UPDATED 01.09.2006
Derek Bailey

デレク・ベイリー
Derek Bailey
1930—2005

Photo: Courtesy of European Free Improvisation Pages
http://www.shef.ac.uk/misc/rec/ps/efi/efhome.html

追悼 デレク・ベイリー


■『追悼 デレク・ベイリー』ブルース・リー・ギャランター

■『デレク・ベイリーそしてSABU、ブロッツマン〜「足穂」の想いで』望月由美

■『反重力の夢──デレク・ベイリーの音楽』堀内宏公

■『宙吊りにされたサウンドの軌跡』横井一江

■デレク・ベイリー・インタヴュー
 『古い思い出と新しい音〜日本のデレク・ベイリー』

■[LIBRARY] デレク・ベイリー著『インプロヴィゼーション〜即興の彼方へ』

■[NEW DISC #63] 『Derek Bailey/Music and Dance』原田正夫

■追悼 デレク・ベイリー
 12月25日、伝説のギター・インプロヴァイザー、デレク・ベイリーが75才で逝った。彼はそもそも手根管症候群と診断され数年間はその治療を受けていたのだが、最終的には運動ニューロン疾患が死因とされた。数年間住み慣れたスペインのバルセロナを離れロンドンが死地となった。

 デレク・ベイリーは、50年代のショーバンド/トラッドジャズ・シーンから60年代のロンドンのアヴァン/ジャズ・シーンに身を投じたのだが、イギリス出身のギタリストとしてはおそらくもっとも影響力に富み、冒険心あふれ実験的であった。60年代後期まではジョセフ・ホルブルック・トリオ(ギャヴィン・ブライヤーズ、トニー・オックスレー)、スポンテイニァス・ミュージック・アンサンブル(ジョン・スティーヴンス、トレヴァー・ワッツ)、ミュージック・インプロヴィゼーション・カンパニー(エヴァン・パーカー、ヒュー・デイヴィーズ、ジェイミー・ミューア)の一員として活躍した。MICは、のちに不特定のカンパニーとなりデレクがリーダーシップを握ることになった。これらのグループがとりもなおさずイギリスのフリー・ジャズ・シーンの先鋭として中心的な存在になっていったのである。70年代に入ると、デレク・ベイリー、トニー・オックスレー、エヴァン・パーカー共同でレコード・レーベル「Incus」(インカス)を立ち上げたが、これがミュージシャン自身の運営になる最初のレーベルとなった。やがて、デレクとエヴァンは袂を分つことになるが、Incusレーベルは継続され、60タイトル以上のアルバムをリリースすることになるのだが、現在、その多くが廃盤となっているのは残念なことである。

 デレク・ベイリーの奏法はきわめてユニークかつ特異であり、他に同類を見ないものであった。彼のスタイルは不断に進化を続け、エレクトリック・ギターを弾く時はフィードバックを活用した独自の奏法を開発した。彼の共演者はイギリス・フリー・ジャズ・シーンの最良のメンバーたちであったが、同時に、ハン・ベニンクやペーター・ブロッツマンなど多くのヨーロッパのプレイヤーたち、また、阿部薫、近藤等則、吉沢元治など日本のフリー系のプレイヤーたち、さらに、アンソニー・ブラクストン、ジョージ・ルイス、ジョン・ゾーン(“ヤンキーズ”として知られるトリオ)などアメリカのインプロヴァイザーとも親交を結んだ。80年代、90年代には「カンパニー・ウィーク」とタイトルされた年次フェスティヴァルを組織し、さまざまな背景を持つ国際的なインプロヴァイザーたちのユニークなグループを招聘した。

 デレクを際立たせていたものは、彼のスタンスが演奏は“ゲーム”である、ということであった。共演者は出身がどこであろうと、彼の“関心を引く”対象であることが第一であった。ジョン・ゾーンと強力な親交を持ったおかげで、彼の共演相手のリストはきわめてユニークなものとなった。たとえば、ルインズ、灰野敬ニ、ジャマラディーン・タクーマ&カルヴィン・ウェストン、トニー・ウィリアムス&ビル・ラズウェルなどなど。デレクとゾーンは過去10年間で数回、トニックで「カンパニー」フェスティヴァルを組織、初顔合わせのグループをいくつもプログラミングした。数年前に行われた最後のフェスティヴァルでは、デレクはなんとIST(サイモン H.フェル、マーク・ウェイステル、ロードリ・デイヴィーズ)とベテランのタップダンス・レジェンド、ウィル・ゲインズまで呼び込んだのだ。

 デレクは、他のアヴァン・ギタリスト(ユージン・チャドボーン、ヘンリー・カイザー、フレッド・フリス、ノエル・アクショテ、さらにはパット・メセニーまで)との共演を楽しんだが、いちばん多かったのがドラムスとのデュオであった。メンバーは壮観である;トニー・オックスレー、ルイス・モホロ、ハン・ベニンク、ジョン・スティーヴンス、エディ・プレヴォー、シロ・バティスタ、グレッグ・ベンディアン、スージー・イバラ、ジェイミー・ミューア、インガール・ザック、羽野昌二、マイケル・ウェルチ。他にも驚くべきデュオはある。セシル・テイラー、スティーヴ・レイシー、エヴァン・パーカー、ジョエル・レアンドレ。

DVD ちょうど4年前のことだが、デレク・ベイリーは、フィフス・ストリートにあったわれわれのショップ、旧DMGで、アコースティック・ギターのソロ演奏を披露した。これは15年間にわたる我がDMGの歴史にとってもっとも誇らしい出来事であった。このイベントは仲間のロバート・オハラがビデオ収録しDVDでリリースしたが、私はこれを観るたびに思わずニヤリとしてしまう。演奏中に語っているように、彼にとってレコードや楽器を売っているショップで演奏するインストア・ライヴはとてもおかしなイベントだったようだ。彼ははっきりモノをいう男であったが、優しいウィットを忘れなかった。さらにいえば、彼の演奏は世界中の冒険好きのミュージシャンやリスナーにとってつねにインスピレーションの源泉となった。デレクは、1月29日に76回目の誕生日を迎えるはずだった。喪失感に心が痛む。
ブルース・リー・ギャランター
Bruce Lee Gallanter
DowntownMusicGallery.com

註:本稿は、Downtown Music Gallery(NYC)発行のNews Letter年末/年始号に掲載されたものです。同紙の許諾を得て、翻訳・転載いたしました。

■Derek Baileyのサイト
http://www.shef.ac.uk/misc/rec/ps/efi/mbailey.html

■Incusレコード公式サイト
http://www.incusrecords.force9.co.uk/xnotice.htm

■Downtown Music Gallery
http://DownTownMusicGallery.com
http://search2.downtownmusicgallery.com/Searching/WWW_DMG_Search.cgi


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