト/バンドリーダーとして名をなし、ブルーグラス・シーンでも引っ張りだことなる。
25歳の若さにして、数多くの有名ミュージシャンと共演し、世界的音楽フェスティバルや芸術センターに出演、サイドマンとして25作を超えるアルバムに参加。「ニューヨーク・タイムズ」「ジャズタイムス」などプレスでも高く評価され、El Intruso Internationalの評論家投票では、2012年度最優秀新人、2014年度ベーシスト部門2位、年間最優秀ミュージシャン部門4位に選出された。

主な共演ミュージシャン:John Zorn, Anthony Braxton, Muhal Richard Abrams, Candido Camero, Henry Grimes, William Parker, Butch Morris, Karl Berger, Bobby Sanabria, Sylvie Courvoisier, Erik Friedlander, Mary Halvorson, Joseph Jarman, Kenny Wollesen, Elliott Sharp, Angelica Sanchez

interviewed byシスコ・ブラッドリー (Cisco Bradley)
on Jazz Right Now http://jazzrightnow.com/
translated by 剛田武 (Takeshi Goda)

ベーシストのマックス・ジョンソンはブルックリン・シーンで最も活動意欲の旺盛な若手ベーシストの一人である。様々なジャンルで数多くのミュージシャンと共演しつつ、若干25歳ながら、既に4枚のリーダー作をリリースしている。そのうち3枚は、コルネットのカーク・ナフク 、ドラマーのジヴ・ラヴィッツとのトリオの作品である。2015年6月にリリースされた最新作『サムシング・ファミリアー(Something Familiar)』(Fresh Sound)で、著しく進化したサウンドを聴かせる。

このアルバムは2014年12月21日にNYのアコースティック・レコーディングで録音された。その直前の12月18〜20日に、ジョンソンはNYのライヴハウス「Ibeam」で三日間のレジデンシー公演を行った。各日共に第1部はトリオで、第2部はゲスト<一日目:ベン・ゴールドバーグ(cl)、二日目:スティーヴ・スウェル(tb)、三日目 :ジョン・オ・ギャラガー(as)&イングリッド・ラウブロック(ts)>を迎えたコラボレーションでライヴを行った。その公演に先だって、シスコ・ブラッドリーが新作に関するインタヴューを行った。


マックス・ジョンソン・インタビュー

Cisco Bradley(以下CB):自分のトリオに新曲を書き始めたとき、どんなヴィジョンを持っていたのですか?

Max Johnson(以下MJ):ヴィジョンや思想などとカテゴライズしたくありません。トリオについて私が考えるのは、思いきり自由に解釈する余地のある、わかりやすくてシンプルな音楽を作ることです。このアルバムは昨年いっぱいかけて思いついたアイデアを、楽曲として書き下ろしたものです。今はそれを一緒にまとめて、レジデンシーの間に何とかものにして、なにが出来るかやってみるつもりです。

CB:レジデンシーで、スペシャル・ゲストを迎えてトリオで共演することにした理由を教えてください。

MJ:2年ちょっと前、ウィーゼル・ウォルターと一緒にIbeamでレジデンシー公演を行ったときに、毎晩異なるゲスト・プレイヤーを迎えました。コンスタントなものに異なる成分を投げ込んでかき混ぜる、というアイデアがとても気に入りました。以前トリオと二人のサックス奏者(その時はマイケル・アッティアスとイングリッド・ラウブロック)のための曲を書きました。その曲はこれまで2回演奏しました。更に曲を追加して20日にゲストと演奏します。(マイケルが国外にいるので、代わりに素晴らしいジョン・オ・ギャラガーが加わります)。

長年ファンだったベン・ゴールドバーグとは最近初めて共演して、彼のサウンドと音楽性がトリオと間違いなく上手く行くと感じたので依頼しました。スティーヴ・スウェルは私のお気に入りのミュージシャンの一人で、ニューヨークで演奏を始めた頃最初に共演した人の一人です。2年前にもトリオで共演したのですが、今回も彼のユニークなサウンドをグループに加えたいと思って招待しました。

CB:こんなに短い期間でトリオの3rdアルバムが完成したことは印象的です。結成してからこれまでのバンドの進化をどう思いますか?

MJ:印象的と言うより、もっと熱くてクレイジーかもしれません。バンドが演奏すればするほど、自分たちの「もの(thing)」へと深く進むのを感じます。表現するのは難しいですが、常に途轍もなく素晴らしいと感じるものがあり、2013年春に前作をレコーディングして以来、ますますその方向へ突き進んできたのです。超ダイナミックで、アコースティックで、どんなことでも出来る、そんなグループを求めてこのメンバーとグループを結成し、演奏するたびによくなる一方なのです。カークとジヴと演奏するのが大好きですし、このアルバムは間違いなく前作からのステップアップになるでしょう。

CB:トリオの美学を話してください。

MJ:言葉で表現するのは難しいです。演奏するときにクリアなこと、または私が演奏を考えるときにクリアなことは確かにありますが、どう表現すればいいのか判りません。私たちは最小限の動きで最大限のことを言おうとしているのだ、と言うことかもしれません。グループのシンプル性を深め、演奏を重ねる度に無駄なものをそぎ落として、解放的かつ自由に音楽を演奏できるようにしているのです。

CB:新曲の背景のインスピレーションとアイデアについて話してください。

MJ:わかりました、と言っても今はまだ自分でもはっきりしないのです。過去には特定のソース(映画や本など)からインスピレーションを得ることがよくありました。でも今回は、曲想はあらゆるところからやってきました。一方、スタイル的に新曲はトリオの過去の曲と本質はよく似ていますが、インスピレーションはそれほどクリアではないのです。また、ほとんどの曲を昨年の間に書いたことを思えば、いくつかの「古い曲」については自分が作曲した事さえ忘れていて、アイデアがどこから湧いたのか思い出すのは困難だったりします。ただ一つ言えるのは、先ほど話したトリオ+2のために書いた曲は、私がこれまでに書いたうちで最も複雑な曲だと言うことです。なぜかは判りませんが、この編成にはそういう方法で作曲したいと思ったのです。

CB:2015年へ向けて他のプロジェクトやライヴの予定を教えてください。

MJ:今月(2014年12月)末には、ザ・ストーンでウィル・コンネルのトリビュート・ウィークに参加します。ウィルは私がNYで最初に共演した人の一人で、私が会った中で最も人柄のいい人です。彼のバンド「サダーナ(Sadhana)」でヴィンセント・チャンシー、ジェレミー・カールステットと共に4年間演奏してきました。12月26日にザ・ストーンでウィルの人生と音楽にトリビュートする演奏を行います。そのあと2015年1月にカリフォルニアで、ロス・ハモンド、アレックス・クライン、ヴィニー・ゴリア、ダレン・ジョンソン、ジョーダン・グレン、アリッサ・ローズなど素晴らしい人たちとライヴをする予定です。来年(ほぼ間違いなく)出る予定のレコードが2つあります。ひとつは、ペリー・ロビンソン、ダイアン・モーサーと私の共同即興作品です。もうひとつは私のシルヴァー・カルテットのデビュー作。メンバーはクリス・デイヴィス、スーザン・アルコーン、マイク・プライド。オリジナル曲に、私がアレンジしたエンニオ・モリコーネの映画『ウエスタン』のテーマを収録しています。そのほかにもたくさんのライヴやレコーディングやツアーが控えています。他に何が起こるのか、楽しみにしています!
(シスコ・ブラッドリー 2014年12月記)


Max Johnson Trio, photo by Scott Friedlander

追加最新インタビュー
(2015年8月15日メールにて)

Q1. アルバム・タイトルについて

MJ:アルバム・タイトルの『サムシング・ファミリアー(身近なもの)』は収録曲のひとつから取りました。私はタイトルを余り考えないようにしていますが、この曲は作曲してすぐにタイトルが頭に浮かんだのです。他の曲名を引用しようとも考えていましたが、上手く行きませんでした。このタイトルが私に身近だということでしょう。

Q2. ジャケットのアートワークについて

MJ:私のアルバムのアートワークは(『The Prisoner』を除いて)すべて、ヴィクトリア・サルヴァドールが手がけています。彼女は明確で力強いスタイルを持った素晴らしいアーティストで、いつもファンタスティックな仕事をしてくれます。どんなに複雑だろうとシンプルだろうと、彼女のアートワークを見るといつも微笑ましい気持ちになります。彼女とコラボレーション出来て幸運です。ぜひ彼女の他のアートもチェックして下さい。見る価値ありですよ!

Q3. トリオのメンバーとの出会いについて

MJ:カーク・ナフクとはフェデリコ・アージのバンドで出会って、すぐに彼のサウンドとスタイルに惚れ込みました。ジヴ・ラヴィッツと会ったのは、彼がスティーヴ・スウェルとヨアヒム・バーデンホーストと一緒にインターナショナル・トリオにいた時です。素晴らしいバンドでした。私は、フリーでもグルーヴィーでも、メロディックでも破調でも、本当にダイナミックに演奏できるバンドの結成を目指していました。そのとき真っ先に頭に浮かんだのがこのふたりだったのです。それから4年余り一緒に演奏して、ずいぶん成長しました。彼らとプレイするのはいつも最高の気分です。

Q4. バンドの楽器編成について

MJ:即興演奏家に関しては、私は楽器が何かはまったく気にしません。どの演奏家も自分自身のユニークなサウンドを持っているので、誰のサウンドが他の誰のサウンドと調和して、どんな美しいものを産み出せるのか、想像しようとしています。

Q5. NY即興シーンを構成する世代について

MJ:クリス・ピッツイオコスや私よりも若い世代の演奏家もいて、18,9歳でとても旨くやっています。その一方で、80代、更に90代で未だに刺激的なプレイをする音楽家もいるのです。演奏家の共同体がどんどん大きくなって、ひとつの大家族のようになってきた現在は、即興音楽にとってとても面白い時です。クリスと一緒にプレイするのと、カール・ベルガーやウォーレン・スミスと共演するのとは、学ぶものは大きく異なります。でも、そんなにも多くの驚くべき生の音楽に触れられることは、この上ない歓びです。

Q6. 今後の予定

MJ:今のところ、昨年録音した2,3のレコードのリリースに向けて作業を進めています。また、最近は室内楽用の作曲をしています。さらに、サイドマンでのいろいろな演奏活動に加えて、大編成のアンサンブルの音楽にも従事しています。忙しいけど文句はありません!

Max Johnson Official Site
http://www.maxjohnsonmusic.com/

Victoria Salvador Official Website
http://victoriasalvador.com/

Discography
Max Johnson Trio : Kirk Knuffke (cornet), Max Johnson (b), Ziv Ravitz (ds)
Something Familiar (Fresh Sound 2015)
The Invisible Trio (Fresh Sound, 2014)
Elevated Vegetation (FMR, 2012)
Max Johnson (b) , Ingrid Laubrock (ts), Mat Maneri (viola), Tomas Fujiwara (ds)
The Prisoner (No Business, 2014)
Big Eyed Rabbit : Ross Martin (eg), Max Johnson (b), Jeff Davis (ds)
Big Eyed Rabbit (Not Two, 2014)
Max Johnson Quartet : Mark Whitecage (as, cl), Steve Swell (tb), Max Johnson (b), Tyshawn Sorey (ds)
Quartet (Not Two, 2012)

シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley
ブルックリンのプラット・インスティテュートで教鞭(文化史)をとる傍ら、2013年にウェブサイト「Jazz Right Now」を立ち上げた。同サイトには、現在までに30以上のアーティストのバイオグラフィー、ディスコグラフィー、200以上のバンドのプロフィール、500以上のライヴのデータベースを備える。ブルックリン・シーンの興隆についての書籍を執筆中。http://jazzrightnow.com/

剛田 武 Takeshi Goda
1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。レコード会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」としてジャンルレスに音楽の現場と交歓する。
ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

JAZZ TOKYO
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FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.31 '16

追悼特集
ポール・ブレイ Paul Bley

FIVE by FIVE
#1277『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』(ピットインレーベル) 望月由美
#1278『David Gilmore / Energies Of Change』(Evolutionary Music) 常盤武
#1279『William Hooker / LIGHT. The Early Years 1975-1989』(NoBusiness Records) 斎藤聡
#1280『Chris Pitsiokos, Noah Punkt, Philipp Scholz / Protean Reality』(Clean Feed) 剛田 武
#1281『Gabriel Vicens / Days』(Inner Circle Music) マイケル・ホプキンス
#1282『Chris Pitsiokos,Noah Punkt,Philipp Scholtz / Protean Reality』 (Clean Feed) ブルース・リー・ギャランター
#1283『Nakama/Before the Storm』(Nakama Records) 細田政嗣


COLUMN
JAZZ RIGHT NOW - Report from New York
今ここにあるリアル・ジャズ − ニューヨークからのレポート
by シスコ・ブラッドリー Cisco Bradley,剛田武 Takeshi Goda, 齊藤聡 Akira Saito & 蓮見令麻 Rema Hasumi

#10 Contents
・トランスワールド・コネクション 剛田武
・連載第10回:ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 シスコ・ブラッドリー
・ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま
第1回 伝統と前衛をつなぐ声 − アナイス・マヴィエル 蓮見令麻


音の見える風景
「Chapter 42 川嶋哲郎」望月由美

カンサス・シティの人と音楽
#47. チャック・へディックス氏との“オーニソロジー”:チャーリー・パーカー・ヒストリカル・ツアー 〈Part 2〉 竹村洋子

及川公生の聴きどころチェック
#263 『大友良英スペシャルビッグバンド/ライヴ・アット・新宿ピットイン』 (Pit Inn Music)
#264 『ジョルジュ・ケイジョ 千葉広樹 町田良夫/ルミナント』 (Amorfon)
#265 『中村照夫ライジング・サン・バンド/NY Groove』 (Ratspack)
#266 『ニコライ・ヘス・トリオfeat. マリリン・マズール/ラプソディ〜ハンマースホイの印象』 (Cloud)
#267 『ポール・ブレイ/オープン、トゥ・ラヴ』 (ECM/ユニバーサルミュージック)

オスロに学ぶ
Vol.27「Nakama Records」田中鮎美

ヒロ・ホンシュクの楽曲解説
#4『Paul Bley /Bebop BeBop BeBop BeBop』 (Steeple Chase)

INTERVIEW
#70 (Archive) ポール・ブレイ (Part 1) 須藤伸義
#71 (Archive) ポール・ブレイ (Part 2) 須藤伸義

CONCERT/LIVE REPORT
#871「コジマサナエ=橋爪亮督=大野こうじ New Year Special Live!!!」平井康嗣
#872「そのようにきこえるなにものか Things to Hear - Just As」安藤誠
#873「デヴィッド・サンボーン」神野秀雄
#874「マーク・ジュリアナ・ジャズ・カルテット」神野秀雄
#875「ノーマ・ウィンストン・トリオ」神野秀雄


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