Concert Report#414

原田英代連続演奏会 SERIES 作曲家の絆 Vol.1
ボロディン弦楽四重奏団&原田英代
2012年3月5日 @浜離宮朝日ホール
Reported by 佐伯ふみ
Photo by 林喜代種

【曲目】
ブラームス:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.51-2
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44

 ピアニスト・原田英代の企画する連続演奏会、新シリーズの開幕である。シューベルト・チクルスに続く今回のシリーズでは、毎回、複数の作曲家を取り上げ、ピアノ・ソロ、室内楽、歌曲とヴァラエティに富んだ曲目で演奏会を組むという。第1回の当夜は、ブラームスとシューマンという、作曲のうえでも人生のうえでも濃密な関わりのあった2人の作曲家の作品。パートナーはボロディン弦楽四重奏団である。プログラムの曲目解説も原田自身。こうした演奏会を企画し実行する原田の気概を、まず称えたい。

 前半はボロディン弦楽四重奏団のブラームス。このカルテットの明るく伸びやかな音色は何ものにも代えがたい魅力。精緻なアンサンブルであるとともに、奏者の自発性も自然に発揮され、それぞれがよく歌う。どんなに激した曲想でも、決して余裕を失わない大人の音楽でもある。客席には長年のファンが集っている様子。温かい拍手を惜しみなく送り、会場はとても親密な良い雰囲気である。
 後半、いよいよ原田が登場して、シューマンの名曲、ピアノ・クインテット。覇気のある、骨太の立派な演奏。だが、出だしの第1楽章に限っては、少し肩に力が入りすぎたか。自然体でリラックスしたムードのカルテットに挑むかのようなピアノである。ピアノ・パートがソロで歌う部分、主張のある面白い入りだったが、繰り返しでもそのままそれをリピートするのはちょっとくどかったかも。
 しかし、違和感をおぼえたのは1楽章まで。楽章が進むにつれ、作為的に、挑戦的に聞こえるところがなくなって、とても自然な、三昧の境地とでも言うべき音楽が展開されていった。原田が素晴らしいアンサンブル・ピアニストでもあることをみずから証明した一夜であった。このシリーズは今後、さまざまな形のアンサンブルを聞かせてくれるらしい。原田がそれぞれのパートナーとともにどのような音楽を展開していくのか、今後が楽しみである。
 アンコールは、再びボロディンSQのみが舞台に戻り、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番2楽章〈アンダンテ・カンタービレ〉。肝心の主役、ピアニストが出てこないアンコールは意外だったが、ゲストに花をもたせたということか。ともかく、このアンダンテ・カンタービレが絶品。なんとも美しく流麗な響き。弦楽器とはかくも美しい音楽を奏でるものか。忘れがたいひとときとなった。  









WEB shoppingJT jungle tomato

FIVE by FIVE 注目の新譜


NEW1.25 '15

FIVE by FIVE
#1166『Mike Nock Octet/Suite Sima』(FWM)悠雅彦| #1167『Dave Douglas & Uri Caine/Present Joys』(Greenleaf Music Inc.)常磐武彦| #1168『Medeski Scofield Martin & Wood/Juice』(INDIRECTO RECORD)常磐武彦| #1169『カーリン・クローグ+スティーヴ・キューン/ふたりの夜明け』(ENJA/MUZAK)悠雅彦| #1170『チコ本田/ライヴ アット ラブリー バラッドナイト』(KUKU LABEL)望月由美| #1171『Konstrukt & Marshall Allen/Live At Sant'Anna Arresi Jazz Festival』(8mm Records)剛田武| #1172『カール・ベーム ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73、モーツァルト:交響曲第28番ハ長調K.200/189k、ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595』(TESTAMENT)藤原聡| #1173『Rhodri Davies & John Butcher/Routing Lynn』(ftarri)細田成嗣| #1174『キース・ジャレット・トリオ/ハンブルク‘72』(ECM/ユニバーサル・ミュージック)多田雅範| #1175『Kenny Wheeler/Songs for Quintet』(ECM)神野秀雄

COLUMN
特別寄稿「本当は寛容なイスラム」松浦茂長(在パリ)| 連載フォト・エッセイ:Reflection of Music 37「レスター・ボウイ」横井一江| 撮っておきの音楽家たち #99「アレクセイ・リュビモフ」(ピアニスト)林喜代種| 撮っておきの音楽家たち #100「パーヴォ・ヤルヴィ」(指揮者)林喜代種| カンザスシティの人と音楽 #41「カンザスシティ・ロイヤルズとカンザスシティ・シンフォニー・ディレクター、マイケル・スターン」竹村洋子| Live Evil:稲岡邦弥010「Ky Japan Tour 2014『生きるという営み』」| 011「Mike Nock Trio」| 012「織茂サブ/地無し尺八ソロライヴ」| 及川公生の聴きどころチェック #213『テディ・ウィルソン+北村英治/テディ・ミーツ・エイジ』(ユニバーサルD/ユニバーサル)| #214『キース・ジャレット・トリオ/ハンブルク‘72』(ECM/ユニバーサル・ミュージック)| 連載エッセイ:オスロに学ぶ Vol.25「オスロに戻る」田中鮎美

INTERVIEW
#132「カーリン・クログ」(vocal) 小橋敦子

GALLERY
#31『レインボー・ロータス〜A Big Hand for Hanshin』 稲岡邦弥

CONCERT/LIVE REPORT
#760「モーリス・ベジャール振付ベートーヴェン『第9交響曲』」林喜代種| #761「《歌曲(リート)の森》 〜詩と音楽 Gedichte und Musik〜 第15篇 ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト) フランス歌曲の夜」藤堂清| #762「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス『ALIVE』日本ツアー2014」剛田武| #763「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス『ALIVE』日本ツアー2014」神野秀雄| #764「パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団演奏会「ブラームス・シンフォニック・クロノロジー」佐伯ふみ| #765「岡田博美ピアノ・リサイタル2014」丘山万里子| #766「日本舞踊 × オーケストラ Vol.2」悠雅彦| #767「日本舞踊 × オーケストラ Vol.2」林喜代種| #768「ピアニスト園田高弘没後10年を偲んで Vol.2 高橋礼恵ピアノ・リサイタル」佐伯ふみ| #769「紫桐会秋の演奏会(第32回)」悠雅彦| #770「ゴーティエ・カプソン&ユジャ・ワン第2夜」藤原聡| #771「ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラdirected byエリック・ミヤシロ, スペシャルゲスト:リチャード・ボナ」神野秀雄| #772「故副島輝人さんを偲ぶ会」横井一江

Copyright (C) 2004-2015 JAZZTOKYO.
ALL RIGHTS RESERVED.