『Louis Moholo-Moholo/Duets With Marilyn Crispell』

Intakt CD 145

Marilyn Crispell(p) Louis Moholo-Moholo(as, cl, bcl)

1. Improvise, Don’t Compromise 2. Moment of Truth 3. Journey 4. Soze (Never) 5. Phendula (Reply) 6. Refrect 7. Sibanye (We Are One)

Recorded on June 30, 2007 at An die Musik Live, Baltimore, USA

ルイス・モホロ−モホロとマリリン・クリスペルの初共演がCDとなった。
ルイス・モホロ−モホロ(註)は、往年のジャズファンにはステーヴ・レイシーの初期の傑作『森と動物園』のドラマーと言えばわかりやすいかもしれない。南アフリカ出身の彼はブルー・ノーツのメンバーとして1964年にフランス、アンティーブで開催されているジャズ祭出演をきっかけに他メンバーと共にヨーロッパに移り住む。フランスからスイスと移り、ロンドンをベースとして活動するようになる。その間、スイスではイレーネ・シュバイツアー、ジョン・チカイらと知り合う。その後はキース・ティペット、ジョン・スティーブンス、エヴァン・パーカーをはじめとする多くの即興演奏家と共演するようになった。2005年、南アフリカに帰国したが、欧米での演奏活動も続けている。
他方、マリリン・クリスペルのキャリアは1978年にアンソニー・ブラクストンのクリエイティヴ・オーケストラに参加したことから始まったと言っていいだろう。アンソニー・ブラクストン・カルテット、レジー・ワークマン・アンサンブルに参加。ポール・モチアン、バリー・ガイ、ポール・リットン、ヘンリー・グライムスなどとも共演しているアメリカのクリエイティヴ・ミュージック・シーンを代表するピアニストだ。
両者共に欧米ではよく知られた存在であり、評価も大変高い。このボルチモアでのコンサートまでこの二人の接点がなかったのが不思議でさえある。即興演奏における初顔合わせはスリリングであるが、またリスクも負う。
最初の一音は静かなシンバル音、それが重層的に響き始めたところにピアノのシングル・ノートが入り、互いを探り合うかのように演奏はスタートする。クリスペルのピアノを引き立てるようにパルスを繰り出すモホロ−モホロ、<インプロヴァイズ、ドント・コンプロマイズ>(即興、妥協せずに)というように、徐々に二人のサウンドは重なり合い、有機的に結びつき、そして自由な空間へ解き放たれていく。緊張感の中にこの二人の出会いがまたとないものであることが伝わってくる。7つに分けられたトラックで、モチーフのようなパターンを呈示する場面、あるいはセシル・テイラーを思わせるフリー・プレイなど、多彩なアプローチを聴くことが出来るのもそれぞれが持っている引き出しの多さゆえ。
クリスペルはECM盤で聞かれるようなリリシズムも持ち味だが、彼女の本当に凄いところはハードコアなプレイからリリカルな響きまで自由自在に即興演奏の中でそれらを駆使できるところにある。しかもエモーショナルでありながらも構造をどこかで見据えているのはブラクストン譲りか。繊細なシンバル音からスピード感あるドラミング、モホロ−モホロのサウンドは色彩感に溢れている。そして変幻自在にパルスを繰り出す彼のドラムスはとてもフィジカルで聞いていて非常に心地よい。そして何よりも音色がキレイなのだ。
即興デュオは互いがよりオープンになれるフォーマットといえるだろう。だからこそ、よい出会いであればそれぞれが最大限に引き出される。モホロ−モホロとクリスペル、二人にとってこれはまたとない共演だったに違いない。貴重なドキュメントがそれを伝えている。JT

(横井一江)

註:2005年南アフリカに帰国後、ルイス・モホロからアフリカ式にルイス・モホロ−モホロに改名した。

Intakt RecordsのHPからも購入できる。
http://www.intaktrec.ch/
関連リンク:
http://www.jazztokyo.com/interview/
v67/v67.html

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