タイトル:『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』
著 者:大江健三郎
初 版:昭和57年7月5日
出版社:新潮社
定 価:¥1,300
あれから10数年になるだろうか。武満徹が目を掛けていたカナダの打楽器アンサンブルNEXUSのリサイタルだった。マリンバによる4人の演奏が始まるとサントリーホールの風景がさっ、と変わった。湿度まで変わったような気がした。武満の<雨の樹>だった。もちろん標題曲ではないのだが、指の形をした葉から雨が滴り落ち、水滴に陽の光が反射し...。打楽器だけで演奏されているとはとても思えない細やかさと緻密さ、楽曲を覆う妖しい叙情に日本の美の極致を見る思いがした。NEXUSのCDを求めてみたが同じ感懐は催さなかった。やはり、日本の風土と、作曲者本人との場の共有が必要だったのだろうか。
本書は、「雨の木」というメタファーを微妙に共有する5編の連作集である。昭和55年から3年間にわたって発表された。武満の作曲と前後し、カバーには<雨の樹>のスコアがレイアウトされている。2編にアレン・ギンズバーグが登場する。「アメリカの高名なビートニク詩人」、「ダルマのような」アレン、として。
「雨の木」は、前夜の驟雨(しゅうう)を溜め込んだ無数の葉から雨の様に水滴を滴らせる大樹をいう。
JT
(稲岡)
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