♪ 最新作は『Ub-X』
稲岡邦弥(以下、Q):最新作の『ユービクス』は、また新しいコンセプトで楽しめました。
橋本一子(以下、橋本):ユービクスではなく、『ユビークス』です。
Q:海外のSF小説をイメージしたという説があるようですが。
橋本:ラテン語の「偏在」=ubique(ユビーク)に由来しています。英語ではubiquitous(ユビキタス)です。
Q:音楽との関係は。
橋本:Ub-Xというユニットでは、3者が対等で、3者がつねにサウンドを発信しつづけています。
Q:いわゆる各奏者のソロがありませんね。
橋本:そうです。逆に3者がつねにソロをぶつけ合っているともいえます。
Q:この音楽のコンセプトはどこからきたのですか。
橋本:99年の『マイルス・アウェイ』、01年の『マイルス・ブレンド』はインプロヴィゼイション、ピアノ、ジャズ、新しい手法、リズム、がキーワードでしたが、当時はそれだけでは自分の全体像を表現しきれず、別に「ヴォイス・ワークス」をやろうとしていました。
Q:『Ub-X』はクラブ・ミュージックの影響も感じるのですが。
橋本:クラブ・ミュージックはずっと聴いていて、「ヴォイス・ワークス」は質感的にアコースティックではなくクラブ・ミュージック寄りでなくては無理かな、と思っていたのですが、しばらく放置していた結果、この一年で急激に双方が近寄って来た、そして、一体化したというところです。ピアノ・トリオという限られた構成の中でストリングスやオーケストラのような、またシンセサイザー、テクノロジー、ループによる質感やグルーヴを表現できるだけの質量(情報量)を生み出す力が醸成されたのだと思います。ヴォイスの力も大きいでしょう。
Q:ところで、『マイルス・アウェイ』と『マイルス・ブレンド』ですが、あれはまたずいぶん突然の印象を受けましたが。
橋本:以前から構想はあったのですが、ヴォーカルもの以外はなかなかやらしてもらえなかったり、こちらがまだ準備が整ってなかったり、タイミングが合わず、結果として突然の印象を与える結果となりました。
Q:メイカーとの折り合いの問題ですか。
橋本:今回はメイカーの縛りがなくてアーティスト主導で制作できました。
Q:クラブにはよく出掛けるのですか。
橋本:以前はチェックに出掛けたり、演奏もやりましたけど、われわれの演奏が始まると皆、静かになってしまうんですね。
Q:どういう編成だったのですか。
橋本:私とオペレーターが共同で打ち込んだベイシックにサックス、CDJ、それに私がキーボードとヴォイスを担当しました。リズムは打ち込みでもソロが入るとジャズになってしまうんですね。ですから、皆、ダンスを止めて聞き入ってしまうんです。
Q:なるほど。
橋本:私のイメージするダンス・ミュージックと実際のクラブ・ミュージックは「違うこと」なんだということが分って一旦放置してしまったんです。
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