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『ヘニング・シュミート/クラヴィーアラオム(国内盤タイトル:「ピアニスト flau/アート ユニオン=U-POP RECORDS FLAU06 ¥2,100(税込) ヘニング・シュミート(ピアノ) 01.240g Mehl 02.20g Zucker たとえば鈴木愛理(℃-ute、Buono!)がセーラー服、たとえば東京女学館高等学校の、を着て、わたしのお気に入り!と、このCDを差し出すようなことはあっていいと思う。エコーを効かせて、ピアノの白鍵だけを特に高音部のトレモロを多用しクルクル上下させて、わずかに音響的な処理を施して、きっとピアノの音に最初に「美しい」と思わせたタッチの幻影または記憶をたどるように、この音楽は描かれたのだろう。もちろん、これは即興音楽、ではなく、ジャズともクラシックとも無縁、で、環境音楽がロック・ミュージックのシーンから発案された(オブスキュア・レーベルでも細野でも)ところに辛うじて接続できるとおれの耳は許容している。CD棚の日向敏文やSPIRITUAL VIBES、安田芙充央のあたりに置いておこうと思うくらいだ(安田が怒るか・・・)。いつだか光が丘公園近くにある『お風呂の王様』の風呂上りにかすかにピアノ音だけが聴こえ、それが脱衣所のBGMであって、心地よく聴き続けていたいと、この音楽の主はこの音楽をわきまえているものだからこちらもこちらの価値を求めないでいられるくつろいだ時間。原題はクラヴィーアラオム=「ピアノの部屋」(こっちのタイトルのほうがいいんじゃないのか?)。お腹が大きくなった奥さんのために制作したという。なるほど。そういうのなら、ぜんぜんありでしょう。このピアニスト、まじでECM好きでしょう。ヘニング・シュミートは1965年生まれのドイツのピアニスト、それならなおさらだ。ウインダム・ヒルのニセモノ感(ヒッピーのなれのはての腐臭)に比すれば、枠組みのエッジは潔い。何というのだろう、わざとらしいナルシスティックな音列の決め、の数々、を、エコー処理と背景電子音を地として配置したコンポジションに流し去ることで、クスッと微笑んでしまうようなところに持っていってしまっている。言ってしまったらおしまいよ、というセリフを、途中で言いよどんだり、言い間違えたり、最後まで言えないでいる、と、彼女の言葉を聞いているように、すっかりリラックスして聴き続けてしまっている。家具の音楽というとサティが怒るか・・・、サティにしたって「アタシ家具です」ってこっちはとっくに聴き飽きたのですよ。このCDを制作する「flau」というレーベルのコンピ盤『Little Things』も聴いて、すっかり聴き和んでしまっているけれども、この歪んだ音処理が自然と感じさせる感性の由来なり音楽が生まれる土壌はジム・オルーク以降だという感触は歴然とあると思う(オルークが怒るか・・・)。その意味では、これらは2008年の音楽であり、以前に発売されていた夥しい数の音楽を無用にしてしまうちからがあるものだ。30さい以上の方は聴取禁止。未成年指定音楽。JT (多田雅範) 種々の技術の発達により、映像であれ音であれ、イマジネーションの定着が容易となった状況において、それが「作品」のかたちをして提示されることに戸惑うことが多くなった。たとえば、携帯電話で撮影したプライヴェート画像を「写真作品」と呼べるのかどうか。そうは呼ばないという基準は恣意的なものなのか。だがその際、定着された画像がパーソナルなコンテクストを有するかどうかは、作品としての質をけっして左右するものではないだろう。 (堀内宏公) |