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『カート・ローゼンウィンケル/リフレクションズ』 ビデオアーツミュージック/WOM MUSIC VACM -1398 ¥2,625(税込) カート・ローゼンウィンケル(g) 1.Reflections(Thelonious Monk) プロデユーサー:カート・ローゼンウィンケル ゆったりとしたテンポが全編に続き、穏やかな大河の流れのようになだらか、トリッキーなところがまったくなく丁寧で心安らぐ作品。カート・ローゼンウィンケルのスタンダード・トリオによる新作『リフレクションズ』(VACM-1398)はセロニアス・モンクの曲が2曲、ウェイン・ショーターの曲が2曲、スタンダードが3曲そして自作曲が1曲という構成で落ち着いたバラード集となっている。このアルバムを聴いて真っ先に思い浮かべたのは川崎燎(g)のソロ・アルバム『ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア』であった。エルヴィン・ジョーンズ〜ギル・エヴァンス〜ゴールデン・ドラゴンなどでその時々の先端をひた走っていた川崎燎がアコースティック・ギターのソロで自己の音楽の原点をシンプルに表現したものであった(最近ビデオアーツの25周年記念廉価盤シリーズ、”HERE THE MUSIC 100”で再発されている)。極めてインティメイトなギター・ソロ・アルバムでありすべてがスタンダードであった。川崎燎はニューヨークを離れ家族とエストニアで暮らしている。カート・ローゼンウィンケルも夫人とともにスイスやベルリンに生活の拠点を移しているという。本作もこのようなカートのいまの心境を素直に表現したもので親しみを感じる作品である。これまでにもジャズ畑ではブラッド・メルドー(p)やマーク・ターナー(ts)、ジョシュア・レッドマン(ts)、ラリー・グレナディア(b)などと共演しクリス・クロスやスタント、ヴァーヴなどにアルバムを発表してきていたが前作の『REMEDY』からWOM MUSICに移り、本作では自らプロデュースもつとめている。メンバーのエリック・レヴィス(b)、エリック・ハーランド(ds)もカートのコンセプトを共有しバランスのよい巧サポートで軽快なスイング感とグルーブ感を生み出している。表題曲の<リフレクションズ(1)>と<アスク・ミー・ナウ(5)>はモンクの曲だが気をつけていないとスタンダード曲のようにスムーズに演奏され、<モア・ザン・ユー・ノウ(7)>や<ユーブ・チェンジド(8)>と同格のバラードになっている。勿論、ウェイン・ショーターの<フォール(3)>もマイルス・クインテットの演奏とは思いもよらないスインギーな編曲で驚く、1967年のスタジオ・マイルス『ネフェルティティ』(Sony) のトニー・ウィリアムスとエリック・ハーランドの発想の違いを確認するのも一興かもしれない。全編にわたってアコースティックなサウンドが耳にここちよく、エリック・レヴィスの重心の下がった低音、エリック・ハーランドのいつもの過激さを少し抑えた絶妙なサポートが本作の聴き所である。昨年ピーター・バーンスタイン(g)もモンク集を出すなどコンテンポラリー系のアーティストが伝統的なジャズ曲を採りあげている姿が目に付くがその中でもカートのスタンダーズ・トリオはひときわ輝いている。そして本作の最大の聴きものは唯一のカートのオリジナル曲<イースト・コースト・ラブ・アフェア(4)>である。この曲はカートのファースト・アルバム (1996年FRESH SOUND) のタイトル曲でもあり、冒頭の長いギター・ソロにカートのルーツが表現されているようだ。この方向でスタンダーズ・トリオは発展して行くのではないだろうか。現在、カートはスタンダーズ・トリオで精力的にツアーを行っているようだ、キースのスタンダーズのように発展するのであろうか、今後をみまもりたい。なお、本作のライナー・ノーツを「BAD PLUS」のイーサン・アイヴァーソン(p)が書いているが仲のよい身内のミュージシャンにしか描きえない、なかなかの名文であり曲の解説も一曲ごとに詳細に分析しており改めての曲解説は無用と思われるのでここでは省略するが、イーサン・アイヴァーソンのバラード論には同感であり、一読に値する。興味をもたれた方はぜひライナー・ノーツをお読みいただきたい (因みに翻訳は本サイトのコントリビュウータ・若林恵さんである)。JT (望月由美) |