『Nobu Stowe & Alan Munshower with Badal Roy/An die Musik』

Soul Note 121397-2

Nobu Stowe(p) Alan Munshower(ds) Badal Roy (tabla)

Total Improvisations:
01 Duo I02 Trio I 03 DUO V 04 TRIO II 05 DUO IV 06 TRIO III 07 DUO VII 08 Solo Table 09 DUO III 10 TRIO VI 11 POCHI(N.Stowe)

Recorded live @An die Musik, Baltimore, October 10&12, 2006
Recording engineers:Alan Munshower & David Polimene
Producers:Nobu Stowe 6 Alan Munshower

ゲイリー・ピーコック、ビル・フリーゼル、キース・ジャレット、ミシェル・ルグランへのインタヴューを敢行、JazzTokyo誌上に発表してきたピアニスト、Nobu Stoweこと須藤伸義の新作である。須藤はポスト・ドクターとしてボルチモアの国立衛生研究所で「ドーパミンと薬物依存の関係」の研究に勤しむ心理学者でもあり、ピアニストとの両立をこなす知力と体力には感服する。年季の入ったジャズ・ファンは、似たようなキャリアの例として精神病理学者とピアニストを両立させていたデニー・ザイトリン(1939〜)を思い浮かべるだろうが、ここで聴かれる須藤の音楽性はデニーとはまるで違う。明るくおおらかでどこまでもメロディアスである。須藤は同時にいくつかのプロジェクトを併行して進めており、他のプロジェクトの成果はすでに何作かのアルバムを通じて公表されているが(作曲された楽曲を演奏する『トリオ・リコシェ』、サウンド・アーチストのリー・ペンブルトンとの共同プロジェクト『クラウス・キンスキーへのオマージュ』など
http://www.jazztokyo.com/guest/
suto-label/vol1-4.html
)、このアルバムはキース・ジャレットにインスパイアされて始めた“トータル・インプロヴィゼーション”を追求した成果である。“トータル・インプロヴィゼーション”についてはキースのインタヴューの中で語られているが(
http://www.jazztokyo.com/interview/
v61/v61.html
)、CDのスリーヴにも但し書きされているように“すべて即時的に作曲/演奏された音楽で、予め作曲された作品を一切用いない演奏”をいう。しかし、“トータル・インプロヴィゼーション”は“フリー・インプロヴィゼーション”とは異なり、即時的に作曲していくことになるのでこのメソードで良い成果を上げるためには、“まず、良い作曲家である必要がある”というのが須藤の考え方だ。3歳でピアノを始め、6歳から作曲を始めた須藤は、ロックやプログレを経てジャズに辿り着く。キースの『マイ・ソング』(ECM)を聴いて開眼したのだ。須藤の演奏が“どこまでもメロディアス”であると書いたのは、メロディにキースの本質を見た須藤の実践である。
このアルバムは、ボルチモアのクラブ「An die Musik」における2度のセッションから構成されている。須藤の『トリオ・リコシェ』の仲間でもあるドラムのアラン・マンシャワーとのデュオ。それにタブラのバダール・ロイの加わったトリオ。アランは30前の若手だがとてもフレキシブルなドラマーで、自らビートを設定するようなことはせず須藤には自由に行かせ、むしろ須藤に合わせて行く。バダールはマイルスやオーネット、マクラフリンと共演して来たタブラのマスター。デイヴ・リーブマンの「ルックアウト・ファーム」で来日経験もある。最近は、「Miles from India」というプロジェクトで多忙を極めているという。タブラは1音で多くを語るので、タブラが加わるとガラリと音楽の表情が変わる。グルーブやテンポでも須藤と綱引きが始まる。そういう意味で須藤が一方的にリードする場面の多いデュオに比べてトリオ・セットにスリルがあって面白い。バダールという百戦錬磨のベテランを抱え込んで、またタブラという存在感の強い楽器を加えて須藤がどこまで自分の意図を実現できるか見物である。ドラムも黙ってはいない。しかし、タブラ本来の律動を妨げるようなことはしない。際どいところで音楽が成立している。須藤はといえばメロディを紡ぐことに無上の悦びを感じているようだ。このトリオ・セットは成功しているといえるのではないだろうか。
須藤のピアノにキースの影が見え隠れするのは当面許されて然るべきだろう。須藤にとってキースはアイドルなのだから。キースが開発した“トータル・インプロヴィゼーション”を継承すべく取り組んでいるのだから。JT

(稲岡邦弥)

*CDの詳細は:
www.myspace.com/nobustowe
http://www.blacksaint.com/
Catalogue/AN+DIE+MUSIK/1287

http://diskunion.net/jazz/ct/detail/121397


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