Evan Parker, Derek Bailey, Han Bennink/The Topography of The Lungs

『Evan Parker, Derek Bailey, Han Bennink/The Topography of The Lungs』

psi records 06.05

Evan Parker(sax) Derek Bailey(g) Han Bennink(per)

1 Titan Moon
2 For Peter B & Peter K
3 Fixed Elsewhere
4 Dogmeat
5 Found Elsewhere 1 *
6 Found Elsewhere 2 *

Recorded in London 1970
* Previously unissued

 デレク・ベイリーが一昨年のクリスマスの夜に亡くなってから早一年有余。少し前になるが、デレク・ベイリー、エヴァン・パーカー、トニー・オクスレーの 3人のミュージシャンがイギリスで立ち上げた即興音楽のレーベル、Incus Recordsの第一作『The Topography of The Lungs』が、残存していたテープにあった2トラックを追加して再発された。長い間廃盤のままだったが、本作はヨーロッパのフリー・ミュージックを語る上で欠かせない歴史的作品であるだけに、それが再発されたことを嬉しく思う。
 録音から四半世紀経た現在聴いても、なお非常に刺激的な演奏だ。 3人のミュージシャンはアメリカ的なフリージャズから訣別し、独自の道をその即興演奏の中に求めていったが、そのひとつの起点を捉えた貴重なドキュメントといえる。三人三様に試行錯誤されるハーモニーやテクスチャー、あるいはリズムとメロディー、そして音色に対する繊細な感性、日本語訳すると『肺の局所解剖学』という奇妙なタイトルが言い得て妙だ。ここでのエヴァン・パーカーの演奏にはまだジョン・コルトレーンの影響がちらほら見え隠れするが、後の循環呼吸法とマルチフォニックスを融合させた特殊奏法につながる試みも聞き取れて非常に興味深い。彼らの楽器との対峙のしかたは、それまでにはないものだった。楽音から脱却することでよりサウンドを追求する。Incusとは中耳にある砧骨のこと。そういう意味では、レーベル名は彼らの音楽的嗜好なり、方向性を強く表していたともいえるし、耳を拓くことで聞こえてくる音があることを暗に示していたのかもしれない。
 彼らなくして、現在のヨーロッパの即興音楽シーンはあり得なかった。この時代にヨーロッパで起こっていたことは、ジャズにおけるビバップのように過激で、新たな音楽シーンが立ち現れることとなる。その濃密な時間がここに残っている。 1987年にIncus Recordsを離れたエヴァン・パーカーであるが、自身のpsi recordsから再発した本作には、墓碑銘のように「イン・メモリアム・デレク・ベイリー1930-2005」という言葉が添えられている。そして、彼らのサウンドを聴きながら、デレク・ベイリーがサミュエル・ベケットを好きだったということを再び思い出したのだった。JT

国内での流通状況は不明だか、 Emanemのサイトから購入できる。
http://www.emanemdisc.com/

(横井一江)

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