UPDATED 09.11.2005

油井正一著『ジャズの歴史物語』
タイトル:『ジャズの歴史物語』
著 者:油井正一
出版社:スイング・ジャーナル社
初 版:1972年12月
定 価:1,200円




日本を代表するジャズ評論家油井正一氏(1998年没)の手になる古典的名著。ジャズの歴史を語って未だにこの名著を凌駕する著作は現れない。「<ジャズはニューオリンズで起こったのではない>という説をとなえる人がいる。そういう説に耳をかす必要はない。(中略)ジャズはまさしくニューオリンズで起こった」の一節から書き起こし、「ジャズとはこの上なく今日的で人間臭い民族音楽なのである。(中略)いいかわるいかにとまどった時は頭の中で二度三度つぶやきたまえ。<ヨーロッパ音楽だけが音楽ではない>それでもなおつまらなければ、それはほんとうにつまらないジャズなのだ」で物語を閉じる。
昭和42年7月号のスイング・ジャーナルで連載を始めた「ジャズの歴史」が、昭和47年10月号で完結。大幅に加筆訂正、整理の末、2ヵ月後に単行本として上梓された。
古今東西にわたる該博な知識に加え、膨大な音のコレクション、それに最新の研究成果を踏まえて語り継がれるジャズの歴史はきわめて歯切れ良く、また、明解である。
著者の最も愛するジャズはジャズ創成期から初期のものだったが、評論家として前衛ジャズからエレクトリック・ジャズまで正当に理解した。本場アメリカの評論家さえ不支持に廻ったマイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』をいち早く支持、先見性を示した。キース・ジャレットの3枚組アルバム『ソロ・コンサート』に対しては、雑誌のレヴューで「すぐレコード店に走りなさい!」とまで評価した。
「ジャズは生き物であり、社会を反映する音楽である」という視点に立脚した彼の批評はながらく日本のジャズ界の羅針盤であり、本書も今日なおその輝きを失わない。ジャズに興味を持つ者すべてが文字通り座右の書として手元に置くべきであろう。 JT (稲岡邦弥)

[ INAOKA's INDEX ]   [ LIBRARY Back Number ]